企業のための水害対策

近年、線状降水帯が多発

気候が変化している

2020年は、帯状の雨雲「線状降水帯」がおなじ場所に何度も発生して停滞し、局地的に大雨特別警報が頻繁に発出されました。

線状降水帯

1時間の雨量が50mm以上の発生回数は、21世紀末に全国平均で2倍以上。

日本の平均気温は100年で1.24度上昇。気温が1度上がると、大気中の水蒸気量は7%増え、積乱雲が発達しやすくなります。

降雨量とその状況について

降雨量/時間状況
5mm~10mm/hすぐに水溜りができ、雨音がよく聞こえる
10mm~20mm/h雨音で話が聞こえないことがある、長雨の場合災害の警戒が必要
20mm~30mm/h下水があふれ、小河川が氾濫することがある。がけ崩れの危険性
30mm/h以上バケツをひっくり返したような豪雨、危険箇所は避難準備 危険と思ったら自主避難

どうして「線状降水帯」が続くのか?

線状降水帯が多発する2つの原因

1つ目はインド洋の海水温度が高くなったこと。

6~7月の海水温が平年より0.5度高くなり、上昇気流が発達。上昇した大気がフィリピン海近くで下降したために、いつもならば太平洋高気圧が梅雨前線を北側に押し上げるのですが、南西側に移動したので、梅雨前線が日本付近に停滞しました。

2つ目は偏西風の蛇行。

黄海付近の気圧が低くなって、暖かく水分を含んだ空気が太平洋高気圧に沿って南から梅雨前線に向かって、大量に流れこみました。

水害対策

資機材・物資

避難活動や避難者支援のための資機材・物資を備蓄。
調理や冷蔵保存を必要としない食料、飲料水、携帯ラジオ、懐中電灯、予備の電池、応急手当用品などを用意。

地階の浸水対策

  • 地階や地下駐車場、地下街等は浸水経路や形態を把握、浸水時の安全確保の点検
  • 地下室の出入り口の床を道路面から高くする。
  • 階段に水が流れ込んできても、安全に避難できるように手すりを設置
  • 入り口等に防水板の設置を可能にする。
  • 地下室の出入り口等に土嚢を置く空間の確保(※土嚢はドアの開放方向に置かない)
  • 地下室に降りる階段の前室を広くする。
  • 「雨水枡」をこまめに清掃

避難誘導体制

  • 地下駐車場などは、降雨、河川水位、浸水状況などの情報システムを整備
  • 地階からの避難・誘導体制を確立

設備点検

  • 自家発電施設の燃料の保管状況や補給方法の確認
  • 排水ポンプ等非常用設備を点検

洪水ハザードマップによる事前情報

「洪水ハザードマップ」で地域が洪水に見舞われたときの浸水の程度の予測を自治体が公表していますので、会社の周辺の浸水予測を把握します。
ハザードマップによって時間降雨100ミリを超えるような豪雨の際に河川が氾濫する程度と範囲などが分かりますので、対策を立てることができます。
国土交通省が「ハザードマップ・ポータルサイト」を公開。洪水、内水、高潮、津波、土砂 災害、火山の6種類のハザードマップが掲載されています。

ハザードマップポータルサイト

リーダーの行動原理「プロアクティブの行動原則」

pro( 事前) に、active( 行動)する「前もって行動する」という原則

1 「疑わしいときは行動せよ」

具体的な被害や状況がはっきりするまで動かないのでは事態を悪化させます。曖昧な状況の時でも、事前に決めた「行動のきっかけとなる状況」が発生した時は対応を開始する決断を迷わず下します。

2 「最悪事態を想定して行動せよ」

希望的観測をしてはいけません。 最悪のことを常に考えながら行動することで対応力の幅ができます。希望的観測のもとに自分の行動 を勝手に制限してはいけません。

3 「空振りは許されるが見逃しは許されない」

「行動したけれども実際には 何ともなかった」という「空振り」は経験値が増えて本人のレベルアップにつながる。
「何もしないまま実際に起きてしまった」という「見逃し」は許されない。
積極的に対応すべき。

避難方法

危険を感じたらすぐ避難

危険を感じたら避難勧告・指示の有無に関わらず、自主的に避難すること。水害は、早い避難がもっとも有効です。

地階では

  • 浸水すると漏電やショート等により停電となることがあります。落ちついて避難すること。
  • 浸水により避難経路が限定されているので気をつけること。防火シャッターが誤作動し、避難路を遮断することがあります。
  • 外の様子が分からず、避難が遅れる傾向があります。異常や避難の呼びかけがあればすぐ避難すること。
  • 地下階の浸水が予想される時、地下への移動には、エレベーターは使用しないこと。避難も必ず階段を使用すること。

自動車

  • 自動車が浸水地域に入った場合、車は放置すること。車両と共に流される可能性があります。

屋内では

  • 地上階で出入口ドアの外側で浸水している場合は、水圧でドアが開かないことがあります。

電気設備

  • 配電盤等に浸水すると停電、電気器具の誤作動、感電などの危険性があります。防水措置や電気器具のコンセントを抜くこと。

避難所へ

  • 地域の洪水避難ルートと高台を確認しておくこと。 避難勧告・指示に従い、速やかに行動すること。

迅速な帰宅指示

台風や豪雨が予想されるときには、企業では従業員を早めに帰宅させることが必要です。
従業員の安全が第一。従業員を帰宅させた後に、台風の進路が変わっても、指示責任を問わないこと。(プロアクティブの行動原理)

早期再開へ向けた後片付け作業

二次災害に注意しながら、後片付け作業を進め、早期に事業再開。
水害の泥は汚染の危険があり、作業時の衛生に注意すること。

  • 建物に入る前に柱、床など構造的な破損を確認
  • 建物に入る際は懐中電灯を携帯
  • 電源が切れているかを確認する際には電気のショートや、切れた電線に注意。電気室、機械室、 エレベーター等が浸水した場合は、専門業者の安全確認が終わるまでは通電しないこと。
  • 濡れた場所では電気器具を使用しないこと。
  • 水のかかった薬品、食料は処分
  • 窓、外壁等の破損や樹木等の倒れなど、遮蔽物がないかを確認、修理、除去
  • 浸水等により施設内が汚染された場合には、「清掃+防疫薬剤の散布」など衛生措置を講じること。
年々台風の速度が遅くなっているという研究結果があるそうです。
遅くなる分水分を多量に含んで大型化します。
それに近年は「線状降水帯」です。
十分な対策を講じて被害を最小限に止めるように努めましょう。