(A面からのつづき)
映画 「ペット・セメタリー」 キングの最恐映画
監督:メアリー・ランバート
〈Story〉
キングが「あまりの恐ろしさに発表を見合わせた」という噂さの作品。メイン州の田舎町、医者ルイス・クリードの猫のチャーチルが車に轢かれて死ぬ。ルイスは、隣家のジャドに連れられて、死骸を裏山の奥の丘に埋める。次の日、死んだはずのチャーチルが家に帰ってきた。しかし、チャーチルは腐臭を発していた。またある日、息子ゲージが車に轢かれて。。。

スティーブン・キングの原作で、この怖さは、タブーを犯してしまうこと。
ピンときました。「ペット・セメタリー(1989)」。子供を生き返らせようとするタブーですね。
その怖さ。絶対に何かが起きるだろうと、分かってしまう。
男の子が交通事故で轢かれて亡くなっちゃうんでしたっけ?
最初はペットを動物霊園(ペット・セメタリー)に埋めて、生き返ることを試します。それを子供でやってしまうから、間違いなく代償がある。
とんでもない代償。怖いな。あんなことなるぐらいだったら。
と思いつつも、愛が行きすぎてしまう。
我が子を亡くして、わらにもすがる思いで、もう一度会いたいという親心なんですね。悲しいですよね。
キングは凄い所へ目をつける。
あの人すごいですよね。ホラー以外でも。「ショーシャンクの空に(1994)」とか。
僕も「ショーシャンク・・・」は大好きで。
原作は短編に近くて(「刑務所のリタ・ヘイワース」という小説。「恐怖の四季」の中の一篇)。
あ、そうなんですか? 映画だとあんなにたっぷりって感じなんですけど。
冒頭近くの、モーガン・フリーマン(レッド)のモノローグで「まるで公園でも散歩をしているかのようだった」って主人公(アンディ・デュフレーン)を表現する。主人公が小石を拾いながら歩いていて、それが刑務所なんだけど。
僕も映画は楽しめました。やっぱり「ショーシャンク・・・」は人気ですよね。好きな映画って聞かれたら「ショーシャンク・・・」を挙げる方も多いと思いますし。
独特な清々しさがいいね。
いいですよね、スティーブン・キング。
僕も1個ありましたよ。これはもうめちゃくちゃ有名で、すぐ分かっちゃいますけど、比較的最近の作品です。ジョブナイル要素があって、若者というか青春というか。
「ホラー版スタンド・バイ・ミー」とか言われてました。
昔、テレビドラマ版もあって。
ピエロが出てくるやつ。
「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017)」です。惜しい。(Eくんは優しい青年である)
2部作になってて。
大人になってからのも。
そうそう、後編のほうは大人になってから、もともとその前編が主人公たちが小学校の高学年かな。10代のあのあたりも好きなんです。主人公たちがいじめられてたり、親から虐待されてたりとか、親をなくしてる子もいたり。「ルーザーズ(負け組)」って呼ばれてるんですけど、そんな子たちがふとしたことで出会って、とんでもない鬼畜ピエロを倒しに行くっていうストーリーになる。
ピエロは昔から街に巣食う悪魔で、そんな相手に「負け組」って呼ばれてる子たちが立ち向かっていく。その構図だけでも個人的にグッてくるのもあります。
後編の「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019)」は30年後ぐらいやったかな。あのピエロが出たからまた集まろう、ていうのもすごい好きで。
仲間に女の子もいましたよね。
お父さんから虐待を受けてて、ペニーワイズ扮するピエロがトラウマを幻覚にして攻めてくるんです。怖いママの顔で出てきたり。そういうのが面白くて、ビジュアルもいいんですよ。
後編にも忘れられないシーンがあります。クライマックスでピエロを倒した後、みんなで街を歩いてて、お店のでかい窓ガラスをぱっと見たら少年時代の自分たちが映ってるシーン。ウルウルしちゃって。自分でもわからないですけど、何て言うのか30年越しの友情っていうのが、ホラー映画なんですけど、すごい感動しちゃって。
1作目に弟が溝に船を浮かべて、それを追いかけていくんですよね。排水溝みたいなところからピエロが出てくる。
2作目もピエロの屋敷みたいな。
屋敷だったか井戸みたいな巣があって、みんなで倒しに行く。
そうかあれが「ホラー版スタンドバイミー」。なるほどなぁ。
余談ですけど「IT/イット」は前編も後編も映画館で観たんです。
特に前編を観に行った時は夏休みだったのかな。僕は当時大学生だったんですけど。中高生の男の子や女の子が、ピエロが出てくるたびにすごい騒ぐんです。「キャー」って。普段だと「うるさいなぁ」って思っちゃうんですけど、ホラー映画になると、それが楽しくて未だに忘れられないです。
ピエロってやっぱり怖い存在なのかなぁ?
ピエロ恐怖症ってありますけどね。
ピエロに扮して子供を殺害した事件とか殺人鬼もいます。なんなんでしょうね、ピエロ。
「バットマン(1989)」の‥。
ジョーカーはまさしくピエロ。
ピエロは泣いてるのにね。
「ジョーカー(2019)」も、観た後、彼に対する見方も変わってきましたけど。


IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
監督:アンディ・ムスキエティ。メイン州デリーの田舎町で、児童失踪事件が相次いで発生。少年ビル(ジェイデン・リーバハー)の弟が消息を絶つ。悲しむビルの前に、突如“それ”が現れる。また、不良少年たちにイジメられている子どもたちも“それ”に遭遇していた。
IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
監督:アンディ・ムスキエティ。「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」から27年後、田舎町デリーで、ペニーワイズによる連続児童失踪事件が再び発生し。かつて“それ”と対峙した子供たちに“帰っておいで”という不穏なメッセージが届く。大人になった“ルーザーズ・クラブ”の仲間、ビル(ジェームズ・マカヴォイ)やベバリー(ジェシカ・チャステイン)たちが、“それ”の正体に迫る。

Eくん
年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。
夕暮係
小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で劇場デビュー。開幕し照明が消えると、大興奮のあまり酸素が不足し気分が悪くなって退場。初鑑賞は、あーなんと約3分でした。映画の黎明期から最新作までの系譜を追求。
映画 「フロム・ダスク・ティル・ドーン」 ジャンルの境界線を超えてくる
監督:ロバート・ロドリゲス。脚本:クエンティン・タランティーノ
〈Story〉
強盗殺人を犯し続けるゲッコー兄弟は、メキシコ国境を目指していた。牧師を辞めたフラーとその一家は、たまたまゲッコー兄弟に出会い、脅されて逃亡に加担する。フラー一家を隠れ蓑に利用してメキシコ国境を通過した一行は、クラブ「ティッティー・ツイスター」で一夜を過ごすことになる。そこは吸血鬼の巣窟だった。。。

脚本はさすが、タランティーノ。後半がホラー。
「フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996)」。
そうです。これも外せないかな。
あれは、レストランが悪魔の巣窟だった。
店の人がみんな怪物ね。
前半は犯罪ドラマ。誘拐されてる人が車の後ろのボンネットの中にいます。
あそこからホラーへの展開って、今までなかったですね。
僕も観て急にジャンルが変わったのでびっくりしました。。
展開を知らずに観るのが絶対いいですよね。
それまであり得なかったのが、犯罪者が主役になって、観客が感情移入できるのか?
それまでの主役像をちょっと覆したかな。
なるほど。
タランティーノはね。よく犯罪者を主役にしちゃいますよね。
そうですよね。犯罪者(「パルプ・フィクション」「ナチュラル・ボーン・キラーズ」)とか、チンピラ(「トゥルー・ロマンス」)とかね。
タランティーノが登場したことが大きいです。
ちょっと映画が変わっちゃった感じがしますね。すごいですよね。ジョージ・クルーニーが主演でしたよね。
僕はジョージ・クルーニーと同い年です。
えー同い年なんですか?


映画 「ファイナル・デスティネーション」 死から逃走するための法則は
監督:ジェームズ・ウォン
〈Story〉
修学旅行中の高校生アレックス・ブラウニングは、飛行機が爆発する予知夢を見て騒ぎ、友人や教師らと共に飛行機を降ろされる。飛行機は夢のとおり空中で爆発。アレックスはFBIから爆破テロの首謀者と疑われる。生き残った7人は、まず親友のトッド・ワグナーは浴室で足を滑らせ縊死する。。。

この作品のタブーは、死の運命から逃走すること。そして死が追いかけてくる。「ファイナル・デスティネーション(2001)」
「ファイナル・ディスティネーション」って、パッケージがジェットコースター。
あれは3作目位かな(「ファイナル・デッドコースター(2006)」)。1作目がやっぱりすごかったんです。それでシリーズ化なったんですけど(全5作品)。主人公は少し先の未来が見えてしまう。最初は飛行場で離陸を待ってる時に、ふと見てしまうんですね。
あぁ、未来を。
離陸して直ぐに事故が起きる。
それが見えてしまって、騒いで仲間と一緒に降ろされてしまう。死を回避しても、友達が次々と事故で亡くなっていく。
それでも予知ができるので何とか防ごうとする。
そんな駆け引きがある。
ホラー映画の特徴の1つで主役が物語の中のルールを見つけるんですね。それを仲間にどう信じさせるか? それがホラー映画の脚本の味付けの1つみたいです。
ファイナル・デスティネーション
監督:ジェームズ・ウォン。修学旅行中の高校生アレックス・ブラウニングは、飛行機が爆発する予知夢を見て騒ぎ、友人や教師らと共に飛行機を降ろされる。飛行機は夢のとおり空中で爆発。アレックスはFBIから爆破テロの首謀者と疑われる。生き残った7人中の親友のトッド・ワグナーは浴室で足を滑らせ縊死する。
ファイナル・デッドコースター
監督:ジェームズ・ウォン。「ファイナル・デスティネーション」シリーズの第3作目。ウェンディ・クリステンセン(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は、遊園地でジェットコースターの脱線事故の予知夢を見る。パニックを起こしたウェンディは、仲間10人と共にジェットコースターを降りるが、事故は現実となる。
映画 「the EYE 【アイ】」 死が伴走してくる理由とは
監督:オキサイド・パン、ダニー・パン
脚本:オキサイド・パン他
〈Story〉
幼い頃に失明したマン・ウォン(アンジェリカ・リー)は、20歳になって角膜手術を受け視力が回復する。その後、不可解な出来事や人物に遭遇するようになる。ある時、手術中の少女が、マンの前に現われ、直感的に彼女の死を察知する。死者の姿も見てしまうことを確信し苦悩する。。。

次は、2001年、香港・タイ・シンガポールの映画。「the EYE 【アイ】(2001)」。
これはね、オキサイド・バンとダニー・パンの兄弟の監督。これが代表するような作品です。
主人公の女性が角膜手術をするんです。それから何かが見えてしまう。
あぁ、そういう話なんですか
あまりホラー映画を怖いって思わないんです。話の作り方や撮り方の方が面白くて。
でも、これは怖かったです。怖い映画は面白いと思いました。西洋ものじゃない独特な味わい。
アジアのホラー映画って思いつかないんですけど、「新感染 ファイナル・エクスプレス(2917)」。あれは面白かったですね。韓国映画ってすごいなと思いました。
「THE EYE(アイ)」は、なぜこういう状況になったか?っていう謎が徐々に分かってくる。
見えるようになった理由が?
ミステリーぽくて、引き込まれます。
ただ見えるだけじゃなくて、自分に害を与えてくるような何かなんですかね?
最初は見えるだけですね。亡くなった人なので、何かを訴えようとしてくるんですね。
これはねぇ、ホラー映画ではお勧めです。
僕は初めて聞きました。
次は、2009年イギリス・オーストラリア作品。「トライアングル(2009)」。
タイトル聞いただけではどんなのか分からない。
海洋ものというか。
バミューダトライアングルですか?
この物語はループものです。そこからどう脱出するのか?
「ハッピー・デス・デイ(2017)」みたいな
永遠なる苦しみ。そんなシーシュポスの神話ってあるじゃないですか、カミュの小説みたいな。山の上に岩を上げると、転がり落ちてくる。いつまでも繰り返すみたいなね。一切皆苦からの解脱。
そういう怖さと、物語のルールが解明されたらどうなるかという興味。
ループものか。面白そう。
新感染 ファイナル・エクスプレス
監督:ヨン・サンホ。ソ・ソグ(コン・ユ)は、娘スアンを連れてソウル発釜山行きのKTX101列車に乗り込む。同列車には、労働者階級のユン・サンファ(マ・ドンソク)と身重の妻ソンギョン、高校生野球チームのキム・ジニとミン・ヨングクたちが乗っていた。発車直後、スアンは車窓から駅員が何者かに襲われる様子を目撃する。
トライアングル
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。そこから無間ループが待ち受ける。
ハッピー・デス・デイ
監督:クリストファー・B・ランドン。9月18日月曜日、誕生日。テレサ・ゲルブマン(ジェシカ・ローテ)は同じ寮に住むカーター・デイヴィス(イズラエル・ブルサード)の部屋で目を覚ます。いつもと同様にグレゴリー・バトラー教授と不倫した夜、トンネル内で不審者に殺される。気が付くと、ツリーはカーターの部屋で目を覚ましていた。
映画 「フッテージ」 初めての家にまとわりつく恐怖
監督:スコット・デリクソン
〈Story〉
ノンフィクション作家、エリソン(イーサン・ホーク)は、妻トレイシー(ジュリエット・ライランス)と二人の子供と共に、ペンシルヴァニア州郊外の一軒家へ引っ越した。しかしエリソンは、以前に起きた一家惨殺事件を、家族に伝えていなかった。エリソンは、その真相を調べて本を書くために越して来た。。。

「フッテージ(2012)」。
タイトルだけは聞いたことあるんですけど
よくありますよね。「引っ越したらバージョン」、イーサン・ホークが引っ越したばかりのお家の地下からあるものを見つけてくる。「フッテージ」なんでね、残された媒体。それはフィルムなんですけど。
謎が解明していく所は「the EYE 【アイ】」と似てるのが、謎解きとホラーの二重奏。
余談ですけど、少し前にテレビで観たホラー映画。アメリカ映画なんですけども、男の人が新しい家に引っ越してきて、そこからいろいろ怪奇現象が起きるみたいな。
あの映画なんやったかなと思っていたら、つい最近わかったんです。「ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ(2004)」。ストーリーは覚えてないんですけど、ロバート・デ・ニーロが出てたのを思い出しました。
では、2017年のアルゼンチンの映画から「テリファイド(2017)」。これは訳がわからない怖さ。見終わっても訳がわからなかった。けども怖かった。
見終わって訳がわからないっていうのは、僕の中では「イット・フォローズ(2014)」があるんです。
アメリカ映画はロジカルですよね。
ここら辺はもう「トライアングル」あたりから変化球。。
これはお化けが出てくるんですか?
こんなにっていうくらい、はっきり出てきます。しっかり作り込んでいるのが、「アルゼンチンやるなぁ」と。
普通のホラー映画と違うのは、警察まで介入してくるし、学者も出てくる。
ホラー映画なんですか?
コメディーじゃなくて、ちゃんとしたホラー映画です。これは観て欲しいです。
ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ
監督:ジョン・ポルソン。母親の自殺を目撃したエミリー(ダコタ・ファニング)は心を閉ざす。それを心配した父デイヴィッド(ロバート・デ・ニーロ)は、エミリーと飼い猫セバスチャンと一緒にニューヨーク郊外に移り住む。エミリーは見えない友達、チャーリーと遊ぶようになる。
イット・フォローズ
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル。ジェイ(マイカ・モンロー)は、恋人ヒュー(ジェイク・ウィアリー)とデートを重ね関係をもつ。ジェイは、関係により呪いを移されたと知る。そして。「それ」に追いかけられ始める。
テリファイド
監督:デミアン・ルグナ。ブエノスアイレスのある住宅で、ポルターガイスト現象が頻繁に起きていた。警官のマザは専門チームと組んで、謎を解き明かすために屋内に踏み込むが、悪霊たちは、彼らに容赦なく襲い掛かる。
映画 「屍人荘の殺人」 ホラーか、ミステリーか。
監督:木村ひさし。
〈Story〉
神紅大学ミステリー愛好会の葉村譲(神木隆之介)と、「神紅のホームズ」を自称する明智恭介(中村倫也)は、警察に協力し難事件を解決している。剣崎比留子(浜辺美波)に誘われ夏合宿に参加する。初日の夜、近くのライブイベントから死者たちが押し寄せてくる。。。

次が、2019年のゾンビ。でも、ホラー映画に入れてよかったのかな。
これは思いっきり変化球。
ミュージカルものですか?
じゃないです。日本の映画です。「このミステリーがすごい! 2018年度版」で1位になってから、読みたいなぁ、って思ってると映画化になったんで。
はいはい。ホラー映画じゃないですね。
原作はミステリーなんでね。
浜辺美波が主演。
ちょっとだけネタバラシすると、中村倫也演じる明智恭介がその大学のシャーロック・ホームズみたいに謎を解く探偵役として登場する。
ミステリーサークルで合宿に行くことになって、合宿先でゾンビが出てきて襲われる。
中村倫也が最初に食われてしまう。
探偵役が(笑)
あれ? みたいな。
種明かしできるのはそれぐらいかな。
これがミステリーなんですか?
そんなゾンビが出てきて。
なぜミステリーかって言うと、ミステリーの1つに密室ものっていうのが‥。
ありますね。
で、密室状態になるのが、周りがゾンビっだからで。
笑。なるほど、そういうシチュエーションか。
屋敷の殺人事件を解いていく。
変なシチュエーション。
この設定の二番煎じはもう使えない。
話を聞いてると興味が湧いてきました。
賞を獲ったんでね。ミステリーとして面白い。(第27回鮎川哲也賞受賞作品。第18回本格ミステリ大賞受賞)
次は、「アス(2019)」ですね。あれはちんぷんかんぷんでした。
ラストでこの監督だったら、なるほどと。
「ゲットアウト」にしても「ブラック・クランズマン(2018)」にしても完全にカラード(Coloured:有色人種)がテーマの作品。
「アス」は、そっくりな家族が出てきて、〈彼らは「アス」だから「わたしたち」なんですけど〉作ったから側からするとね。全く同じ人間なのに、人間扱いされてない。完全に切り離された世界で、影の存在ですね。同じような構成の家族でも、片方は人間で片方は人間扱いされない。大きな壁がある。
あれはカラードの主張だと思いました。
公開当時、なんのこっちゃって感じでした。
映画の中では明快な設定(人種分け)はしてないですけど、最後は彼らが世界で手をつないで、我らが勝つぞみたいな最後です。
「ゲット・アウト」の方が分かりやすかったですね。
次は、2019年のパニック映画。製作がサム・ライミ。
「クロール -凶暴領域-(2019)」
そうです。
僕は、映画館に観に行きました。面白いですよね。
設定がね、フロリダにハリケーンが来る。フロリダのワニはアリゲーターですよね。
ワニなんているんですね、フロリダに?
そう、普通のフロリダを舞台にしたドラマにも出てきますよ。
フロリダは特に有名です。
ほんとに洪水になったら、ワニが出てくるんですか?
ニュースの解説だと、人間を見たら襲わなくて、逃げていくそうです。子供だったら違うでしょうけど。大人だったら襲ってこないらしいです。
「クロール」っていうタイトルはちょっとふざけてますよね。
笑。主人公が噛まれるか何かで、怪我するんでしたっけ。足を引きずった状態でワニと戦うんですよね。
物語の設定では女の子は水泳選手なんですね。最後に「あのボートまで泳げ」って、「クロール」。(「クロール」には這うという意味もある)
シチュエーションは面白かったです。お父さんが家に居て、洪水とワニからどう抜け出すか。

著者:今村 昌弘「屍人荘の殺人」東京創元社。密室ミステリーという類型にゾンビという要素を融合させ、これまでのミステリーの枠を超えた革新的なエンターテイメント作品となった。『このミステリーがすごい!2018年版』第1位。『週刊文春』ミステリーベスト第1位。『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位

アス
監督・脚本:ジョーダン・ピール。ウィルソン家4人はサンタクルーズにあるビーチハウスを訪れビーチへ出かける。 夜、停電が発生、玄関先に4人の不審者が立っている。父ゲイブは不審者を追い払おうとするが、4人はそのまま屋内に押し入って来る。4人は自分たちとそっくりな人間で「私たちもアメリカ人だ」と主張した。
クロール -凶暴領域-
監督:アレクサンドル・アジャ。大学生で競泳選手のヘイリー・ケラーは、フロリダ大学の水泳大会から帰宅。その頃、巨大ハリケーンがフロリダ州に接近しているた。父デイブと連絡が取れず、安否が気になったヘイリーは、デイブの家へと向かう。家にはいなかったので、コーラル湖畔の家に向かう。その家の床下から音を聞く。地下室で、デイブは意識を失い、肩に傷を負っていた。すぐ脱出しようとするが、巨大なアリゲーターが襲ってきた。
映画 「サスペリア(2018)」 織交ぜられた知的エッセンス
監督:ルカ・グァダニーノ
〈Story〉
1977年、米ソ冷戦中のベルリンにアメリカからやってきた少女スージー(ダコタ・ジョンソン)は、モダンダンスの舞踊団へ入学。精神科医のクレンペラー(ティルダ・スウィントン)は、患者のパトリシアから舞踊団で悪魔崇拝の儀式が行われていると聞き、その後パトリシアから連絡が取れなくなり、調査を始める。テレビでは、ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件を報道していた。ティルダ・スウィントンがクレンペラー医師、マダム・ブラン、ヘレナ・マルコスの男女3役に扮している。

次は、「ヘル・フィールド ナチスの戦城(2020)」。
ナチスとお化けが出てくるんですか?
イギリス映画なんですけど、フランスが舞台。占領場所でナチスも来る。イギリスも進駐して、お城のような屋敷に交代要員として行くんです。
5人ぐらいで、そこを軍事拠点として抑えておかないといけない。行くと先の人たちがそそくさと出て行く。
「君らはなんで入り口で寝泊まりしてるんや?」って訊いても「後は頼んだ」って行ってしまう。
そこから、死霊に襲われる。自分たちも脱出しようとするけど、いつのまにか戻ってきてしまうループ空間。
気持ち悪い。
これは最後の種明かしが衝撃的。
「オーヴァーロード」も面白いんで、これもナチスとゾンビです。
当時就活で疲弊していた頃に観ましたね。
最後は、2018年。ダリオ・アルデンジェントじゃない方の「サスペリア(2018)」
あぁ。「君の名前で僕を呼んで(2017)」の監督だ(ルカ・グァダニーノ)。
あの「サスペリア」強烈でしたね。オリジナル版と全然違うじゃないかって。ラストで裸の女の人が踊り狂ってるのが焼きつく。
この作品を外したくないと思ったのは、2週間くらい考えさせられたから。
鍵になるのが、謎を解く役割の精神科医のおじいさんがいますよね。
この人がお家を出るときに近所の人に、「僕はこれからラカンの講演を聴きにに行く」と言うのが印象に残るんですよ。
「ジャック・ラカンの講演」なんですね。ラカンは精神科のお医者さんですけど、構造主義の学者として有名です。
簡単に言えば、類型化をする。
例えば「騎士流離譚」という型が、位の高い人が身分を隠して旅をするという物語で、そんな神話類型に当てはめてジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」の話を作ったんです。
映画の中に出てくる「魔女集団」「ダンスの教室」「ニュースから流れる第三帝国のテロリスト集団」。この3つは、リーダー・幹部・メンバーっていう構成要素が似てるんです。メンバーは幹部への承認欲求だし、幹部はリーダーへの承認欲求のための行動になっている。
映画の最後で精神科医に、アーリア人種の証明書が届く。アーリア人種はナチスが目指す人種主義なんですけど、この証明書で迫害から脱出できる。(迫害者と被迫害者の二重人格になって捻れてしまう)
ラカンは「欲望」は自分本来から生まれるのではなくて他者から得たものだと説明している。ヒトは本能で行動できない生き物なので、知能で行動しますから。
はぁー、なるほど。
映画はずっと雨なんですよ。
これは一作目の「サスペリア」と全然違うところです。最後に雪になって、あの精神科医のところに証明書が届くと青空になる。自然に語らせるのが上手い。
どんどん深みにはまっていく作品です。
これは公開してた当時、オリジナル版もリバイバル上映してて、僕はそちらのほうに夢中でした。全く別物じゃないですか? 観返してみようかな?
モチーフは同じなんだけどもなんか違う。
舞踊集団のリーダーが言ったのは「舞踏は言葉」だと、自分たちはただ舞踏で語るんだって、そして舞踏のタイトルが「民族」なんです。
本来のテーマはもっと深いところにあるのかも。
そんなところまで観てるんですね
この「サスペリア」は人を選ぶかも。
知らなかったのが多いんで、また調べてみます。
今はコロナ禍で公共の場所でしゃべれない時代じゃないですか。
それが妙にマッチするのが「クワイエット・プレイス(2018)」。
タイトルから、まんまですね。ちょっと音を鳴らすだけで、何かに襲われるシチュエーション。
宇宙生物みたいなのが来るんですよ。人がほとんどいなくなった世界で、ある一家だけが生き延びるんです。
それと「ドント・ブリーズ(2016)」です。
おじいちゃんの家に盗みに入ったら、盲目のスーパー軍人だった。
これは両方とも音を立ててはいけないっていうシチュエーション。なんですけど、全く別の面白さがあって好きなんですよ。
どっちも今年、続編を公開しましたけど(「クワイエット・プレイス破られた沈黙(2021)」「ドント・ブリーズ2(2021)」)これもシチュエーションとしても素晴らしい。
この設定ができた時点で成功ですよね。
ありますよね、そういうの。
「サマー・オブ・84(2017)」って観ました?
日常的な話で主人公は小学生くらいかな。あることがきっかけで、隣に住んでる人がもしかしたら子供を誘拐して殺してる、ヤベー奴なんじゃないか?って。
真相を付き止めるべく行動する。オチが後味悪くて、結局その隣の人は殺人鬼でもなんでもなかったって見せかけて、実は張本人。
男の子を殺す直前で止めて、「お前が大人になった時に、人生をめちゃくちゃにしてやるからな」って言って立ち去るんですよ。
えぇーっ。
めちゃくちゃ後味が悪かったです。
子供の勘違いでした、みたいな感じかなと思って観てたら‥。
80年代が舞台なのが面白いです。
タイトルだけは爽やかですね。
では、そろそろ帰りのバスがなくなるのでこの辺で。。。
そうね。じゃあ帰りはくれぐれも気をつけてね。
ヘル・フィールド ナチスの戦城
監督:エリック・ブレス。第二次世界大戦中のフランス。米軍兵士5人が制圧していた城に派遣される。そこにはナチスよりも恐ろしいものが待ち受けていた。

ジョーゼフ・キャンベル著「千の顔をもつ英雄」早川書房。ハヤカワ・ノンフィクション文庫。キャンベルが各地の神話に登場するヒーローの物語の構造を示した。英雄の旅は(1)主人公は別の非日常世界への旅に出、(2)イニシエーションを経て、(3)元の世界に帰還する、という共通の構造を持っている。Calling(天命) 、Commitment(旅の始まり)、Threshold(境界線)、Guardians(メンター)、Demon(悪魔)、Transformation(変容)、Complete the task(課題完了)、Return home(故郷へ帰る)。 ジョージ・ルーカスがキャンベルの講義を受講し、多大な影響を受けたことで有名。
クワイエット・プレイス
監督:ジョン・クラシンスキー。2020年、宇宙から来た怪物が世界中で人類を餌食にしていた。怪物は盲目であり、アボット家は手話による会話で生き延びていた。
ドント・ブリーズ
監督:フェデ・アルバレス。デトロイトのゴーストタウン化が進む街で、不良少女ロッキー(ジェーン・レヴィ)はボーイフレンドのマネー(ダニエル・ゾヴァット)と友人のアレックス(ディラン・ミネット)の3人で視覚障害者宅へ強盗に入る。しかし、住人は元・軍人であり、優れた聴覚を持つ人物だった。
クワイエット・プレイス 破られた沈黙
監督:ジョン・クラシンスキー。前作の後、アボット家は外の世界に救いを求めることにした。ところが、そこには怪物以外の脅威が存在していた。
ドント・ブリーズ2
監督:ロド・サヤゲス。前作から8年、盲目の退役軍人ノーマン・ノードストローム(スティーヴン・ラング)は11歳のフェニックス(マデリン・グレイス)と飼い犬のシャドーと暮らしている。ノーマンはフェニックスに彼女の母親は一家の古い家での火事で死んだと言い聞かせていた。旧友ヘルナンデス(ステファニー・アルシラ)は、ノーマンとフェニックスの気分転換に街に連れ出す。そこでは、何者かがフェニックスを連れ去ろうと狙っていた。
サマー・オブ・84
監督:フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル。1984年夏、オレゴンの田舎町イプスウィッチ。15歳の少年デイビーは、向かいに住む警察官マッキーの家に新聞を配達した時に、地下室の奥に施錠された部屋を見つける。その夜、デイビーはマッキーの家の中にいる男の子を見かける。 デイビーは友達と捜査を始め、マッキーがホームセンターでガーデニング用品を大量に購入していることを知る。
(対話月日:2021年10月8日)