(A面からのつづき:いつしか、夕暮係がヒントを出し、Eくんがタイトルを当てるという流れになっていた)
再び、キング
次は、えーっとね、89年。
「13日の金曜日(1980)」は80年代ですし。
スティーブン・キング。この怖さっていうのは、タブーを犯してしまうこと。
ピンときました。「ペット・セメタリー(1989)」。
そうです。
まさしくタブーですね。子供を生き返らせようと。
その怖さ。絶対何かが起きるのが、観客に分かってしまう。
男の子が交通事故で轢かれて亡くなっちゃうんでしたっけ?
最初はペットで生き返ることが分かって、動物霊園(ペット・セメタリー)に埋めるんだけど、それを子供でやってしまうから、間違いなく代償がある。
とんでもない代償。怖いな。あんなことなるぐらいだったら。
と思いつつも、そこにはやっぱり愛があるから。
我が子を亡くして、わらにもすがる思いで、もう一度会いたいという親心なんですね。悲しいですよね。
キングは凄い所へ目をつけるなって。
あの人すごいですよね。ホラー以外でも。「ショーシャンクの空に(1994)」とか。
僕も「ショーシャンク」は大好きで。
原作は短編に近くて(「刑務所のリタ・ヘイワース」という小説。「恐怖の四季」の中の一篇)。
あ、そうなんですか? 映画だとあんなにたっぷりって感じなんですけど。
冒頭近くの、モーガン・フリーマン(レッド)のモノローグで「まるで公園でも散歩をしているかのようだった」って主人公(アンディ・デュフレーン)を表現する。主人公が小石を拾いながら歩いていて、それが刑務所なんだけど。
僕も映画は楽しめました。やっぱり「ショーシャンク」人気ですよね。好きな映画って聞かれたら「ショーシャンク」を挙げる方もきっと多いと思いますし。
なんかね。あの独特な清々しさがいいね。
いいですよね、スティーブン・キング。
僕も1個ありましたよ。これはもうめちゃくちゃ有名で、すぐ分かっちゃいますけど、比較的最近の作品です。ジョブナイル要素があって、若者というか青春というか。
「ホラー版スタンド・バイ・ミー」とか言われてました。
昔、テレビドラマ版もあって。
ピエロが出てくるやつ? えっと何やったっけ。(夕暮係は忘却の名人である)
アルファベットで2文字で。(ほぼ答えを言っている)
「IF」(しかし見事に外す。「If もしも….」は1968年の映画)
「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017)」です。惜しい。(Eくんは優しい青年である)
2部作になってて。
大人になってからのも。
そうそう、後編のほうは大人になってから、もともとその前編が主人公たちが小学校の高学年かな。10代のあのあたりも好きなんです。主人公たちがいじめられてたり、親から虐待されてたりとか、親をなくしてる子もいたり。「ルーザーズ(負け組)」って呼ばれてるんですけど、そんな子たちがふとしたことで出会って、とんでもない鬼畜ピエロを倒しに行くっていうストーリーになる。
ピエロは昔から街に巣食う悪魔で、そんな相手に「負け組」って呼ばれてる子たちが立ち向かっていく。その構図だけでも個人的にグッてくるのもあります。
後編の「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019)」は30年後ぐらいやったかな。あのピエロが出たからまた集まろう、ていうのもすごい好きで。
仲間に女の子もいましたよね。
お父さんから虐待を受けてて、ペニーワイズ扮するピエロがトラウマを幻覚にして攻めてくるんです。怖いママの顔で出てきたり。そういうのが面白くて、ビジュアルもいいんですよ。
後編にも忘れられないシーンがあります。クライマックスでピエロを倒した後、みんなで街を歩いてて、お店のでかい窓ガラスをぱっと見たら少年時代の自分たちが映ってるシーン。ウルウルしちゃって。自分でもわからないですけど、何て言うのか30年越しの友情っていうのが、ホラー映画なんですけど、すごい感動しちゃって。
1作目に弟が溝に船を浮かべて、それを追いかけていくんですよね。排水溝みたいなところからピエロが出てくる。
2作目もピエロの屋敷みたいな。
屋敷だったか井戸みたいな巣があって、みんなで倒しに行く。
そうかあれが「ホラー版スタンドバイミー」。なるほどなぁ。
余談ですけど「IT/イット」は前編も後編も映画館で観たんです。
特に前編を観に行った時は夏休みだったのかな。僕は当時大学生だったんですけど。中高生の男の子や女の子が、ピエロが出てくるたびにすごい騒ぐんです。「キャー」って。普段だと「うるさいなぁ」って思っちゃうんですけど、ホラー映画になると、それが楽しくて未だに忘れられないです。
ピエロってやっぱり怖い存在なのかなぁ?
ピエロ恐怖症ってありますけどね。
ピエロに扮して子供を殺害した事件とか殺人鬼もいます。なんなんでしょうね、ピエロ。
「バットマン(1989)」の‥。
ジョーカーはまさしくピエロ。
泣いてるのにね。
「ジョーカー(2019)」も、観た後、彼に対する見方も変わってきましたけど。
ペット・セメタリー
キングが「あまりの恐ろしさに発表を見合わせた」という噂さの作品。監督:メアリー・ランバート。メイン州の田舎町、医者ルイス・クリードの猫のチャーチルが車に轢かれて死ぬ。ルイスは、隣家のジャドに連れられて、死骸を裏山の奥の丘に埋める。次の日、死んだはずのチャーチルが家に帰ってきた。しかし、チャーチルは腐臭を発していた。またある日、息子ゲージが車に轢かれて死ぬ。
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
監督:アンディ・ムスキエティ。メイン州デリーの田舎町で、児童失踪事件が相次いで発生。少年ビル(ジェイデン・リーバハー)の弟が消息を絶つ。悲しむビルの前に、突如“それ”が現れる。また、不良少年たちにイジメられている子どもたちも“それ”に遭遇していた。
IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
監督:アンディ・ムスキエティ。「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」から27年後、田舎町デリーで、ペニーワイズによる連続児童失踪事件が再び発生し。かつて“それ”と対峙した子供たちに“帰っておいで”という不穏なメッセージが届く。大人になった“ルーザーズ・クラブ”の仲間、ビル(ジェームズ・マカヴォイ)やベバリー(ジェシカ・チャステイン)たちが、“それ”の正体に迫る。
ひと味、ふた味、違うホラー
では、1996年。これはどのヒントを言っても分かってしまう。
ちょっと有名すぎるかもしれない。
えっと脚本が凝ってる。前半はホラーじゃない。後半だけホラー。脚本はさすが、タランティーノ。
あぁ、あれかな「フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996)」。
そうです。これも外せないかな。
あれは、バーって言ったらいいのか? レストランみたいなところに入って、悪魔みたいな‥。
店の人がみんな怪物みたいなね。
前半てほんとにね、ただの犯罪者。誘拐されてる人が車の後ろのボンネットの中にいて。
あそこからホラーへの展開って、今までなかったですね。
僕も観てびっくりしました。急にジャンルが変わったのって。
これも展開を知らずに観るのが絶対いいですよね。
それまであり得なかったのが、犯罪者が主役になって、観客が感情移入できるのか?
それまでの主役像をちょっと覆したかな。
なるほど。
タランティーノはね。よく犯罪者を主役にしちゃいますよね。
そうですよね。犯罪者(「パルプ・フィクション」「ナチュラル・ボーン・キラーズ」)とか、チンピラ(「トゥルー・ロマンス」)とかね。
タランティーノが登場したことが大きいです。
ちょっと映画が変わっちゃった感じがしますね。
すごいですよね。脚本を書いて自分も出演して、ジョージ・クルーニーでしたよね。
僕はジョージ・クルーニーと同い年です。
えー同い年なんですか?
フロム・ダスク・ティル・ドーン
監督:ロバート・ロドリゲス。脚本:クエンティン・タランティーノ。強盗殺人を犯し続けるゲッコー兄弟は、メキシコ国境を目指していた。牧師を辞めたフラーとその一家は、たまたまゲッコー兄弟に出会い、脅されて逃亡に加担する。フラー一家を隠れ蓑に利用してメキシコ国境を通過した一行は、クラブ「ティッティー・ツイスター」で一夜を過ごすことになる。そこは吸血鬼の巣窟でだった。
次にいきます、2000年。これもねタブーを犯せば、そうなるでしょう、みたいな。
2000年代になると、僕はちょっと弱くなってきますね。
このときのタブーっていうのは、言ってしまうと、死の運命を回避してしまうこと。そして死が追いかけてくる。「ファイナル・デスティネーション(2001)」
「ファイナル・ディスティネーション」って、パッケージがジェットコースター。
あれは3作目位かな(「ファイナル・デッドコースター(2006)」)。1作目がやっぱりすごかったんです。それでシリーズ化なったんですけど(全5作品)。主人公は少し先の未来が見えてしまう。最初は飛行場で離陸を待ってる時に、ふと見てしまうんですね。
あぁ、未来を。
離陸して直ぐに事故が起きる。
それが見えてしまって、騒いで仲間と一緒に降ろされてしまう。死を回避しても、友達が順番に事故で亡くなっていく。
それでもやっぱり予知ができるので何とか防ごうとする。
そんな駆け引きがある。
ホラー映画の特徴の1つで主役が物語の中のロジックを見つけてしまうんですよね。それを友達にどう信じさせるか? それがホラー映画の脚本の1つの色付けみたいです。
ファイナル・デスティネーション
監督:ジェームズ・ウォン。修学旅行中の高校生アレックス・ブラウニングは、飛行機が爆発する予知夢を見て騒ぎ、友人や教師らと共に飛行機を降ろされる。飛行機は夢のとおり空中で爆発。アレックスはFBIから爆破テロの首謀者と疑われる。生き残った7人中の親友のトッド・ワグナーは浴室で足を滑らせ縊死する。
ファイナル・デッドコースター
監督:ジェームズ・ウォン。「ファイナル・デスティネーション」シリーズの第3作目。ウェンディ・クリステンセン(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は、遊園地でジェットコースターの脱線事故の予知夢を見る。パニックを起こしたウェンディは、仲間10人と共にジェットコースターを降りるが、事故は現実となる。
次は、2001年、香港・タイ・シンガポールの映画。「the EYE 【アイ】(2001)」。
これはね、オキサイド・バンとダニー・パンの兄弟の監督。これが代表するような作品です。
主人公の女性が角膜手術をするんです。それから見えてしまう。
あぁ、そういう話なんですか
あまりホラー映画を怖いって思わないんです。どちらかと言うと、話の作り方とか、撮り方とか、そっちの方が面白くて。
でも、これはね。怖かったです。怖い映画って面白いと思いました。西洋ものじゃない独特な味わい。
アジアのホラー映画って思いつかないんですけど、「新感染 ファイナル・エクスプレス(2917)」。あれは面白かったですね。韓国映画ってすごいなと思いました。
「THE EYE(アイ)」は、なぜこういう状況になったか?っていう謎が徐々に分かってくる。
見えるようになった理由が?
ちょっとミステリーで、引き込まれるんですけど。
それはただ見えるだけじゃなくて、自分に害を与えてくるような何かなんですかね?
最初は見えるだけですね。亡くなった人なので、何かを訴えようとしてくるんですね。
これはねぇ、ホラー映画ではちょっとお勧めです。
僕は初めて聞きました。
次は、2009年イギリス・オーストラリア作品。これはメジャーじゃないです。
「トライアングル(2009)」。
タイトル聞いただけではどんなのか分からない。
海洋ものというか。
バミューダトライアングルですか?
これは物語がずっと繰り返す、ループものです。そこからどう脱出するのか?
「ハッピー・デス・デイ(2017)」みたいな
あ、そうですね。そんな神話ってあるじゃないですか、カミュの小説みたいな。山の上に岩を上げると、転がり落ちてくる。いつまでも繰り返すみたいなね(「シーシュポスの神話」)。一切皆苦からの解脱。
そういう怖さと、それを解明したらどうなるかという興味。
ループものか。面白そう。
the EYE 【アイ】
幼い頃に失明したマン・ウォン(アンジェリカ・リー)は、20歳になって角膜手術を受け視力が回復する。その後、不可解な出来事や人物に遭遇するようになる。ある時、手術中の少女が、マンの前に現われ、直感的に彼女の死を察知する。死者の姿も見てしまうことを確信し苦悩する。
新感染 ファイナル・エクスプレス
監督:ヨン・サンホ。ソ・ソグ(コン・ユ)は、娘スアンを連れてソウル発釜山行きのKTX101列車に乗り込む。同列車には、労働者階級のユン・サンファ(マ・ドンソク)と身重の妻ソンギョン、高校生野球チームのキム・ジニとミン・ヨングクたちが乗っていた。発車直後、スアンは車窓から駅員が何者かに襲われる様子を目撃する。
トライアングル
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。そこから無間ループが待ち受ける。
ハッピー・デス・デイ
監督:クリストファー・B・ランドン。9月18日月曜日、誕生日。テレサ・ゲルブマン(ジェシカ・ローテ)は同じ寮に住むカーター・デイヴィス(イズラエル・ブルサード)の部屋で目を覚ます。いつもと同様にグレゴリー・バトラー教授と不倫した夜、トンネル内で不審者に殺される。気が付くと、ツリーはカーターの部屋で目を覚ましていた。
ホラーの球種がバラエティ豊かに
「フッテージ(2012)」。
タイトルだけは聞いたことあるんですけど
イーサン・ホーク主演です。
これはどんなものですか?
よくありますよね。引っ越してきたら‥バージョン。イーサン・ホークが引っ越したばかりのお家の地下からあるものを見つけてくる。「フッテージ」なんでね、残された媒体。それはフィルムなんですけど。
謎が解明していく所は「the EYE 【アイ】」と似てるんです。謎解きとホラーが二重になってる。
余談ですけど、少し前にテレビで観たホラー映画。アメリカ映画なんですけども、男の人が新しい家に引っ越してきて、そこからいろいろ怪奇現象が起きるみたいな。
あの映画なんやったかなと思っていたら、つい最近わかったんです。「ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ(2004)」。ストーリーは覚えてないんですけど、ロバート・デ・ニーロが出てたのを思い出しました。
では、2017年、アルゼンチンの映画です。これは訳がわからない怖さ。見終わっても訳がわからなかった。けども怖かった。
見終わって訳がわからないっていうのは、僕の中では「イット・フォローズ(2014)」があるんですけど。これはアメリカ映画だし。
アメリカ映画はねぇ、やっぱりロジカルですよね。
ここら辺はもう「トライアングル」あたりから変化球。
タイトルは、「テリファイド(2017)」。
これはお化けが出てくるんですか?
こんなにっていうくらい、はっきり出てきます。結構しっかり作り込んで、すごいなぁと。「アルゼンチンやるなぁ」みたいな。
普通のホラー映画だったら、警察とか介入してこないじゃないですか。警察も乗り込んでくるし、学者も出てくるし。
ホラー映画なんですか?
コメディーじゃなくて、ちゃんとしたホラー映画です。これは観て欲しいです。
フッテージ
監督:スコット・デリクソン。ノンフィクション作家、エリソン(イーサン・ホーク)は、妻トレイシー(ジュリエット・ライランス)と二人の子供と共に、ペンシルヴァニア州郊外の一軒家へ引っ越した。しかしエリソンは、以前に起きた一家惨殺事件を、家族に伝えていなかった。エリソンは、その真相を調べて本を書くために越して来た。
ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ
監督:ジョン・ポルソン。母親の自殺を目撃したエミリー(ダコタ・ファニング)は心を閉ざす。それを心配した父デイヴィッド(ロバート・デ・ニーロ)は、エミリーと飼い猫セバスチャンと一緒にニューヨーク郊外に移り住む。エミリーは見えない友達、チャーリーと遊ぶようになる。
イット・フォローズ
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル。ジェイ(マイカ・モンロー)は、恋人ヒュー(ジェイク・ウィアリー)とデートを重ね関係をもつ。ジェイは、関係により呪いを移されたと知る。そして。「それ」に追いかけられ始める。
テリファイド
監督:デミアン・ルグナ。ブエノスアイレスのある住宅で、ポルターガイスト現象が頻繁に起きていた。警官のマザは専門チームと組んで、謎を解き明かすために屋内に踏み込むが、悪霊たちは、彼らに容赦なく襲い掛かる。
次が、2019年のゾンビ。でも、ホラー映画に入れてよかったのかな。
これは思いっきり変化球。
ミュージカルものですか?
じゃないです。日本の映画です。「このミステリーがすごい! 2018年度版」で1位になってから、読みたいなぁ、って思ってると映画化になったんで。
ありましたっけ、日本の映画なんですか?
「屍人荘の殺人(2019)」
あぁ、はいはい。ホラー映画じゃないですね。
原作はミステリーなんでね。
浜辺美波が主演。
ちょっとだけネタバラシすると、中村俊哉がその大学のシャーロック・ホームズみたいに謎をどんどん解く人物として登場する。
ミステリーサークルで合宿に行くことになって、合宿先でゾンビが出てきて襲われる。
中村俊哉が最初に食われてしまう。
探偵役が(笑)
あれ? みたいな。
種明かしできるのはそれぐらいかな。
これがミステリーなんですか?
ミステリーでそんなゾンビが出てきて。
なぜミステリーかって言うと、ミステリーの1つに密室ものっていうのが‥。
ありますね。
で、密室状態になるっていうのが、周りがゾンビっだからで。
笑。なるほど、そういうシチュエーションか。
ある人がなぜ屋敷の中で亡くなったのかっていう謎を解いていく。
変なシチュエーション。
この設定を思いついたら、もう二番煎じは使えない。
公開当時気にも留めてなかったんで、話を聞いてると興味が湧いてきました。
賞を獲ったんでね。ミステリーとして面白い。(第27回鮎川哲也賞受賞作品。第18回本格ミステリ大賞受賞)
次は、2019年アメリカ映画です。この監督の他の作品は「ゲット・アウト(2017)」
あぁ、じゃぁ「アス(2019)」です。
そうです。
あぁ、僕、あれはちんぷんかんぷんでした。
そうか。僕は最後の最後に、あぁこの監督か、なるほどと。
「ゲットアウト」にしても「ブラック・クランズマン(2018)」にしても完全にカラード(Coloured:有色人種)がテーマの作品。
「アス」は、そっくりな家族が出てきて、〈彼らは「アス」だから「わたしたち」なんですけど〉作ったから側からするとね。全く同じ人間なのに、人間扱いされてない。完全に切り離された世界で、影の存在ですね。同じような構成の家族でも、片方は人間で片方は人間扱いされない。大きな壁がある。
最後を見たときにあれは完全にカラードの主張だと思いました。
公開当時、なんのこっちゃって感じでした。
映画の中では明快な設定(人種分け)はしてないですけど、最後の主張であの人たちは世界で手をつないで、我らが勝つぞみたいな最後です。
「ゲット・アウト」の方が分かりやすかったですね。
こちらは、2019年、ホラーじゃなくてパニック映画。製作がサム・ライミ。
サム・ライミいっぱいありますからね。動物ですかね。あぁ、「クロール -凶暴領域-(2019)」
そうです。
僕は、映画館に観に行きました。
パニック映画は、これしか思い浮かばなかったというか‥ホラーでもないかなぁ、パニックかなぁみたいな。でも面白いの。
面白いですよね。
設定がね、フロリダにハリケーンが来る。フロリダのワニなんで、アリゲーターですよね。
ワニなんているんですね、フロリダに?
そう、普通のフロリダを舞台にしたドラマにも出てきますよ。
フロリダは特に有名です。
ほんとに洪水になったら、ワニが出てくるんですか?
ニュースの解説だと、人間を見たら襲わなくて、逃げていくそうです。子供だったら違うでしょうけど。人間くらいの大きさだったら本当は襲ってこないらしいです。
「クロール」っていうタイトルはちょっとふざけてますよね。
笑。主人公が噛まれるか何かで、怪我するんでしたっけ。足を引きずった状態でワニと戦うんですよね。
物語の設定では女の子は水泳選手なんですね。最後に「あのボートまで泳げ」って、「クロール」。
シチュエーションは面白かったです。お父さんが家に居て、そこからどう抜け出すか。
地下室があるんですよね。
ワニと対峙して。
屍人荘の殺人
監督:木村ひさし。神紅大学ミステリー愛好会の葉村譲(神木隆之介)と、「神紅のホームズ」を自称する明智恭介(中村倫也)は、警察に協力し難事件を解決している。剣崎比留子(浜辺美波)に誘われ夏合宿に参加する。初日の夜、近くのライブイベントから死者たちが押し寄せてくる。
「屍人荘の殺人」東京創元社
著者:今村 昌弘。『このミステリーがすごい!2018年版』第1位。『週刊文春』ミステリーベスト第1位。『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位
ゲット・アウト
監督・脚本:ジョーダン・ピール。クリス・ワシントン(ダニエル・カルーヤ)は恋人ローズ(アリソン・ウィリアムズ)にクリスが黒人であることを両親に伝えない理由を尋ねると、父母は人種を気にするような人じゃないと答えた。2人が車でニューヨークのローズの実家へ向かう途中、2人の乗る車は鹿に衝突した。 到着した2人は、ローズの両親であるディーンとミッシーから温かい歓迎を受ける。クリスはミッシーから、禁煙のために催眠療法を受けるよう、勧められる。
アス
監督・脚本:ジョーダン・ピール。ウィルソン家4人はサンタクルーズにあるビーチハウスを訪れビーチへ出かける。 夜、停電が発生、玄関先に4人の不審者が立っている。父ゲイブは不審者を追い払おうとするが、4人はそのまま屋内に押し入って来る。4人は自分たちとそっくりな人間で「私たちもアメリカ人だ」と主張した。
ブラック・クランズマン
監督:スパイク・リー。製作:スパイク・リー・ジョーダン・ピール。1972年、ロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)はコロラド・スプリングズでアフリカ系アメリカ人として初めて警察官に採用される。警察署内で人種差別を経験しながら、ロンは潜入捜査官として情報部に配属。白人至上主義団体クー・クラックス・クランの新聞広告に電話し、白人のレイシストを装って入会。同僚のユダヤ系警官フリップ・ジマーマン(アダム・ドライバー)が潜入担当、ロンは電話担当として、2人1役を演じる。
クロール -凶暴領域-
監督:アレクサンドル・アジャ。大学生で競泳選手のヘイリー・ケラーは、フロリダ大学の水泳大会から帰宅。その頃、巨大ハリケーンがフロリダ州に接近しているた。父デイブと連絡が取れず、安否が気になったヘイリーは、デイブの家へと向かう。家にはいなかったので、コーラル湖畔の家に向かう。その家の床下から音を聞く。地下室で、デイブは意識を失い、肩に傷を負っていた。すぐ脱出しようとするが、巨大なアリゲーターが襲ってきた。
「サスペリア(2018)」はクセモノだった
次は、2020年イギリスの映画です。戦争物。
かぶってるかも、第二次世界大戦ですか?
そうです。
ナチスが関係してますか?
そうです。
「オーヴァーロード(2018)」ってナチスが行ってた人体実験で、凶暴化した人間が襲いかかってくる。映画が違うのか。お化けが出てくるんですか? あぁ、全然わからない‥。
「ヘル・フィールド ナチスの戦城(2020)」。
ナチスとお化けが出てくるんですか?
イギリス映画なんですけど、フランスが舞台。占領場所でナチスも来る。イギリスも進駐して、お城のような屋敷に交代要員として行くんです。
5人ぐらいで、そこを拠点として抑えておかないといけない。行くと先の人たちがそそくさと出て行く。
「君らなんでこんな入り口のところで寝泊まりしてるんや?」って訊いても「後は頼んだ」って行ってしまう。
そこから、死霊に襲われる。自分たちも脱出しようとするけど、いつのまにか戻ってきてしまう。
気持ち悪い。
これは最後の種明かしが衝撃的。
「オーヴァーロード」も面白いんで、これもナチスとゾンビです。
当時就活で疲弊していた頃に観ましたね。
最後は、2018年です。
ダリオ・アルデンジェントじゃない方の「サスペリア(2018)」
あぁ。「君の名前で僕を呼んで(2017)」の監督だ(ルカ・グァダニーノ)。
あの「サスペリア」強烈でしたね。オリジナル版と全然違うじゃないかって。ラストで裸の女の人が踊り狂ってるのが忘れられなくて。
これって、ちょっと外したくないと思ったのは、「何の話なのかなぁ」って2週間くらい考えさせられた。
映画の鍵になるのが、謎を解く役割の精神科医のおじいさんがいますよね。
この人がお家を出るときに近所の人に挨拶をすると、「僕はこれからラカンの講演に行くんだ」と言うんです。それが印象に残るんですよ。
「ジャック・ラカンの講演」なんですね。ラカンは精神科のお医者さんですけど、構造主義の学者として有名です。
簡単に言えば、類型化をする。
例えば「騎士流離譚」という型が、位の高い人が身分を隠して旅をするという物語で、そんな神話類型に当てはめてジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」の話を作ったんです。
映画の中に出てくる「魔女集団」「ダンスの教室」「ニュースから流れる第三帝国のテロリスト集団」。この3つは、リーダー・幹部・メンバーっていう構成要素が似てるんです。メンバーは幹部への承認欲求だし、幹部はリーダーへの承認欲求のための行動になっている。
映画の最後で精神科医に、アーリア人種の証明書が届く。アーリア人種はナチスが目指す人種主義なんですけど、この証明書で迫害から脱出できる。(迫害者と被迫害者の二重人格になって捻れてしまう)
ラカンは「欲望」は自分本来から生まれるのではなくて他者から得たものだと説明している。ヒトは本能で行動できない生き物なので、知能で行動しますから。
はぁー、なるほど。
映画はずっと雨なんですよ。
これは一作目の「サスペリア」と全然違うところです。最後に雪になって、あの精神科医のところに証明書が届くと青空になる。自然に語らせるのが上手い。
どんどん深みにはまっていく作品です。
これは公開してた当時、オリジナル版もリバイバル上映してて、僕はそちらのほうに夢中でした。全く別物じゃないですか? 観返してみようかな?
モチーフは同じなんだけどもなんか違う。
舞踊集団のリーダーが言ったのは「舞踏は言葉」だと、自分たちはただ舞踏で語るんだって、そして舞踏のタイトルが「民族」なんです。
本来のテーマはもっと深いところにあるのかも。
そんなところまで観てるんですね
この「サスペリア」は人を選ぶかも。オススメは「the EYE 【アイ】」と「デリファイド)」。
知らなかったのが多いんで、また調べてみます。
今はコロナ禍で公共の場所でしゃべれない時代じゃないですか。
それが妙にマッチするのが「クワイエット・プレイス(2018)」。
タイトルから、まんまですね。ちょっと音を鳴らすだけで、何かに襲われるシチュエーション。
宇宙生物みたいなのが来るんですよ。人がほとんどいなくなった世界で、ある一家だけが生き延びるんです。
それと「ドント・ブリーズ(2016)」です。
おじいちゃんの家に盗みに入ったら、盲目のスーパー軍人だった。
これは両方とも音を立ててはいけないっていうシチュエーション。なんですけど、全く別の面白さがあって好きなんですよ。
どっちも今年、続編を公開しましたけど(「クワイエット・プレイス破られた沈黙(2021)」「ドント・ブリーズ2(2021)」)これもシチュエーションとしても素晴らしい。
この設定ができた時点で成功ですよね。
ありますよね、そういうの。
「サマー・オブ・84(2017)」って観ました?
日常的な話で主人公は小学生くらいかな。あることがきっかけで、隣に住んでる人がもしかしたら子供を誘拐して殺してる、ヤベー奴なんじゃないか?って。
真相を付き止めるべく行動する。オチが後味悪くて、結局その隣の人は殺人鬼でもなんでもなかったって見せかけて、実は張本人。
男の子を殺す直前で止めて、「お前が大人になった時に、人生をめちゃくちゃにしてやるからな」って言って立ち去るんですよ。
えぇーっ。
めちゃくちゃ後味が悪かったです。
子供の勘違いでした、みたいな感じかなと思って観てたら‥。
80年代が舞台なのが面白いです。
タイトルだけは爽やかですけど。
では、もうそろそろ帰りのバスがなくなるのでこの辺で。
そうね。じゃあ帰りはくれぐれも気をつけてね。
オーヴァーロード
監督:ジュリアス・エイヴァリー。ノルマンディー上陸作戦直後、ボイスジョヴァン・アデポら第101空挺師団は同地の敵地へと乗り込んだ。ナチスドイツと激戦となるだけでなく、そこにナチスが人体実験で生み出した怪物がいた。
ヘル・フィールド ナチスの戦城
監督:エリック・ブレス。第二次世界大戦中のフランス。米軍兵士5人が制圧していた城に派遣される。そこにはナチスよりも恐ろしいものが待ち受けていた。
サスペリア
監督:ルカ・グァダニーノ。1977年、米ソ冷戦中のベルリンにアメリカからやってきた少女スージー(ダコタ・ジョンソン)は、モダンダンスの舞踊団へ入学。精神科医のクレンペラー(ティルダ・スウィントン)は、患者のパトリシアから舞踊団で悪魔崇拝の儀式が行われていると聞き、その後パトリシアから連絡が取れなくなり、調査を始める。テレビでは、ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件を報道していた。ティルダ・スウィントンがクレンペラー医師、マダム・ブラン、ヘレナ・マルコスの男女3役に扮している。
「千の顔をもつ英雄」早川書房
ジョーゼフ・キャンベル著。ハヤカワ・ノンフィクション文庫。キャンベルが各地の神話に登場するヒーローの物語の構造を示した。英雄の旅は(1)主人公は別の非日常世界への旅に出、(2)イニシエーションを経て、(3)元の世界に帰還する、という共通の構造を持っている。Calling(天命) 、Commitment(旅の始まり)、Threshold(境界線)、Guardians(メンター)、Demon(悪魔)、Transformation(変容)、Complete the task(課題完了)、Return home(故郷へ帰る)。 ジョージ・ルーカスがキャンベルの講義を受講し、多大な影響を受けたことで有名。
クワイエット・プレイス
監督:ジョン・クラシンスキー。2020年、宇宙から来た怪物が世界中で人類を餌食にしていた。怪物は盲目であり、アボット家は手話による会話で生き延びていた。
ドント・ブリーズ
監督:フェデ・アルバレス。デトロイトのゴーストタウン化が進む街で、不良少女ロッキー(ジェーン・レヴィ)はボーイフレンドのマネー(ダニエル・ゾヴァット)と友人のアレックス(ディラン・ミネット)の3人で視覚障害者宅へ強盗に入る。しかし、住人は元・軍人であり、優れた聴覚を持つ人物だった。
クワイエット・プレイス 破られた沈黙
監督:ジョン・クラシンスキー。前作の後、アボット家は外の世界に救いを求めることにした。ところが、そこには怪物以外の脅威が存在していた。
ドント・ブリーズ2
監督:ロド・サヤゲス。前作から8年、盲目の退役軍人ノーマン・ノードストローム(スティーヴン・ラング)は11歳のフェニックス(マデリン・グレイス)と飼い犬のシャドーと暮らしている。ノーマンはフェニックスに彼女の母親は一家の古い家での火事で死んだと言い聞かせていた。旧友ヘルナンデス(ステファニー・アルシラ)は、ノーマンとフェニックスの気分転換に街に連れ出す。そこでは、何者かがフェニックスを連れ去ろうと狙っていた。
サマー・オブ・84
監督:フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル。1984年夏、オレゴンの田舎町イプスウィッチ。15歳の少年デイビーは、向かいに住む警察官マッキーの家に新聞を配達した時に、地下室の奥に施錠された部屋を見つける。その夜、デイビーはマッキーの家の中にいる男の子を見かける。 デイビーは友達と捜査を始め、マッキーがホームセンターでガーデニング用品を大量に購入していることを知る。
(対話月日:2021年10月8日)