コロナの時にお家で楽しむ

第12夜「夢の映画を解き明かそう」B面

(A面のつづき)

「バニラ・スカイ」 さあ、目を覚ましなさい。

監督・脚本:キャメロン・クロウ
原案:アレハンドロ・アメナーバル、マテオ・ヒル

〈Story〉
マスクをしている男・デヴィッドと、精神分析医マッケイブが取り調べ室で対話する。
大手出版社を引き継いだデヴィッドは、誕生日パーティーで親友・ブライアンの恋人ソフィアに一目惚れする。
デヴィッドの女友達ジュリーは、嫉妬がつのりデヴィッドを道連れに自動車事故を起こす。ジュリーは死亡、デヴィッドは3週間の昏睡から目覚めると、彼の顔は、事故により無惨な顔立ちになっていた。
この事故を契機に、デヴィッドの会社の重役たちは会社乗っ取りの策略をめぐらす。デヴィッドは顔のせいで自棄になり、ソフィアやブライアンと喧嘩別れをする。
翌朝、泥酔し路上に倒れ込んでいたデヴィッドは、ソフィアに助け起こされる。
ソフィアの支えでデヴィッドは立ち直り、顔の傷も最新技術で元通りとなり、ブライアンとも関係を修復する。
やがてデヴィッドは悪夢に悩まされるようになる。隣に寝ていたソフィアが、死んだはずのジュリーと入れ替わって見えるのだ。
混乱したデヴィッドは、ジュリーを殺したつもりでソフィア殺害し逮捕されてしまう。。。

バニラ・スカイ(2001)」はモチーフとして夢が出てきます。ニューヨークが舞台です。カメラがトム・クルーズが住んでる部屋に向かって、セントラルパークの上を飛んでいく。当時はすごい撮影だったんですけど。

ドローンが無い時代ですよね。

デイヴィッド(トム・クルーズ)が寝てるんです。テレビにはオードリー・ヘプバーンが出ている。これにも意味があって、そこら辺が「オープン・ユア・アイズ(1997)」とは違うんですけども。
そして最初のセリフが「オープン・ユア・アイズ」。

「起きろ」

その声で、デイヴィッドが目覚めます。
外へ出ると、ニューヨークの街に人っ子ひとりいない。その光景もすごい。

確かにそうですよね。

誰もいない街。と思ったら、また目が覚める。

これが難しいところですよね。

隣に恋人のジュリー(キャメロン・ディアス)が寝ています。デイヴィッドは、友達と会ったりする映像に、セリフが重なってくるんです。
精神科医とデイヴィッドが話をしているセリフが流れてくる。

それは全部夢ってことですか?

デイヴィッドが、
「実はこんな夢を見たんです」って。デイヴィッドはマスク(仮面)をしてるんです。

不気味ですよね。

デイヴィッドは10年前に両親を亡くして、後継者として雑誌社を継いでる。誕生日パーティーがあって、そこへ友達がソフィア(ペネロペ・クルス)を連れてくるんです。出会ったばかりだけどデイヴィッドとソフィアが一目ぼれ。彼女はジュリーとは対照的で、純情派。ジュリーが呼ばれてないのにパーティーに来ている。
デイヴィッドはジュリーと別れたかった。ソフィアに、
「ストーカーが向こうから見てるんで、自分と仲良くしてるふりをして」って言って、パーティから抜け出す。
デイヴィッドが意外と絵が上手なんですね。ソフィアとお互いの似顔絵を描いて、見せあったりして、親密になっていく。
ソフィアのアパートから出てきたら、ジュリーが待ち構えてるんですよ。
「ちょっと車に乗りなさいよ」って、デイヴィッドを横に乗せて走り出す。
実はね、ジュリーは、「バニラ・スカイ」では、カソリックです。一度関係を持つと別れるのは、信仰に反する、
「自分は一緒にいるのが理想だ」って言うジュリーは心中しようと考えている。車のスピードが上がっていって、橋から転落して、下の壁に激突する。
そこでジュリーは亡くなってしまう。デイヴィッドは奇跡的に死ななかった。でも、顔が複雑骨折で、ぐちゃぐちゃになった。お金をかけて医師を集めるんだけど、これ以上今の技術では治せない。回復はするんだけども、顔が崩れているので、ラテックスマスクをする。

ジュリーとのやりとりとか、事件は現実。

現実ですよね。
そこから、顔が綺麗かどうかが、サインにもなります。

初めて観たら、この辺で錯綜してますよね。

最初は観ていても分かんなかったんですよね。

話を聞いても悪夢を見てるみたいな。。。

顔は治らないけど、社長として復活するんです。
ソフィアは友達と仲良くなっていて、自分にはもう振り向いてくれない。デイヴィッドは、何とか自分に向かせようとする。
ソフィアは友達と逃げていく。デイヴィッドは呆然として、倒れてしまうんですよ。
しばらくすると、
「オープン・ユア・アイズ」って声がするんですね。
目覚めると、ソフィアが来ている。
「私の気持ちは、変わってない。二人でやりなおしましょう。」
顔は最新技術で元に戻る。
夜中にデイヴィッドが目が覚める。隣の部屋の鏡の明かりを入れると、顔がぐちゃぐちゃに。。。
それが夢で、また目覚める、明かりをつけたら、なんともなかった、ベッドに戻ってくる。ソフィアが振り向いたら、ジュリーだった。。。物語のモードがここで表現されています。

愛憎劇も加わってきて。

「ソフィアをどこにやったんだ」って、ジュリーを問い詰めて、
「君は死んでなかったのか」って、逆上して警察を呼ぶと、逆に逮捕されちゃうんです。
そこから、精神科医との対話に戻ります。
「ソフィアになんで暴力を振るうんだ?」って問われる。
デイヴィッドにはジュリーにしか見えないんですよ。

ジュリーに見える時には、ソフィアの冷蔵庫に貼られている写真も全部ジュリーに変わってるんですよ。
「えっ、どっちが本物?」ってなる。

そこで混乱していく。ソフィアを返して欲しいから、ジュリーに暴力を振るっちゃうと、それがソフィアだったり。
精神科医は、
「君の罪悪感が認識を変えるんじゃないか」。
物語の途中でね、テレビのニュース映像が流れるんです。それが、冷凍保存の話なんです。冷凍保存に成功したっていうニュース映像が数回流れる。

精神科医も大きな存在なんです。

デイヴィッドが本当に信頼してる存在ですね。

恋人を信じれない。友達も離れていく中で、理解してくれる人です。

どうして、ジュリーとソフィアの見分けがつかないのか?。
精神科医の存在はなんなのか?
冷凍保存とは?
その謎が最後に明かされる作品です。

Eくん

年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。

キネ娘さん

卒業論文のために映画の観客について研究したことも。ハートフルな作品からホラーまで守備範囲が広い。グレーテスト・シネマ・ウーマンである。

夕暮係

小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で、劇場デビュー。照明が消え、気分が悪くなり退場。初鑑賞は約3分。忘却名人の昔人。

バニラ・スカイ
バニラ・スカイ

監督・脚本:キャメロン・クロウ。殺人容疑で逮捕された仮面の男・デイヴィッド(トム・クルーズ)と、精神分析医マッケイブ(カート・ラッセル)の取り調べ室での会話を軸に、ストーリーは進む。 出版界の王様デイヴィッド シニアが死亡し、父の経営する大手出版社を引き継いだデイヴィッドは、自分の誕生日パーティーでソフィア(ペネロペ・クルス)に一目惚れしてしまう。 それに気付いたジュリー(キャメロン・ディアス)は、嫉妬のあまり彼と自動車事故で無理心中を図ろうとする。 ジュリーは死亡し、デイヴィッドも重体で昏睡から目覚めると、彼の顔は見るも無惨なものになっていた。

トム・クルーズ
ペネロペ・クルス

「オープン・ユア・アイズ」 こちらがオリジナル。

ペネロペ・クルス「オープン・ユア・アイズ(1999)」にも出ています。
「バニラ・スカイ」では役者を目指す女性で、「オープン・ユア・アイズ」では、パントマイマーです。公園でパフォーマンスをしてお金もらったりしています。
「オープン・ユア・アイズ」の中のニュース映像で
「ウォルト・ディズニーのように冷凍保存ができる」って言うんです。

そういう都市伝説がありますね。

ホントなんですか?

ウォルト・ディズニーはディズニー・ランドで冷凍保存されている。都市伝説やね。

一番大きな違いはラストのセリフがちょっと違うんです。

「バニラ・スカイ」は、トム・クルーズの顔が映るたびに、辛くなりましたね。ストーリーの終わり方が大きく違うんですか?

ストーリーは同じなんだけども、セリフで印象が変わります。最後にデイヴィッドに投げるセリフが違うんですよ。

デイヴィッドの末路がどうなるのかがすごい気になる。言っちゃ駄目ですよ。

「オープン・ユア・アイズ」というセリフで終わるのが、物語が繰り返すようです。

オープン・ユア・アイズ
オープン・ユア・アイズ

監督・脚本:アレハンドロ・アメナバル。独身のセサルは、誕生日パーティーでソフィアに一目ぼれする。 セサルの恋人ヌリアは嫉妬から、セサルを同乗した車を崖から転落させ心中を図る。 セサルは助かるも、顔にひどい傷を負い、ソフィアにも見放される。 ある夜、目が覚めると自分の顔も、ソフィアとの仲も元通りになっていた。 彼は悪夢を見るようになり、夢と現実の区別がつかなくなってゆく。

「マリグナント 狂暴な悪夢」 ジェームズ・ワンが魅せる恐怖。

キネ娘さん、何かわかりやすいのない?

わかりやすそうなのですか? そうですね。

マリグナント 狂暴な悪夢(2021)」は面白いらしいね。

ジェームズ・ワンのホラー「死霊館シリーズ(2013〜)」が好きで、ずっと観ています。
家族がテーマの作品が多いんですよ。
精神病棟みたいな所で、何かが襲うところから始まって、正体は小さい子なんやろなって分かるんですけど、姿は見えないんですよね。
先生がバーッて行くと、廊下でバタバタって死んでいくんですよ。
「やばいよあの部屋」みたいな感じ。この子が何かを持ってる危険人物というところが始まりなんです。
そこから、別の女性(マディソン)が主人公で、妊娠をしてるんですけど、夫からDVをされて、流産しちゃうんですよね。
でもその流産は初めてじゃない。何か悩んでいて入院しているんです。
ある日、旦那さんが家の中で変死体で見つかる。そこから近辺で殺人事件がいろいろ起こり始めるんですよ。
その女性の周りで起こるんで、怪しまれるんですよね。
その女性の夢に、殺人現場が出てくるんですよ。殺害されてる隣で寝ているみたいな幻覚を見るようになって、殺害現場を夢で見てる。でも、現場にはその女の人はいない。でも自分だけがその状況を知っている。
犯人は誰やろっていう話なんです。
ひとつヒントと言うと、その家族っていうのがテーマなんですよね。

ふーん、家族がね。

というので解かっていくっていう。

演出はミステリー?

そうですね、ミステリーっぽいです。ホラーではないなと思ったんです。私あんまり予告を見ずに行ったんですけど、ホラーよりサスペンスよりかなっていう感じです。

ジャーロ映画みたいです。ダリオ・アルジェントっていうイタリアの映画監督が手がけた映画ではそういうことをよくやる。

ダリオ・アルジェントもミステリーな雰囲気もあるけどね。

イタリアの20世紀の映画のジャンルで、スリラーものって言うかな、殺害シーンとかがある「サスペリア(1977)」っていう、ちょっと50年ぐらい前の古い作品やけど。

ジャンルとしてですね。

「ラストナイト・イン・ソーホー(2021)」もそんな感じ。

そうなんですね。

「マリグナント」はちょっと楽しみ。「死霊館」のシリーズ最新作も、そろそろ観れそうだからね。ジェームズ・ワンが好きやね。

ソウ(2003)」とかも。「インシディアス(2010)」は、なかなか刺さらなかったですけど、系統は一緒かもしれないですね。

アクアマン(2018)」とか「ワイルド・スピード SKY MISSION(2015)」は観たけど、ジェームズ・ワンのホラーは全然知らない。「ソウ」の1作目ぐらいしか観たことがない。

1作目が一番面白いかも。

そうです。だんだんグロさが際立ってくるみたいな。

スパイラル:ソウ オールリセット(2021)」は観ましたよ、最新作。リブートというか続編やけど、面白かった。

「死霊館」は実話なんでしょう?

らしいですね。本当に悪魔祓いをしてたみたいな。

本当にその犯人が悪魔のせいで人を殺したっていうので、裁判が開かれたんでしょう。

新聞の記事もよく出てきて、エンドロールで本当の写真が出てくる。

アナベル人形とかも有名だし。

そうですね。

本当の人形の写真も見たことありますよ。不気味でした。

でも意外と本当のアナベルはかわいいぬいぐるみみたいな。
それが逆に怖いんです。映画のアナベルは明らかに怖い感じですけど。

マリグナント 狂暴な悪夢

監督:ジェームズ・ワン。妊娠をしているマディソン・ミッチェル(アナベル・ウォーリス)は夫のデレクからDV被害に遭っている。 夜中にデレクは何者かに襲われて殺される。 死体を見つけたマディソンも昏倒し翌日保護され入院するが流産していた。 退院後、悪夢に悩まされるようになる。 フローレンス医師という女性が、不気味な男に襲われている夢。 その悪夢のとおりに殺害されたとニュースで聞く。 また、ベッドで寝ているとナイフで殺害される男性の夢を見る。 マディソンは、夢のなかでその人物が「ガブリエル」と呼ばれていたことを覚えていた。

「死霊館」シリーズ

有名な超常現象研究家のウォーレン夫妻が多くの超常現象を調査・解明してきたことをジェームズ・ワンが映像化したホラー作品。死霊館シリーズとして、「死霊館 (2013) 」「死霊館 エンフィールド事件 (2016) 」「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。 (2021)」。アナベルシリーズ として、「アナベル 死霊館の人形 (2014) 」「アナベル 死霊人形の誕生 (2017) 」「アナベル 死霊博物館 (2019)」スピンオフ作品に「死霊館のシスター (2018) 」「ラ・ヨローナ〜泣く女〜 (2019)」がある。

ジャーロ映画

ジャーロ(giallo)はイタリア語で黄色や臆病という意味。犯罪小説を掲載していたパルプ・マガジン『ジャッロ・モンダドリ』が黄色い表紙だったことから、ホラーもののスリラー映画を「ジャーロ映画」と呼ぶようになった。

サスペリア

監督・脚本:ダリオ・アルジェント。ジャーロ作品の代表作。ドイツの名門ダンス学校に入学した女子学生が次々と起きる凄惨な殺人事件に巻き込まれる。

ラストナイト・イン・ソーホー

監督・脚本:エドガー・ライト。エロイーズは、憧れの歌手サンディの体で1966年のロンドンにタイムスリップする。 その後、1960年代のロンドンが見た目とは違うことに気付き始め、過去と現在がバラバラになり、怪しく恐ろしい結果を招く。

「ソウ」シリーズ

監督:ジェームズ・ワン。ジグソウと呼ばれる男が犠牲者たちに苦痛を与えて生きる力を試すスリラー作品シリーズ。「ソウ (2004年)」「ソウ2 (2005年)」「 ソウ3 (2006年) 」「ソウ4 (2007年)」「ソウ5 (2008年)」「ソウ6 (2009年) 」「ソウ ザ・ファイナル 3D (2010年) 」「ジグソウ:ソウ・レガシー (2017年)」「スパイラル:ソウ オールリセット (2021年)」。

「インシディアス」シリーズ

監督:ジェームズ・ワン。人間に取りつこうとする悪魔や霊たちと戦う霊能者を描くホラー作品シリーズ。「インシディアス (2010)」「インシディアス 第2章 (2013)」「インシディアス 序章 (2015)」「インシディアス 最後の鍵 (2018)」

「シンクロニック」 夢のようにトリップする。

Eさんのおすすめはありますか?

最近見た作品で、「シンクロニック(2019)」っていうめちゃくちゃマニアックな映画。「アベンジャーズ(2012〜)」シリーズのファルコンを演じたアンソニー・マッキーが出ています。
端的に言うと、ちょっと違法チックなドラッグが流行っていて、それを使ってトリップすると、過去の世界に行っちゃう。
どういう仕組みかよく分かんないけど、薬を飲んだ場所によって、何年前のどこに行けるか変わる。
それを親友の娘さんが使って、過去の世界に取り残されて戻って来れなくなっちゃう。アンソニー・マッキーは、なんとかその薬を手に入れて、娘を探しに行く話。
薬でタイムスリップするのが面白いなと思って。部屋の中でも場所によって行ける時代が全然違って、ここで薬を飲んだら、中世の世界に行って、数m離れたところで薬を飲んだら、紀元前ぐらい。雪原の大吹雪の中で原始人と出会ったり、そのアイディアがユニーク。低予算な感じなんやけど、面白かった。

そのトリップする場所は自分で決めれるんですか?

親友の娘さんがいなくなっちゃうけど、薬を飲んだ場所に行って、自分がやる。

場所と繋がってる?

そう。その実際に薬を飲んだ場所の何年か前にタイムスリップやったかな、場所は変わってなかったと思う。

なるほど。

一応ルールはあるんですか?

アンソニー・マッキーが何回も飲んで自分で探すんですよ。ここやったら何年前に行くみたいな。

空間が物差しみたい。

日本で一応劇場公開されているんです。

最近ですか?

最近やったかな。日本で多分3〜4館ぐらいの映画館しか上映してなかったと思う。未体験の映画ゾーンみたいなので、世界各国のマイナーな映画を一気に上映しますよ、みたいな。
大阪はシネリーブル梅田で。東京でも1館ぐらいやから、全国規模の上映とかしてないくらいマイナーな作品。

よく見つけましたね。

たまたま映画館でかかってて、暇つぶしに行ったら、上映をしていて、面白いなって。普通の映画館だったら、自分で選んでるのしか観ないから。

そうですよね。

そういう名画座とかも面白い。

目的なく行くのって楽しいですね。

シンクロニック

監督:ジャスティン・ベンソン、アーロン・ムーアヘッド。救急隊員のデニス(ジェイミー・ドーナン)とスティーヴ(アンソニー・マッキー)は変死体や奇妙な症状の患者に遭遇し、それにシンクロニックという麻薬が関わっていることを知る。 デニスの娘ブリアンナがシンクロニックの服用後に失踪する。 一方、スティーヴは末期の脳腫瘍と診断される。 スティーヴは、シンクロニックの開発者から、シンクロニックが過去へのタイムトラベルを可能にする薬であることを知る。

未体験ゾーンの映画たち

上映劇場は東京のヒューマントラストシネマ渋谷と、大阪のシネ・リーブル梅田。「シンクロニック」は「未体験ゾーンの映画たち2021」での上映。

「箪笥」 夢とうつつのあわいに。

キネ娘さんの「箪笥(2003)」

「箪笥」は、韓国のホラー映画です。

これってさ、すごい気になってるんやけど。

これ、だいぶん前ですよね。

そうですね。これは「シャッター・アイランド(2010)」とか、ああいう感じ。
姉妹がいて、お父さんとお母さんの家族ですけど、お母さんが継母なんですよ。その姉妹が病院から帰ってくるので、
「じゃあ4人で生活を始めましょうね」って、湖のほとりの家に住み始めるんです。
継母が怖い感じに思われている。
その家も不気味で、クローゼットに全部同じ服が入っていたり、冷蔵庫から腐った魚が見つかったりする。
姉妹の妹が箪笥をすごく怖がっていて、継母が怪しく描写されるんですよね。
お姉ちゃんは、お母さんが嫌いで、お父さんに言うと、
「そんなこと言うな、お前がしっかりするんだ」って言われて、
「なんで分かってくれないの?」みたいになるんですけど、継母の方にも怖い現象が起こり始めるんですよ。

継母の周りに。

何かお化けみたいなのが見えたりとか。

そういう描写がある。

そうなんです。そこら辺がホラーチックで、台所の下の方にお化けがいたり。食事会をするんですけど、他の夫婦が来て、奥さんがお化けを見てショックで倒れちゃって、この家がおかしいのが伝わってくるんです。
話が進んでいくと、継母が麻袋を引きずっていて、血とか出るんですよね。
妹がいなくなって、「えっ」って感じじゃないですか。
お姉さんが継母に
「どうしたん? 何をしたんや、あんたは?」と言って、もみくちゃになって、格闘している間に倒れて、頭を打っちゃう。
目が覚めたら病院にいる。考えてみると最初のシーンも病院なんですよね。

タイトルは気になりますよね。

そうですね。

ポスターもすごい印象的。グロテスクなシーンもある?

グロテスクというよりは怖いって感じる。麻袋のシーンが怖くて、継母が棒でたたいているんですよね。ぞっとする感じが多いんですけど、日本のホラーもそうですけど、韓国のホラーって、びっくりさせるよりも、じわじわとした怖さでしたね。

いい作品を知ってるじゃん。

見逃してるなぁ。

印象に残っている作品。何で「箪笥」っていうタイトルなのかは、分かります。
妹がなんで箪笥を怖がってるかが全部繋がってきます。

タイトルにつけるぐらいやもんね。

そうですね。お父さんも「箪笥には近づくな」と言うんです。

箪笥

監督・脚本:キム・ジウン。スミとスヨンの姉妹は、父が再婚したと聞き、父に招かれてやって来た。 若い継母のウンジュ(ヨム・ジョンア)は冷たく感じた。 姉のスミ(イム・スジョン)はウンジュを嫌い、病弱の妹のスヨン(ムン・グニョン)はウンジュを怖がるようになった。 一家が暮らし始めた日から、奇怪な現象が起こるようになる。 悪夢、母の亡霊とウンジュが見る不気味な影。 多発する奇怪な現象は継母と姉妹の間の亀裂を深めていく。 そして緊張の糸が切れ、ある事件が起きる。

シャッター アイランド

監督:マーティン・スコセッシ、脚本:レータ・カログリディス、原作:デニス・ルヘイン。1954年、連邦保安官テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)とチャック・オール(マーク・ラファロ)ら捜査部隊は、ボストン港の孤島「シャッターアイランド」にあるアッシュクリフ精神病院を訪れる。 この島でレイチェル・ソランドという女性が、「4の法則。67番目は誰?」という謎のメッセージを残して行方不明となった。 収容されている精神異常犯罪者たちの取り調べを進める中、病院で行われていたマインドコントロールが明らかとなる。

「アイズ ワイド シャット」 キューブリックの妄想劇。

アイズ ワイド シャット(1999)」キューブリックの。これも夢が関係するの?

夢なんですかね?

夕暮さんもご覧になっていると思うんで、教えていただきたいんですけど。

妄想かな。

これもトム・クルーズですよね。

こういう役が多いんですかね。ストーリーはご存知ですか?

あんまり知らない。

お医者さんなんですよね、トム・クルーズが。奥さんが、ニコール・キッドマンで、娘が1人いる家族構成。夫婦になってから、恋愛感情がだんだん薄れているのが最初。
お出かけするのに、身支度を整えるシーンで、お互いを見ずに
「いいじゃん、いいじゃん」って言う、そんな夫婦なんです。
おめかしをしてパーティに行くんですよね。そのパーティーで、それぞれの友達とバラバラで楽しんでいる。
トム・クルーズは、かっこいいし、お医者さんで、ちやほやされて、逆ナンをされる。ニコール・キッドマンも、年上のダンディな人とダンスを踊る。
帰ってきたときに、奥さんが
「あなた言い寄られてたじゃん」って言い出して、
「私もそういう願望あるわ」みたいな話をしだすんですよね。
「昔、海軍の人と出会って、そういう妄想したことがあるわ」みたいな話をするんです。

不倫とか、浮気とか。

そんな話をされて、トム・クルーズが気にかけちゃうんですよ。その妄想をしちゃう。

奥さんと男性と。

想像をしちゃうようになってから、トム・クルーズは女の人に言い寄られるようなキャラクターなんで、娼婦みたいな人と会ったりとか、はっちゃけ出すんですよね。夜の街ぶらぶらして。
あるときに友達のジャズのピアニストが、
「今日、この後パーティーやねん」って、
「そこに入るにはパスワードがいる」って言うんですよ。ちょうど電話でかかってきて
「今日のパスワードはこれですね」って言うのを聞いている。
トム・クルーズが興味を持って、
「なんのパーティー?」って訊くと、
「目隠ししてピアノを弾く演奏者として呼ばれてる」
「僕も行きたい」
「限られた人しか入れないパーティーだから、だめ」
「僕はそのパスワードを知っているから、僕も行かせてくれ」って言う。
「別々で入れば、君がパスワードを漏らしたっていうことはばれないでしょ」って言いくるめて行くんですよ。
パーティーに仮装が必要だったんで、夜中に仮装屋さんの店に行って、マスクをもらって行く。
パーティーに無事入ることができて、そこには宗教みたいな集団がいるパーティーだったんですよね。
行こうとしたら、
「あなたは帰った方がいい」って女の人に言われるんです。自分のことを知ってるぽい感じですけど、
「いや大丈夫、大丈夫」って行くと、部外者だってばれてしまうんですよ。
「パスワードを言ってください」
「これです」
「じゃあ、このハウスのパスワードは?」って、分からないので、追い詰められる。
「帰った方がいいよ」って言ってくれた女の人が身代わりになってくれて、
「あなたは帰って」って。トム・クルーズは無事に帰れて、奥さんにはそのことを内緒にする。
後日、新聞を見たら、ドラッグ中毒で女性が亡くなるという記事が載ってて、もしかしてと思って知り合いのところに行ったら、知り合いもそのパーティーにいたと言われて、トム・クルーズが問い詰めるんです。
「ドラッグで死んだっていう記事の女性はもしかしてあの人じゃないの?」って、徐々に解かっていく。

それもトム・クルーズの妄想みたいな?

これは「夢オチ」っていう態(てい)になってますよね。

そうなの?

初めて観たときは、これが夢だと思わなくて。後から「あれ夢オチだよね」という話を聞いて、「うん。そうやったっけ」って思った記憶はあるんですよね。
この映画はあんまりキューブリックっぽくないなと思う。

ふーん。そうなんか。

左右対称とか、好きじゃないですか。これはあんまり無かったかな。

マスカレード・パーティーのシーンぐらいかな。

これってメッセージが難しくないですか? 結局何が言いたかったんやろってなる映画ではあるんですけど。

2001年宇宙の旅(1968)」と同じように難しそうだ。

スッゴイなんかゆっくりストーリーが進んでいく。静かな日々があるみたいな感じはキューブリックな感じはするんです。緊迫した雰囲気でキーンっていうピアノの高い音が鳴るみたいなのは、すごい濃いんですけど。

バリー・リンドン(1975)」の世界かな。時代は全然違うけど。
トム・クルーズがマスカレードパーティーのためにいろいろ準備をしたりするのが印象的。

主人公なのに何を考えてるか読めないみたいなところがちょっとある。

話を聞いていたけど全然ピンとこない。

ちょっと難しかったですね。

でもそういう流れ。

一応、妄想というか、そういうテーマ。

夢っぽいのは、トム・クルーズが、どんどん流されていってる感じが。

確かに。ホイホイとついて行ってしまったり、パーティーに行ってみたいとか、破天荒さみたいなのがすごい出てくるんですよ。

何かだんだん変なことで巻き込まれてるような感じかな。
アンダー・ザ・シルバーレイク(2018)」みたいな感じ、ああいう幻想的なちょっと一風変わった夢のような世界をイメージした。

幻想っぽくもないんだけどね。現実感はあるのになんかどんどん流されてしまう。

ちょっとイメージがつきにくい。

こんなことが起きるか、みたいな。

でも最後は奥さんのところに帰るんですよね。

大人の危険な物語の括りかな。

もう時間ですけど、あっという間でしたね。

でも「バニラ・スカイ」は本当に観てほしい。

結末が言えないのが。

そうですね。もどかしいけど、事前の説明が結構要りますもんね。

夢と現実みたいなストーリーって、それぞれのルールがあって、登場人物の役割があって、それに使われてる道具というかね、前提の話からですね。

卒業論文で書いたんですよね「夢と映画の関係」。
時間がなさすぎて途中で終わった。
その一つの章が「夢」だったんです。フランスの映画理論家のクリスチャン・メッツの本を取り上げました。その繋がりで、ノーランの本も読んでたんで、面白そうなテーマやなって、今回は楽しみにしていました。
ありがとうございます。

ありがとうございます。

大丈夫ですか時間。

はい大丈夫です。

アイズ ワイド シャット

監督:スタンリー・キューブリック。ニューヨークに住むビルと妻・アリスは、いささかマンネリ気味。 ある日、ビルの患者ジーグラーのクリスマス・パーティーに招かれる。 ビルはそのパーティーで、旧友ニックと再会する。 ニックはビレッジのカフェにいるから遊びに来いと言う。 ビルが立ち寄るとニックはピアノを弾いている。 ニックは富裕層の秘密のパーティーにときどき出かけるという。 ビルは「一緒に行きたい」と食いつくが、ニックは断る。 ビルは、パーティーをあきらめられず、貸衣装店からタキシードと仮面、黒のマントを借りて出かける。 ニックから盗み聞いた「フィデリオ」というパスワードで、屋敷の中へ通される。 女性のひとりがビルに「あなたの場所じゃないわ。すぐに帰りなさい。あなたが危険なのよ」と警告する。 ビルはボディガードに呼び出され、連れていかれ、 ハウスのパスワードを答えられないビルは、仮面を外すよう指示され正体が露見してしまう。

アイズ・ワイド・シャットは夢オチか?

原作は1926年に発表されたアルトゥル・シュニッツラーの中編小説「夢小説」。ウィーンを舞台に、夢と現実をさまようような一晩の出来事が描かれているが、「アイズ・ワイド・シャット」は、夢物語という訳ではなく、夫婦の関係に重心が移っている。タイトルの「目は大きく閉じられた」は夫を見る妻の眼だと解釈できるかも。

2001年宇宙の旅

監督:スタンリー・キューブリック。原作: アーサー・C・クラーク。人類黎明期から異星人の人工物「モノリス」の存在、木製探査に至るまでを哲学的な表現で描く。探査船に搭載されている人工知能「HALL」も有名。因みに、Amazon「アレクサ」に好きな映画は?」と訊くと、この作品を答える。

バリー・リンドン

監督:スタンリー・キューブリック。原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー。18世紀に生まれたバリーが故郷を離れ、流されるままに従軍し、イギリスへ、またオランダへ。レディー・リンドンと結婚してから放蕩三昧の日々を送る。

アンダー・ザ・シルバーレイク

監督・脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル。サムが恋する隣人のサラが失踪する。サムは、ロサンゼルスを探し回り、陰謀に巻き込まれる。

クリスチャン・メッツ

1931年-1993年、フランス。 高等師範学校卒業後、教員時代を経て、国立科学研究センターの研究員となり、映画記号学の研究に着手。 1964年、「映画――言語体系か言語活動か?」という記事を国立科学研究センターの機関誌『コミュニカシオン』に発表する。

(対話月日:2022年1月26日)