(A面のつづき)
「1917 命をかけた伝令」 全編ワンカット
監督:サム・メンデス
脚本 サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
〈Story〉
1917年4月6日、第一次世界大戦中、西部戦線にいたドイツ軍の後退は戦略的に、連合国軍をヒンデンブルク線にまで誘引しようとするものだった。この事実を把握したエリンモア将軍は2人の兵士、トムとウィルを呼び出し、第2大隊に作戦中止の情報の伝令を命じた。
第2大隊には1,600名もの将兵が所属し、前進すると壊滅的な被害を受けてしまうこととなる。
「1917 命をかけた伝令(2019)」は、全編ワンカットなんです。カメラの切り替わりがない。もちろん編集で処理していて本当にずっとカメラ撮りっぱなしだったわけじゃないんやけど。
長回しをしてるよね。
切り替わる場面がないってことですか?
そう。一瞬だけ主人公が気絶するシーンで画面が暗くなるシーンはあったんやけど、それ以外は全部動き回るし。
地下で爆破するところね。
ワンカットの映画って、ヒッチコックもね、「ロープ(1948)」っていう映画で、1本ワンカットっていうのを作ったんだけども、それもうまく編集をしていました。
ずっとカメラが回ってるわけじゃないんですか?
背中にアップして、グって寄ったときに上手くつなぐ。そこで撮影は、休めるんです。でも観ていると全編ワンカット。
すごいですね。
全編ワンカットで撮る意味あんのかな?って。確かにすごいなって思うけど、観てたらなんか。
僕は、「すごい、すごい」と思いながら見てたけどね。ずっと緊張が持続する。
息継ぎできない感じ。
そういう題材なんですかね。
そうそう、第一次大戦の戦場。
伝令を届けに行かないといけないんだけど、危険な地域を通っていかないといけない。
緊張感が出るってことですね。
ワンカットで撮ってるので、位置関係がよくわかる。
確かにそれはあるな。
なるほど。臨場感がありそうですね。
Eくん
年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。
キネ娘さん
卒業論文のために映画の観客について研究したことも。ハートフルな作品からホラーまで守備範囲が広い。グレーテスト・シネマ・ウーマンである。
夕暮係
小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で、劇場デビュー。照明が消え、気分が悪くなり退場。初鑑賞は約3分。忘却名人の昔人。
ロープ
監督:アルフレッド・ヒッチコック、原作:パトリック・ハミルトン。摩天楼を見渡せるアパートの一室。 フィリップとブラントンは、自分たちが秀れていることを試すためだけに、ニーチェの理論を実践し殺人を犯す。 2人はスリルを味わうために被害者の父、恋人、大学教授らを招いてパーティを催す。
錯綜の果てに気が狂(ふ)れんばかりの「ドグラ・マグラ」
監督:松本俊夫
原作:夢野久作
〈Story〉
大正15年ごろ、九州帝国大学医学部精神病科の独房に閉じ込められた、記憶喪失の青年は過去に発生した殺人事件と何らかの関わりを有している。胎内で胎児が育つ10か月のうちに数十億年の進化の夢を見るという論文「胎児の夢」、脳髄は物を考える処に非ずと主張する「脳髄論」、ある精神病者が書いた「ドグラ・マグラ」、「地獄外道祭文」などで、謎が解明されていく。
「ドグラ・マグラ(1987)」って、小説が原作でしたっけ?
夢野久作っていう作家を知ってますか?
名前しか聞いたことない。
日本三大奇書って言われてるのが、夢野久作「ドグラ・マグラ」と小栗虫太郎「黒死舘殺人事件」と中井英夫「虚無への供物」です。
「ドグラ・マグラ」は読んだら気が狂うと言われている。
夢野久作はミステリー作家で短編集が多いんだけども、これは大長編。主人公の青年が目を覚ますところから始まるんですね。
小説では「ブーン」ていう音で目を覚ます。どこで寝ているのか分からない。北九州の大学病院の病棟だっていうことが、だんだん分かってくるんですよ。隣の部屋に女の子の患者がいるとか。自分が誰なのか。何で入院してるのか分からなくて、それがミステリー仕立てで、明かされていくんです。
だから夢のパートが結構あるんですか?
目を覚ますって、映画の最初によくあります。
「オープン・ユア・アイズ(1997)」とかね。
似てますよね。
「パーム・スプリングス(2020)」は最近見返したけど「ウェイクアップ」というセリフだし。
そうですね。多いですね。
鋭い着眼点ですね。
事件が2つ起きるんです。自分のお嫁さんを殺してしまう事件、直方(福岡県)で、同じ人のお母さんが殺される事件があって、その青年が容疑者だっていうのが、分かってくる。
はい。
ここの大学の教授が精神分析の権威のある人で、「心理実験」をその青年を使ってやるんです。
記憶は脳じゃなくて、体全身の細胞が記憶するっていう説を立ててるんです。
脳ではなくて。
もう一つ出てくる説が「胎児の夢」。
お母さんのお腹の中で記憶があるという話は聞いたことあるんですけど、
生命が赤ちゃんの形になるまでに、魚の形から始まって古代の生物の形から、哺乳類へ、そういう系統発生っていうんですけど、人間の形になる。
その系統発生の記憶を胎児の時に、よみがえらせている。
人類誕生までの歴史を記憶としてってことですか?
うん。
よく分からないな。
「胎児の夢」はよく使われる話ですけどね。赤ちゃんになるまでが、個体発生。個体発生は系統発生を模倣するという説。「固体発生と系統発生(スティーブン・ジェイ・グールド著)」っていう本もあって。
ちゃんと提唱されてるってことですか。そういう学説。
また、別の話で、中国の昔の物語が出てくる。絵を書くために、お嫁さんを殺してしまう画家のお話。お嫁さんの死後の絵を書く異常な中国の画家が国外追放されて日本に流れてきて、九州に住むっていう物語なんです。
中国のその話は実際にあるんですか。
実話です。それは史実として残ってるんですけどもね。呉青秀(ごせいしゅう)っていう画家。(中国・唐代に玄宗皇帝の寵愛を得た宮廷画家)
うん。面白い。細胞レベルで犯罪を犯しちゃうってことですね。
そういうふうに解いていくので、ミステリーの原則とは離れていくんですけどね。これが、長い小説なんですよね。この中に祭文節(さいもんぶし)っていう、阿呆陀羅経(あほだらきょう)があって。
はい。
昔は木魚を叩きながら、お坊さんが説く、そういう節回しがあって、その節に乗せて大学教授が語っていくんですよ。
へえ。
お話の中にお話がいっぱい入ってるんですよね。
映画は原作の内容に沿っているんですか?
ダイジェスト化をされて、2時間枠に収まると、夢野久作の味わいは削られますけど、お話は明快になってくる。
映画から観てみよう。
本で読むと本当になんか‥。
どういうことだ? っていう、ふふふ。
こっちの話も出てくるし、あっちの話も出てくるんで、どう繋がるんだろう? って。揺さぶられますよね。本当に何かおかしくなる。
気が狂うってそういうことね。
面白いですね。
教授を演じる桂枝雀さんが「仏説 阿呆陀羅経」を習って、上手にこなしてるんですよ。
この話し方で映画が進んでいくんですか。
この節回しで教壇に現れるシーンがあるんです。当時も、これができる人が少なくて。
節?
お経みたいな感じってことですか?
テンポが早いんですよ。チャカポコ、チャカポコ、チャカポコって叩きながら。
聞いてるだけで、頭がこんがらがってきましたよ。
セリフも覚えないといけないし、阿呆陀羅経に乗せないといけない。
これを知ってる人が指導して。
叩き方はこう、動きはこう。
難しいそうですね。
だってね、幕末から明治の芸能を再現するから。木魚も手作り。踊りながら叩かないといけない。貴重な映像というか‥。
そうですね。観てみたいですね。めっちゃ面白そうだなと思いました。
すごく凝った作品。夢野久作は面白い。江戸川乱歩と同時期ぐらい。
そうなんだ。まだ江戸川乱歩の方が分かるかな。
横溝正史、江戸川乱歩、木々高太郎とかそのあたりですね。
「ラ・ラ・ランド」 夢見る人たち
監督・脚本:デミアン・チャゼル
〈Story〉
朝のロサンゼルス。高速道路は大渋滞で、多くのドライバーがクラクションを鳴らしている。渋滞の中に巻き込まれていたミア(エマ・ストーン)は女優の卵で、車中で台詞を覚えようとするが、後続車のセブ(ライアン・ゴズリング)に煽られる。ハリウッドの撮影所でミアは、オーディションの結果が散々で役がもらえない。ある日ミアは、ルームメイトに誘われ、クリスマス・パーティに参加する。顔を売ることができず、車はレッカーされ、歩いて帰路につく。バーから聞こえてきた音楽に惹かれてレストランへ入ると音の主はセブのピアノだった。
「ラ・ラ・ランド(2016)」は将来の「夢」やね。夢を叶えたけど‥。
叶えたけど、結ばれないっていうリアルさがいいです。私的には。
2人がバーみたいなとこで出会ってさ、ミュージカルシーンみたいな、あれが良かったな。
空想シーンですね。もし2人がそのまま続いてったらって空想が始まって、空を飛んだりするんです。プラネタリウムみたいなところで。
プラネタリウムは、感動的だった。あれ、ジェームス・ディーンの映画で‥。
あれは「理由なき反抗(1955)」。
「理由なき反抗」の最後のシーン。
そうなんですか。
グリフィス天文台だ。
聞いたことあります。
「ラ・ラ・ランド」といえば、やっぱ、冒頭のハイウェイで人々が車の上に乗って、あれすげえなと思った。あそこが一番好き。
アカデミー賞授賞式のときもあの楽曲で始まったんですよ。
でも確か獲れなかったですね。「ムーンライト」だったと思う。
そうやったっけ?
間違えて言っちゃった時ですよね。
「えーっ」と思いましたけど。「ラ・ラ・ランドって言った〜!」。
アカデミー賞初めてやね、間違えたの。周りの人みんな慌ててたな。
仕組まれてんのかと思いますね。
でも最多部門で賞を獲ってるんですね。
6部門ね、十分じゃない。主演女優賞はエマ・ストーン。
この映画でライアン・ゴズリングを初めて知った。
そうかもしれない。
それまでも有名な作品に出てたと思うけど。
「ドライブ(2011)」とか。
「ナイスガイズ!(2016)」は観ました。コメディですけど。
「君に読む物語(2004)」は良かったですね。
これは観たことがないけど。認知症を患ってる女の人に読み聞かせるんでしょう。それだけは知ってる。
めっちゃ若い時の気がしますけど。
ライアン・ゴズリングとライアン・レイノルズがごっちゃになっちゃう。「ラ・ラ・ランド」の#シティ・オブ・ スターズは、ゴズリングが港で出てきた時の曲やったかな?
橋のところのやつですか?
♪シティ・オブ・ スターズ♪。
四季にわかれて。エマ・ストーンって美人さんよね。エマ・ワトソンとごちゃごちゃなる。エマ・ワトソンは「ハリー・ポッター(2001〜)」。
エマ・ストーンは?
「アメイジング・スパイダーマン(2012)」
最近だと「クルエラ(2021)」だとか。
「クルエラ」は、ファッションが良かったですよね。
「ラ・ラ・ランド」のゴズリング演じるセバスチャンがジャズミュージシャンを目指してたんやったかなあ。グループを結成するけど、自分の思い描いた音楽の方向性が違うから戸惑うシーンがあった。それを見てエマ・ストーンが
「何か違うんちゃうか」みたいに言ったシーンを覚えている。
そうなんですよね。エマ・ストーンのミアは、
「自分が好きな音楽やったらいいのに」って思ってるし、セブは「生きていくため」。すごいつらいというか。
観ていて切ない。
デミアン・チャゼルといえば、あれが好き、「セッション(2014)」。J・K・シモンズがめちゃくちゃ怖い。
「ラ・ラ・ランド」にも出てますよね。レストランの‥。
「パーム・スプリングス(2020)」にも出てたよ。
あー、襲ってくる人。
弓矢で。この人がもうめちゃくちゃ怖いのよ。
予告編から怖いね、予告編も何回も観たけど。
音楽学校の先生が体育会系かっていうくらいの、ちょっとでもミスしたらお前はダメ人間だって。生徒もやめちゃったりして。ラストがすごいの、観てもらわなきゃわかんないと思う。
「愛と青春の旅立ち(1982)」の教官みたいな感じ。
ははは。あんな感じですね。
「ドリーム」差別をなくすという夢
監督:セオドア・メルフィ
脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
〈Story〉
1961年、バージニア州ハンプトン。黒人女性のキャサリンは、同僚のドロシーとメアリーと共にNASAのラングレー研究所の有色人種専用棟で計算手として働いている。ソ連の人工衛星スプートニクが成功し、アメリカは有人宇宙船計画へのプレッシャーが強まっている。
キャサリンは上司ミッチェルからスペース・タスク・グループでの作業を命じられる。
エンジニア総括者ポールは機密であるとして彼女に黒塗りの資料しか渡さないが、正確な解答を導き出し、上司ハリソンも彼女の能力を認める。1961年4月12日、ソ連のユーリイ・ガガーリン少佐が有人宇宙飛行に成功する。ジョン・F・ケネディ大統領は月面着陸を目指すと表明。キャサリンは、自分が800m離れた有色人種用トイレに走って往復しなければならないことなど訴える。
「ドリーム(2016)」は宇宙開発。
そうそう黒人の女性が‥。
まだ手計算の時代なんです。黒人の3人の女性が正確に難しい計算をしないといけない。どういう曲線を描いて飛ばすとかね。すごく優秀なんだけども、まだ黒人差別が強い時代やし、女性差別の強い時代で、そこの建物に黒人が使えるお手洗いがないんです。手洗い行くのに、何分もかけて別の棟まで行かないといけない。そこから抗議を始める。
「トイレを作ってください」という。
なくてはならない存在というのを認めてもらえてくる。
面白いのはね、
「コンピュータを導入しよう。コンピュータで計算させたら、絶対その方が早いし」って、アイ・ビー・エムのコンピュータを導入することになるんです。大きな部屋を用意してね。大型のコンピュータを専門家の人が設置しにきて、動かそうとするんですけども、なかなか作動しないんです。手計算の方が早い。
マーキュリー計画の舞台裏という、そういう時代の話ですよね。
アメリカとソ連が宇宙開発競争をしている時代。
全然知んないですけど、アポロ計画とはまた別なんです?
アポロ計画の前身かな。(1961年)
人類が月に降り立つのはちょっと後か。
すぐ後じゃないかな。アポロ11号が月へ行くのが1969年。万博が1970年だったので、その前の年に月に行ってるんですよ。
大阪万博で月の石が展示されて、アメリカ館が行列になって、みんながそれを見に行った。
夕暮れさんは当時いくつですか?
小学校の5年生か、6年生か。
じゃあ、行ったんですか万博へ。
行ったよ。
月の石は見ました?
見てない。
「こんな行列に並ばれへん」とか言われて、隣のソ連館に。
はははは。
初めて、ボルシチを食べて、
「なんやこの真っ赤なスープは」。
ケビン・コスナーはどういう役割で出てくるんですか。
そこの組織の上の人で、トイレの看板をバーンって叩き潰してくれる。
おー、いい役なんですね。
「パーム・スプリング」目が覚めるとループする
監督:マックス・バーバコウ
脚本:アンディ・シアラ
〈Story〉
2019年11月9日、カリフォルニア州パームスプリングス。ナイルズ(アンディ・サムバーグ)は恋人ミスティと2人で知人のタラとエイブの結婚式に出席する。
結婚式の後、ナイルズはミスティが浮気していることを知る。傷心のナイルズは花嫁の付添人サラ(クリスティン・ミリオティ)と一気に距離が縮まる。盛り上がる中、ナイルズの肩に矢が命中する。負傷したナイルズがふと周りを見渡すと、近くの洞窟から赤い光が発せられているのに気付く。ナイルズはその光の方へと這って行く。サラも怪我を負ったナイルズを追って、洞窟に足を踏み入れる。
そして、ナイルズとサラは謎の渦に呑み込まれていく。
「パーム・スプリングス(2020)」は主人公サラがちょっと冴えない感じの女性なんで、結婚する日をループするんですよ。
一日を何回も。
目が覚めたら、その日の朝に戻ってる。どうやったらそのループを抜け出せるんやろって、探してるうちに、もう1人その結婚式に出てた男の人ナイルズも同じようにループをしてるのに気がついて、2人で脱出をしていく話なんです。眠ったり、死んだりすると、その一日が戻っちゃう、どうせ死んでも戻れるし、その日の記憶は他の人から無くなるので、めちゃくちゃをするんです。結婚式を荒らしたり、死んでみたりとか。
一緒に死ぬの?
一緒に死ぬときもあります。破天荒な感じで、女の人はおとなしい、自分の思っていたことができなかったタイプの人なんですけど、ループに入ることで、自分を開放する。良い面も見つけながら。
お姉ちゃんの結婚する旦那さんが‥。
浮気相手。姉ちゃんの旦那さんと浮気をしてたんですね。
そういうバックグラウンドも明かされる。サラは何としてもタイムループから抜け出そうとするけど、ナイルズは
「そんなことを気にせず楽しもうぜ」って、マイペースに生きてて、ダラダラと影響されちゃったり。
「セッション」のJ・K・シモンズがその男の人を襲いに来るんでしたっけ?
襲いに来る、弓矢で。
なんででしたっけ?
J・K・シモンズも、ナイルズのせいで、タイムループにはまっちゃうんですよ。それで復讐のために殺しに来る。殺すことに意味はないんですけど。
巻き込むことができるんですか?
ある場所に連れて行ったら。
洞窟みたいな所が全ての元凶なんですよ。そこに行ったら、タイムループにはまっちゃう。
たまたま2人が喋ってて、その洞窟の方に行ってしまって、サラは知らずにその中に入ってループにはまって、ナイルズは既にループの中にいたので、
「なんで止めてくれへんの?」って、最初は仲が悪いんですけど、仲良くなっていく。
どんだけ遠くに行こうとも、目が覚めると元のベッドで、ぱっと目が覚めちゃう。
そのループから抜け出せるのか? という物語。
ループものって、面白いよね。「ハッピー・デス・デイ(2017)」とか。
うん。そうですね。
「エルム街の悪夢」眠ると夢の中で襲われる
監督・脚本:ウェス・クレイヴン
〈Story〉
オハイオ州スプリングウッドにあるエルム街。
女子高生ティナは、いつも悪夢を見る。
悪夢男は右手に鉄の爪をつけ茶色の中折れ帽に、赤と緑の横縞のセーター、顔は火傷の痕がある。その日の悪夢は工場の地下、目の前をヤギが通過する。後ろから男に抱きすくめられる。覚めてもネグリジェに爪の痕が残っていた。
「エルム街の悪夢(1984)」のフレディって、どんなのか知ってる?
緑っぽい赤と縞の‥。
そう、そう。寝たらおしまい。
寝たら殺されるんですか?
フレディが現れて‥。
夢の中で襲われて殺される。登場人物たちはフレディに殺されるっていうのが分かったから寝ないように努力するわけよ。でも、うつらうつらしただけでもそうなっちゃうから、観客は、いつから夢の世界か分かんない。気が付いたら寝てて、フレディがいきなりぱって出てきて、観てる方は「わっ」て思う。
それはリアルですね。自分が寝てるっていう意識がないから、面白いですね。
いつの間にか夢の世界に入ってる。
実際、あるもんね。起きてるつもりが。
寝てしまって。
境界線が曖昧っていうのが怖くて。「エルム街」は怖いんですよ、個人的に。寝ちゃいけないって無理じゃん。
「エルム街」も何作もあるもんね。
「フレディVSジェイソン(2003)」もあるし、
そうなんですか。「貞子vs伽椰子(2016)」みたいな感じ。
セッションやね。
セッションね、ふふふ。
この造形が成功してるよね。
正体は分かるんですか、フレディの。
元々は人間で、子供を殺して、街の住民に殴り殺しにあったかな。エルム街に住んでる人たちに復讐する。怖いよ。
ちゃんと観たことなかったです。
確か一作目はジョニー・デップの映画初主演作。
「ギルバート・グレイプ(1993)」より、こっちが先か?
みたいですね。途中から超能力少女みたいなのが出てきて、夢の中でフレディと闘ったりする。
シーズンごとにいろいろ工夫しますよね。寝たらどうするみたいな。
監督は、ウェス・クレイヴン。
ホラーが多いよね。
「スクリーム(1996)」とかありました。「スクリーム」はちょっと変わっててね、ホラーっていうか、ホラー映画のあるあるを逆手にとった、ちょっとブラックコメディに近いのかも。これも新作がある。
エルム街の悪夢シリーズ
「エルム街の悪夢(1984年)」「エルム街の悪夢2 フレディの復讐(1985年)」「エルム街の悪夢3 惨劇の館(1987年)」「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃(1988年)」「エルム街の悪夢5 ザ・ドリームチャイルド(1989年)」「エルム街の悪夢 ザ・ファイナルナイトメア(1991年)」「エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア(1994年)」「 フレディVSジェイソン (2003年)」「 エルム街の悪夢 (2010年)」
「死霊館 悪魔のせいなら、無罪」 ジェームズ・ワンのホラー。
監督:マイケル・チャベス
脚本:デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック
原案:ジェームズ・ワン、デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック
〈Story〉
1980年、ウォーレン夫妻はグラツェル家からの依頼で、11歳のデヴィッド・グラツェルを調査する。
ウォーレン夫妻は悪魔の憑依と判断し、カトリックの司祭たちと共にデヴィッドの悪魔祓いを行う。数日間の儀式が終わり、デヴィッドの異変が収まる。
数ヶ月後、グラツェル家の近所で殺人事件が発生。アルネ・シャイアン・ジョンソンが家主のアラン・ボノを殺害した。
裁判の場で、ジョンソンは「デヴィッドに取り憑いていた悪魔が私に取り憑いた。アランを殺したとき、私は悪魔に操られていた。だから、当時の私に責任能力はなく、無罪だ」と主張する。
死霊館シリーズは面白いですよ。
何本あるの?
「死霊館」としてが5作品ぐらい。「アナベル」の方が3作品ぐらいあります、繋がってはいるんですけど。全部同じ霊媒師の夫婦が出てきます。夫婦の絆みたいなものがメッセージ性としては強くて、家族の絆みたいな。
実際にいたんでしょ? この悪魔祓いの夫婦が。
それを1作目から追いかけてると、「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。 (2021)」は絆が強くて感動します。
1つ観たかな。何作目かな?
どんな話でした。
引越しをして、不思議なことが起きる。その夫婦は最初なんかテレビに出演していて。
そう、講演会をよくしていて、悪魔祓いで有名になっている。だいたいどこかの家族で不思議な現象があったら呼ばれる夫婦です。
そこのお家の地下にいろいろなモノがガラスケースに保管されていた。
コレクトしてるんですよ。呪いのモノが集まって、世に出すと危ないから管理している。
封じてるんやね。
それを娘が触っちゃう話もあるんです。「アナベル 死霊博物館(2019)」というのがそれです。
その夫婦が来て、本当に怪異が起きてるのか、それとも科学的な現象なのか、見極めましょうというところから始まった。
「死霊館 エンフィールド事件(2016)」かな。4姉妹が出てきて、真ん中の娘が悪魔に取り憑かれちゃうのですかね。
2階から地下に落下するシーンがあったな。
よく家の中の床とか突き抜けちゃう時がありますけどね。
地下に落ちて、地下が家具の物置になってたかな。
それは1作目「死霊館(2013)」です。お母さんが取り憑かれちゃう。
それだ。面白かったよ。
「死霊館のシスター (2018)」っていう作品が一番面白くて、死霊館のシリーズ3作目ぐらいですけど、時系列は一番最初なんですよ。奥さんの方が、トラウマがあって、いつも怖がってる悪魔がいるんです。その因縁の悪魔が出てくるんです。
奥さんは霊視で活躍したけど、夫の方はたいして活躍していない。
夫は献身的に支える。奥さんがこの能力のせいで孤独な人生を歩んできたけど、支えてくれる相棒を見つけたというシーンがあるんですよね。
観てみようかな。
死霊館シリーズ
「死霊館 (2013) 」
「死霊館 エンフィールド事件 (2016) 」
「死霊館のシスター (2018) 」
「ラ・ヨローナ〜泣く女〜 (2019)」
「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。 (2021)」
アナベルシリーズ
「アナベル 死霊館の人形 (2014) 」
「アナベル 死霊人形の誕生 (2017)」
「 アナベル 死霊博物館 (2019)」
(対話月日:2022年3月9日)