そこも映画の愉しみ方だと思います。
映画をこよなく愛する素人のおしゃべりです。
皆様の観たい映画がひとつでも見つかれば嬉しいかぎりです。
映画 「マリー・アントワネット」 皇妃の境遇と貴族の命運。
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
原作:アントニア・フレーザー
〈Story〉
1769年、オーストリアの皇女マリア・アントニアは、フランスとの同盟関係を強化するため、フランスのルイ16世に嫁ぐことになる。
数年間、ルイ16世との夫婦生活はなく、アントワネットが不妊症かと陰口を叩かれる。アントワネットは結婚生活のストレスから次第にパーティーやギャンブル、ショッピングなど浪費に楽しみを見出していく。
やがて、子供に恵まれたアントワネットは、宮廷から逃れ、プチ・トリアノン宮殿で穏やかに過ごすようになる。
フランスはアメリカ独立戦争への援助をきっかけに国の財政が窮乏し始め、民衆の不満が爆発。
飢餓に苦しむ民衆はフランス革命をおこすのだった。。。
「マリー・アントワネット(2007)」の監督が、ソフィア・コッポラです。
「Somewhere(2011)」や「オン・ザ・ロック(2020)」などを監督しています。
フランシス・フォード・コッポラの娘さん。
東京が舞台の映画もありましたね。
それは、「ロスト・イン・トラストレーション(2004)」ですね。キャストはビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、藤井隆、ダイアモンド☆ユカイも出ていますね。ビル・マーレイはサントリーウイスキーのテレビCM撮影のために来日したハリウッド俳優の役です。初監督作品で有名になったそうです。
「マリー・アントワネット」はポップな映画だなと思いました。歴史映画ですけど、BGMがロック調で現代っぽい。クラシックも流れますけど、重々しい映画じゃなかったです。
アントワネットがオーストリアからフランスのルイ16世に嫁ぐところから話が始まります。歴史的には、バスティーユが襲撃されてフランス市民の反感が出てきたところまで。処刑されるところはなくて、不穏な感じで終わります。
明るいシーンが多くて、アントワネットが最初にルイ16世の小さな絵を見て、「素敵そうな人だわ」と期待を抱く。おてんばな女の子っていう描かれ方をしています。結婚をして皇妃になると世継ぎに恵まれないと叩かれてから、遊ぶようになって、自分らしく生きます。
全体にポップなの?
遊んでいるシーンが多いです。ギャンブルをしたり、トランプしたり、舞踏会に行ったり、18歳の頃のアントワネットは、ティーンエイジャーとして描かれていて、ロックやポップミュージックが流れます。フランス王朝の話だということを忘れそうになるぐらいの明るい印象です。
観る方はアントワネットの最期を知っているから、少女の輪郭を切り出しているのかもね。
ティーンにフォーカスしています。悲劇より、そういう捉え方。「ナポレオン(2023)」では、最初に首が飛んでいました。あのイメージではなく、一人の女性の話でした。年相応な遊びを愉しんで、何が悪いんだという感じが好きです。
食卓では夫婦が横並びで食べるのを、カメラが前から映しています。テーブルには豪華な食事が載っていて、印象的なのはスイーツ。美しく、マカロンタワーがあって、その毎回違う食事の光景が綺麗でした。
最初は上品にスイーツを食べていたのが、王妃の役目を務めてないと言われて心が壊れちゃってから、手掴みでケーキをむしゃむしゃ食べる。そんな仕草に心情が影響していました。
食事は生命活動だから明るくてエネルギッシュ。
皇帝と皇妃が横並びで食べるって、あまり見たことがないよね。
離れて食べる設定が多いですね。歴史的には分からないですけど、政略結婚の割には夫婦がお互い信頼して、仲が良さそうに描かれているので、心穏やかに観られました。
あの時代って、フランスが格上で、ナポレオンがフランスの軍隊に入る時も田舎から行く印象ですね。
フランスが都会的ということですか?
フランスは軍事力が大きい。オーストリアは文化。イタリアは田舎で宗教的。
フランスが傾いていくところは、描かれていませんでした。
女の人が描くと照準が違う。
女性視点ですね。
フランス市民の描写がなくて、国家財政が厳しいと宮廷で話していますが、最後まで華々しい景色で、アントワネットもそういう面しか見ていなかったのかな。
貧しい人々には目を向けず。
贅沢志向っていうよりは、庶民の実情を意識していないようでした。教えてくれる人がいないまま、最後は処刑されてしまうのは悲しいです。
皇帝役のジェイソン・シュワルツマンは「アステロイドシティ(2023)」の主人公。ウェス・アンダーゾンの常連組。
「フレンチ・ディスパッチ(2021)」にも出ています。
今回は優しい皇帝でした。
アントワネットは嫌味に描かれていない。
そうですね。純粋な女性です。
自分の中では、
「パンがなければケーキを食べればいいじゃないの」
というフレーズが印象に残っているから、嫌味な人かなって思っていた。
そのセリフは、アントワネットが言ったと言われる風評を宮殿の中で聞いて、
「そんなことないのに」と話をしています。
映画の中ではアントワネットが言ったわけじゃないんだ。
ギャンブルにのめり込んだり、不倫をしたりするけど、暗い感じではなかった。
アントワネット役はキルスティン・ダンスト。無印「スパイダーマン(2002)」のMJです。
アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞。確かに凝ってそうな衣装。
普段がドレスで華々しかった。
宮殿はどっか借りて撮影しているんですかね。(ヴェルサイユ宮殿をはじめ、フォンテーヌブロー宮殿、ミルモン城、シャンティイ城、パリのスービーズ館やオペラ座ガルニエ宮、ヴォー・ル・ヴィコント城)
お城は個人が持っていたりします。
ソフィア・コッポラはウェス・アンダーソンの映画に携わっていて、関係が深い。
お菓子の監修がラデュレです。梅田にも店舗がありました。マカロンが有名です。
「グランド・ブダペスト・ホテル(2014)」で出てきそう。
こういう歴史物って、知識があまり無いと入りづらいイメージあるけど、観やすい?
全然知らなくても観やすいです。
クライマックスにドラマチックな展開がある?
宮殿を追われちゃうんですよね。
そうなんや。フランス革命で。
そうです。召使たちが
「逃げてください」って言ってくれるけど
「私は最後まで王様と一緒にいます」
宮殿を出る時は、部屋の荒れた様子が最後に映ります。
荒らされたという感じ?
いろんなものを投げられたような荒れ方だった。
市民がってこと?
フランス貴族没落のメタファー。ベッドルームだけ荒れているのが最後に映る。
そして、物語は「ナポレオン」に続く。
感情移入ができる作品だと思います。私が女だからかもしれないですけど、アントワネットは、現代女性と近い感情を持っている、時代の隔たりをヌキにしても観れる気がしました。
宮廷が男性社会だから、女性が抑圧される描写もあるのかな。
それは感じなかったですね。アントワネットが最高位の女性だからかも知れないですが、一緒に遊ぶ男女のグループが堅苦しくなくて、王妃にもフランクに接してくれて、仲間ができていました。
子供が生まれてから隠れ家(プチ・トリアノン宮殿)に住んで、宮殿とは違う田舎みたいな所で、派手な遊びからは離れていました。
オペラを観たり、哲学の本を読んだり。。。
子供が産まれて考え方が変わったのかな。
かもしれないですね。自暴自棄から抜け出た感じです。一度宮殿に戻るタイミングがあって、その後不倫してしまいます。
今までのアントワネットの印象と変わって見えるのが面白い。人にはいろんな側面があるわけで、どれも本当の自分だからね。
ソフィア・コッポラってこういう路線をいくのかな。
どうでしょう。4月には現代劇「プリシラ」が公開されます。ベネチア国際映画祭、最優秀女優賞を受賞。
プレスリーの奥さんの話。
こちらもストレスいっぱい抱えている女性ですね。
そうですよね。女性にフォーカスした作品が多いですよね。
その目線が鋭くなるね。
印象が変わると言えば、マリリン・モンローを描いた「ブロンド(2022)」が衝撃でした。
こんなに苦しみながら生きていたのかと印象は変わってしまいます。マリリンはお父さんが不在で、いつもお父さんを感じていて、お父さんを追い求める。
僕の好きなフランスの監督(ビリー・ワイルダー監督)が嫌な人物で、これは本当だったらショックやなって。ジョン・F・ケネディも嫌な人物でした。
つらいストーリーでしたね。
アーサー・ミラーと出会うシーンが良かったな。アーサーはマリリンを文学音痴やと思っていたら、本を読んでいるし、詩も劇も理解している。
才のある女性でしたね。マリリン・モンローのことを知らなさすぎて、すんなり見てしまいました。シンボル化されている印象です。道路の下から風が出ていて。。。
スカートがまくれる。(「七年目の浮気(1955)」)
僕は映画の表面しか見てないし、みんなの注目を浴びている印象。物語の中で作品製作の現場が再現されるのが面白かった。
おかげでこれまでの印象がガラガラと崩れる。「お熱いのがお好き(1959)」は、コメディのロードムービーです。撮影の裏側では無理やり演技をさせられていました。
当時の資料が残っていたり、誰かがそういう話をしたりしていたんですかね。
Eくん
年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。
サポさん
「ボヘミアン・ラプソディ」は10回以上鑑賞。そして、「ドラゴン×マッハ!」もお気に入り。主に洋画とアジアアクション映画に照準を合わせて、今日もシネマを巡る。
キネ娘さん
卒業論文のために映画の観客について研究したことも。ハートフルな作品からホラーまで守備範囲が広い。グレーテスト・シネマ・ウーマンである。
検分役
映画と映画音楽マニア。所有サントラは2000タイトルまで数えたが、以後更新中。洋画は『ブルーベルベット』(86)を劇場で10回。邦画は『ひとくず』(19)を劇場で80回。好きな映画はとことん追う。
夕暮係
小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で劇場デビュー。大興奮も束の間、開演時に照明が消え気分が悪くなって退場。初鑑賞は約3分となった。
映画 「ボヘミアン・ラプソディ」 血脈と友愛の狂詩曲。
監督:ブライアン・シンガー
脚本:アンソニー・マクカーテン
原案 :アンソニー・マクカーテン、ピーター・モーガン
日本公開:2018年
〈Story〉
1970年代。ゾロアスター教徒ペルシャ系の青年ファルーク(ラミ・マレック)は、ギタリストのブライアン・メイ、ドラマーのロジャー・テイラー、ベーシスト・ジョン・ディーコンとバンドをスタートする。
ファルークは、出自を嫌い「フレディ」と名乗る。
フレディは人気ブティック「BIBA」の店員メアリー・オースティンと知り合い恋に落ちる。
バンドは「クイーン」と改名、ワゴン車を売却してアルバムを自主制作する。レコーディングの様子を見たEMIのジョン・リードは彼らをスカウトする。世界各国へツアーし成功を収め、フレディはメアリーにプロポーズする。
EMIの重役レイ・フォスターからヒット曲「キラー・クイーン」の路線を進むよう命じるが、クイーンメンバーは反発する。
フレディはオペラをテーマとしたロック・アルバムを提案しアルバム『オペラ座の夜』が完成。その中には6分という長さで斬新な構成の曲「ボヘミアン・ラプソディ」があった。そのシングルカットを、フォスターは「ラジオでかけてもらえない」と認めない。
フレディはラジオに出演し、「本来ならラジオで聴けない曲」と同曲を独占放送、マスコミは酷評するが大ヒットする。
クイーンはツアーで多忙になる中、フレディは自身のセクシャリティに気づき、メアリーに自分はバイセクシャルだと告白。メアリーは、フレディと距離をおき他の男性と付きあうようになる。
メンバーとの確執が増し、フレディのソロ活動をきっかけに、決定的に仲間割れとなる。
そんな中、新しくマネージャーに就任したジム・ビーチが、チャリティーイベント・ライヴエイドの件をマネージャーに伝えるのだった。。。
「ボヘミアン・ラプソディ(2018)」はちょうどタイムリーじゃないですか。今、ドキュメンタリー「フレディ・マーキュリー The Show Must Go On(2024)」も公開中だし、4日間限定でクイーンのLIVEコンサートの映画「QUEEN ROCK MONTREAL(2024)」もやりますよ。81年のモントリオールのLIVE。紅白でもクイーン+アダム・ランバートが出演していました。あの人もフレディに負けず劣らず個性的な人。
あの人もゲイです。
「ボヘミアン・ラプソディ」の一番好きなシーンを教えてください。
クライマックスのLIVEシーン。
実際のLIVEはちょっと長くて、確か1曲カットされているんですよね。
2曲カット。本当は21分間あるんだけど、映画はカットされている。収録はしていたから、DVDには入っている。地上波でロングバージョンを放送していました。
映画は再現度がすごいって、話題になりましたね。LIVEシーンでステージのコーラのコップまで実際の映像と同じ位置に置いている。
そう。フレディが上がって来る時にマイクを渡すスタッフさんまでそっくり。
あの人やって、気づくのも嬉しいですね。
LIVEってたくさんのアーティストが出ているので、フレディーがステージに出る前にすれ違うアーティストもそっくり。
ボウイも映っていたんですか。
デヴィッド・ボウイの顔は映っていなくて、一瞬見える。
そうなんだ、見てみよう。面白いですね。エルトン・ジョンは?
いなかった。
LIVEの映像が残っていて、それを再現しているの?
基本はフレディの歌声を使っていて、所々そっくりに歌える人の声を使ったり、フレディ役のラミ・マレックの歌も使ったりしています。
そっくりさんがすごいですよ。フレディのままでしたね。
歌い出しを口ずさんでいるだけだったら、そっくりさんに歌ってもらっています。
フレディ以外にも、あんな高音が出る人がいるんですね。
クライマックスのLIVEって、フレディの最後のLIVEじゃないんですよね。
その後ワールドツアーをやったりします。
ラミ・マレックはアカデミー主演男優賞を獲っていましたね。あれは似ていますか?
全体的な雰囲気や動きの癖がすごいな。
映画の出来はどうでしたか?
クイーンのドキュメンタリーもはまった後で観たんですけど、映画が一番面白いな。起承転結が上手い。バンドの歴史に史実に進める方法がある中で、LIVE映像がクライマックスで、見終わった後の感動の余韻が強い。歌を20分間聴くことができるし、ヒット曲メドレーで満足、バンドを堪能できました。
爽快感がある終わり方ですね。
映画で描かれているほど仲は悪くなかったという話を聞いたことがある。
映画の脚色ですね。フレディがバンドメンバーと仲が悪くなる決定的な出来事がソロデビューで、メンバー以外の人たちと曲を作る。実際にはフレディのソロ曲の中には、バンドメンバーに協力を仰いだりしている。
だから、ソロ活動でフレディが注目されちゃうんだけど、他のメンバーもそれぞれソロ活動をしていたりしている。
それがきっかけで仲が悪くなったわけではないんだよね。
メンバーそれぞれにソロ曲もあるけど、クイーンを離れているから話題にならない。4人とも曲を書けるから、それぞれが活動できるけど、フレディのボーカルのクイーンの曲が一番売りやすい。
フレディは自分のことをリーダーだと思っていないし、4人が対等でいるからいい曲が書けるんだと思っている。
フレディはメンバー思いなんですね。
メンバーはインテリでしたよね。歯医者の資格を取っていたり。
ドラムのロジャー・テイラーが歯科医学生で、ベースのジョン・ディーコンが電気工学、リードギターのブライアン・メイが天文学。後に博士号を取得して博士論文を書き上げます。
サポさんは昔からクイーンの曲が好きでしたか?
大学ぐらいから有名な曲だけ聞いてはいた。
きっかけは?
私は「ジョジョの奇妙な冒険」が好きだから、ハハハ。
第6部でウンガロがいましたね、
「ボヘミアン・ラプソディ」というスタンドを使います。
当時大学の近くに親世代の洋楽のロックバンドのCDがやたら揃っている図書館があって、そこでたくさん借りて、その時にクイーンも借りていました。
サポさんはどの楽曲が好きですか?
「# You’re My Best Friend」
劇中で流れていました?
流れてはいなくて、最初のマネージャー、ジョン・リードが口ずさむシーンがある。
カップヌードルのCMになっていた曲は知っています。
「# I was born to love you」はクイーンではなくて、フレディのソロの中で一番ヒットした曲。
「# We Will Rock You」はワールドカップに使われていました。
僕は「# Radio Ga Ga」が好きです。あのシーンいいですよね。
応援上映も当時やっていたから、LIVEで一緒に手を叩く。
みんな手拍子をしているの?
してる。一緒に歌ってもいいから。
大勢だと楽しい。好きな映画じゃないと楽しめない。
僕の好きなトーキングヘッズの映画「ストップ・メイキング・センス(1985)」。LIVE映像の映画です。これの応援上映に行けたら、立ち上がって踊っちゃうと思います。
「ScreenX」があります。3面スクリーンで左右に別の画面があって、首がめっちゃ忙しくなる。
常に3面に映っているんですか?
ところどころだけ。
迫力ありそうですよね。
LIVEシーンで真横のスクリーンに観客が映ると、自分も観客の中にいるような没入感が出たり、広大な景色が映ったりします。「ボヘミアン・ラプソディ」で一番DVDに収録して欲しいのが、「# KILLER QUEEN」の演奏をテレビ放送するシーンで、正面にフレディたちが歌っていて、セットの横が左右の画面に映っていて、そこに本物のブライアン・メイとロジャー・テイラーがカメオ出演している。
でもDVDには、3面スクリーンは収録されないんです。
どこで観たんですか?
関西では「ScreenX」の設備がなくて、池袋に行きました。
「ScreenX」の映画って他にもありますか?
最近だったら、「トップガン・マーベリック(2022)」。新しい公開やったら、マーヴェルの「マダムウェブ(2024)」、「デューン砂の惑星PART2(2024)」。「ARGYLLE/アーガイル(2024)」。
フレディは元々移民一家でしたっけ。
ペルシャ系移民のゾロアスター教徒。
コンプレックスを持っていましたよね。
自分の名前をファルークからフレディに改名した。
フレディが自分はエイズだってメンバーに打ち明けるシーンはLIVEの後ですか、それとも前ですか。映画は事実と違うという記事が。。。
ライヴエイドの直前ではなかった。
それも脚色というか
LIVEの前に親にパートナーを紹介していましたよね。親に会いに行くシーン好きです。
いいシーンですよね。
「# BOHEMIAN RHAPSODY」を、こんな長い曲をラジオで流せないって反対する重役の人は架空の存在になっています。ラジオで流すには長すぎると世間に酷評されたのは本当。
こんな曲が入るわけがないって言われて、ラジオ局に行ってましたね。
レコード会社といざこざがあったのは本当。実際にレコード会社を辞めている。わかりやすく1人の重役を悪人にした方が映画として描きやすいのでそこは脚色です。
後半で出て来たフレディに外で活動するようにそそのかした嫌味なマネージャー、あのキャラは、実際にいた人物ですよね。「ロケットマン(2019)」も出ている。嫌な役やった。
ジョン・リードの方ね。
あの辺の音楽のテーマの作品って多くないですか?
前は「グレイテスト・ショーマン(2018)」
「アリー/スター誕生(2018)」
「エルヴィス(2022)」も最近です。
今度は「マイケル(2025)」ね、伝記映画。実際にマイケルの甥っ子がマイケル役。世界的なシンガーって、悲劇的な運命が多いのですかね。
平穏な人生もあるはずやけど、物語として悲劇に焦点が当たるのかもしれない。
クイーンはいろんな映画に使われていますね。「スーサイド・スクワッド(2022)」で、「# Bohemian Rhapsody」、「アトミック・ブロンド(2017)」で、デヴィッド・ボウイとの共作「# Under Pressure」。最近だったら、「MEGザモンスター2(2023)」にも使われていました。僕は「ベイビー・ドライバー(2017)」の「# Brighton Rock」が好きです。めちゃくちゃテンションが上がります。
「ボヘミアン・ラプソディ」は、LIVEで使われている曲の歌詞がフレディの人生に重なっているのが上手い、LIVEと映画の化学反応が生まれている。
誰かのファンになって追いかけていくのは、スターの人生の物語と伴走するという感じがするね。その人のバックボーンを共有している。それが映画に昇華されていく。
映画の2時間で、即席ファンになって、LIVE映像を観る。
映画のテーマは家族でもあるので、思い入れが変わる。
家族ですか?
家族という視点で描いて、肉親との絆もあるけど、バンドメンバーっていう繋がりも家族。観ている側は感情移入をして家族がLIVEの一大ステージで歌っているんだという気持ちになる。そのあたりの脚色が上手かったな。
ギターが、ブライアン・メイでしたっけ。冒頭20世紀フォックスのファンファーレを弾いているんですよね。
ギターバージョンで。
オープニングの後、フレディが朝、目覚める。みんながLIVE開催に向けて動いている。そこに流れる「# 愛のすべてを」が好きなんです。あの始まりが良かった。
僕に愛すべき人を見つけてくれって唄う。
ラブソングだけど、人生の大事な人を探し求めている歌でした。
検分役の音楽噺 ♫
ロックに疎い僕ですが、『ボヘミアン・ラプソディ』は興味深く観ました。
というのも1980年のSF映画『フラッシュ・ゴードン』が大好きで、その音楽をクイーンが担当していたからです。
ただ、劇中『フラッシュ~』に関するシークエンスがまったくなかったのは残念でしたが、それはさておき・・・(笑)
昨年、『フラッシュ~』がリバイバル上映されたのも、『ボへミアン~』のヒットの影響でしょう。
そこで、劇伴マニアとしては長年気になっていたのは、作曲家ハワード・ブレイクとの関わりなのです。
『フラッシュ~』のオープニング・クレジットにも、クイーンのアルバムにも彼の名前があります。
ハワード・ブレイクはイギリスの作曲家で、レイモンド・ブリックスの絵本を元にしたアニメーション映画『スノーマン』(82)
の音楽が特に有名でしょう。
クイーンと彼の関係は、昨年『フラッシュ~』のリバイバル上映に合わせて出版された『フラッシュ~』のメイキング本に記述があり、
ようやくハッキリしました。
監督のマイク・ホッジスは、元々ピンク・フロイドを音楽担当にするつもりが、プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスの鶴の一声で
クイーンに決まったとのこと(とはいえラウレンティス自身、クイーンが何たるや知らなかったそうな)。
メンバーそれぞれが自分が好きな場面の曲を担当する、という方法を取ったそうで、それが元でメンバーの関係性が悪くなったこともあったとブライアン・メイは語っています。
メンバーそれぞれが楽曲を作っても、ヴォーカルはフレディ・マーキュリーなので、彼が興味が無ければレコーディングの場からいなくなったそうで・・・。
ブライアンが作ったエンドロールを飾る「ザ・ヒーロー」(個人的にテーマ曲よりもお気に入り)にしても、高音をメインとするナンバーだったので
「僕の喉から血を流させるのか」
とフレディは文句を言ったそうです。
結局、全部で45分の楽曲をクイーンは作ったものの、それでは2時間近くある本編ではまだまだ足らない。
追加音楽の作曲として、クイーン側からある作曲家を紹介されたものの、その人はまったく仕事ができなかったので即却下。
そこで、急遽、白羽の矢が立ったのがイギリスで映画、舞台等で活躍していたハワード・ブレイクでした。
でも、彼に与えられた作曲期間は10日程度。それでもクイーンの楽曲のアレンジやオーケストラのセッション等々、
音楽に関することはすべてこなしたそうです。
クイーンのメンバーとも良い関係が築けて、ブライアンやフレディが鼻歌でメロディを歌うと、ハワードはそれをすぐにピアノで弾いて楽譜に起こしていく。
これにはブライアンもフレディも驚いていたとのこと。
それでも、仕事を終えたハワードは、疲労がたたって肺炎になったそうです。
クイーンによる『フラッシュ~』のアルバムは何度も再販されていますが、ハワードによる劇伴だけを収録したサントラも
過去に一度だけリリースされています。
そこには、劇中で使用されなかったものも含め、ハワードがいかにクイーンのメンバーによるナンバーを
大事にしつつ作曲していたかを伺い知ることができます。
ライヴエイド(LIVE AID)
「1億人の飢餓を救う」というスローガンの下、「アフリカ難民救済」を目的として、1985年7月13日に行われた、20世紀最大のチャリティーコンサート。
「ウッドストック」のをはるかに超越した規模となった。
参加したミュージシャンは、
コールドストリームガーズ軍楽隊
ステイタス・クォー
ザ・スタイル・カウンシル
ブームタウン・ラッツ
アダム・アント
ウルトラヴォックス
スパンダー・バレエ
エルヴィス・コステロ
ニック・カーショウ
シャーデー、スティング
フィル・コリンズ
ハワード・ジョーンズ
ブライアン・フェリー
デヴィッド・ギルモア(ピンク・フロイド)
ポール・ヤング
アリソン・モイエ
U2
ダイアー・ストレイツ
クイーン
デヴィッド・ボウイ
ザ・フー
エルトン・ジョン
キキ・ディー
ワム!
フレディ・マーキュリー&ブライアン・メイ
ポール・マッカートニー。
映画 「峠 最後のサムライ」 領民の運命と侍の使命
監督・脚色:小泉堯史
原作:司馬遼太郎
公開:2022年
〈Story〉
1867年(慶応三年)、十五代将軍・徳川慶喜は政権返上を明治天皇へ奏上する。
越後国の長岡藩では、家老の河井継之助が藩兵に大砲術を訓練し、世界最新鋭のガットリング機関砲を買い入れていた。
継之助は世界情勢に詳しく、福澤諭吉らの動向にも目を配る知識人であり、武士の世が滅びることを予見していた。芸者遊びに愛妻を連れ、二人は楽しんで三味で踊った。
王政復古により政権を握った薩摩の軍勢は、慶喜の首を獲ろうと江戸ヘ迫り、日本は佐幕派と勤王派に二分して戊辰戦争が勃発する。長岡藩士たちの意見は勤王と佐幕に二分していたが、大殿の牧野忠恭は、徳川家を見捨てる意思はなかった。
継之助の狙いは、あくまで不戦と長岡藩の自主独立にあった。彼は東軍の主翼である会津藩と西軍の間を取り持ち、話し合いによる解決を望んだ。
1868年(慶応4年)5月2日(旧暦)、小千谷まで迫る西軍の陣地に継之助は出向く。西軍が要求する軍費や兵の提供には応じぬまま、継之助は東軍の諸藩を説得すると提案。深夜まで頭を下げ続け、臆病と揶揄されつつも粘ったが、銃剣で追われた継之助は戦いを覚悟するのだった。。。
司馬遼太郎の小説では「峠」が一番好きです。
涙腺が危なくなった小説が二つだけあって。。。
二つだけ、ふふ。
一つが「峠」。もう一つが太宰治の「津軽」です。
「峠」の主人公、河井継之介に影響されたのは、入社当時かな。そのあと夢中になった。
のめり込んでしまいそうな。
司馬遼太郎が造形した河井継之介だけどね。
小説と映画は違いましたか。
小説のボリュームとダイジェスト化された映像作品は違うものだからね。違いを探しても仕方ないし。映画は映画。
「峠」の時代背景は、大政奉還で、15代将軍の慶喜が、徳川政権を朝廷に返します。幕藩体制が危なくなってきて、各地で事件が起きて、日本全体の治安を収めるには政権を返した方がいいと判断をしました。
長州と薩摩は、倒幕しないと駄目だと、明治政府を樹立する。
天皇を政治の中心に据える。「明治」は、明るい方に向いて世を治める。治世者は南を向いて政治をする、そういう考え方です。薩長軍は諸藩を屈服させていって、北の方が残るんですね。北へ向かって進んで行く。そして、河井継之助がいたのが新潟の長岡藩です。
継之助は、戦争をするんじゃなくて、スイスのような中立国でありたいって思っている。徳川家への忠誠心がある。薩長が徳川家を罪人のように扱って、倒幕しようとするのは違うと思っています。
継之助と殿様の二人の考えは、今は侍が中心の時代ではなくて、町人や農民、その領民たちの平和を守ることが一番。だから戦わずに、話し合いで収めたい。
討幕派の狙いは大きな勢力を持っている会津藩や米沢藩だけども、途中に長岡藩がある。
長岡藩は外国との交流もあって、継之助は世界を見ています。外国からガトリング銃を手に入れる。連射ができる銃です。それは戦うための武器じゃなくて万が一のときに領民を守るため。
継之助は愛妻家で、奥さんのおすが(松たか子)に
「明日いいところへ遊びに行こう」と誘う。山でも連れて行ってもらえるのかなと思ったら、芸者遊びだった。揚げ屋さんに行って、芸者さんを呼ぶ。
奥さんがこんなとこは女性が来る場所じゃないって言うと、お酒を飲んで歌って踊ればいいって、奥さんと一緒に芸者遊びをする。泣かせるシーンです。
その揚げ屋さんに先に継之助が着くと、床の間にカラスの掛け字(掛け軸)が掛かっている。若い仲居(芳根京子)とお話をする。継之助は家老でも、娘を相手に対等に話をする。継之助はカラスが好きだって言う、なんでかって訊くと、
「カラスは夕日に向かってまっすぐに飛ぶ。その覚悟が大事や」って言う。
芸者遊びからの帰り道、藩の若い連中が待ち構えている。奥さんを帰らして、その若い侍らと対峙する。彼らは覆面をしている。継之助は
「顔を出して堂々と言いたいことを言え」。若侍たちは
「藩を守るために、西側につくべきだ、いつまでも徳川への忠誠を尽くす時代じゃない」
「忠誠心を捨てるのは武士じゃない。戦争になれば西軍と戦う覚悟を持って生きろ」と諭す。
西軍が新潟に入ってくる。そこで、継之助は話し合いに行く。
土佐藩士の岩村精一郎(吉岡秀隆)は長岡藩に対して、まず資金と兵隊を出せって言う。
継之助は、貧しい藩なので、それは堪忍してほしい。お金もないし、調達できるものはない。まず対話をしたいと言うのを、岩村は、
「お金も出せへん、兵隊も出せへん、その上で話し合いとはなんや」と追い返す。でも、継之助は門の外で一晩粘ります。何とか取り次いでもらおうとする。それも叶わず、戦わざるを得ない状況(戊辰戦争)となっていく。
西軍との戦争になって、峠が戦術の要となって取り合いになります。西軍が大砲を撃ってくるのを何とか死守をする。城下の後ろは信濃川が守っている。その信濃川を西軍が渡って、城を取られちゃうんですね。
城はただの拠点、焼き討ちされるよりは、撤退してまた奪い返せばいいっていうのが継之助の考え方。殿を先に信頼できる会津藩に逃がして、子息もスイスに逃す。領民を残して撤退したので、城下を取り戻さないといけない。
西軍が拠点を押さえているので、沼を渡る計画を立てます。渡るのは不可能と言われる八町沼を知り尽くしいている男がいる。その男の道案内で、夜中に渡る。さて、どうなるかという物語。
継之助の奥さん思いが分かるのが、スイスから取り寄せたオルゴールをプレゼントする場面。
司馬遼太郎は大阪の小さな新聞社や京都の新聞社で記者として働いていた。時代小説ではなく、史実小説を書く作家。細かいところまで取材をするので、メインストリームから脱線したりもします。
愛妻家は本当だった?
本当だったと思います。奥さんとお母さんは逃がしています。
出家してましたよね。
菩提寺に匿ってもらう、身の安全のために剃髪して無抵抗を示します。
和尚さんに河井継之助の妻として生きていくのは大変だと言われていました。それって西軍と戦ってしまったからですね。
体制が変わると逆賊になります。旧藩体制下の家族も追われますよね。
長岡藩は地理的にも中間だから、中立っていう考えが生まれる。
こぢんまりとした藩ですね。東に会津藩、その北に米沢藩がある。長岡藩は途中にあって継之助は武装中立という立場を貫く。
武力では信念は変えられないっていうのが、継之助の考え方でした。
旗色が悪いなって思ったら、寝返りも考える。自分一人の運命ではないので、みんなが生き残れる道を選びそう。どの視点で正解を出すかは難しいですね。裏切った藩からみれば、自分たちの生き残りをかけた決断です。
どっちにも正義があるんだね。
最初に徳川慶喜が平和のために大政奉還をしても、結局戦いが生まれてしまったのが切ないって思いました。セリフでもそんな思いを言っていましたね。
薩摩と長州は武力で幕府を倒して新体制を作るという正義、継之助は領民の安寧を軸に考える正義。
継之助が城下に戻って来た時に農家が焼かれていました。畑を荒らされて、家族を殺されて、ポツンと立っているお爺さん(山本學)に継之助が、
「申し訳なかった」って謝る。
そうして時代は変わっていくんですね。
今のお話を聞いていて思ったのは、継之助が太陽に向かって飛ぶカラスを好きだっていうくだりで、太陽が明治のメタファーだと思いました。
そうですよね。カラスは幕府終焉のメタファーでもあるし、継之助のメタファーでもあるし、夕日が時代のメタファーかもしれない。
ガトリング砲が面白かったです。
すごい武器かと思ったら、大したことなかった。
そうなんですか。
門に1台だけ設置して、兵士が撃っている。ハンドルを回して、ポンポンポンポンと撃っていると、継之助が
「そうじゃない、もっと腰を入れるんやぞ」って自分が代わって撃つけど、攻められましたもんね。
ガトリング砲を一丁だけ?
一台だけで、そこはクスッとしちゃいました。
継之助の引用した歌が
「形こそ深山隠れの朽木なれ、心は花になさばなりなん」
木が朽ちて、形がなくなっても、心だけは花になる。
元々ある詩ですか?
前からある歌ですね。(古今和歌集 巻第17 雑上 けんげい法師)
継之助の信念がそこにあった。
映画的には時代劇っぽさがあったなと思いました。時代劇あるあるなのか、急にズームする感じ。あえてそうしているのかなって。
カメラワークで見栄を切る、感じやね。
ところで、家臣の話があまり出てこないですね。
主な登場人物が継之助の周りに限られています。お父さんが歳の割に頑張っている。
喧嘩やったら任せろっていう感じですね。
お父さん役が田中泯。ダンサーね。
ダンサー?
元々ダンサーです
映画によく出ていますか?
年配になってからですね。
佐々木蔵之介が、出ていました。
佐々木蔵之介が医師(小山良運)。その息子が最初の方で絵を描いていました。独特な自分流の絵ですけれども、
「絵描きになったらいいんじゃないか。日本じゃなくて海外に行きなさい」と継之助が言う。海外に逃してあげると良運に話をする。
佐々木蔵之介は武士ではないですね。
小説ではね、最期に良運と継之助が話をする場面で涙腺が危うくなります。
あー、ポロリ。
歴史の結末が分かっているので、奥さんと芸者遊びをしているシーンが儚いですよね。
この後にこうなるのにって。
手を繋いで帰るのも良かったですね。かわいらしかった。
一緒に歩こうなんて、あの時代には考えられない。
他にはないんじゃないですか。
継之助は、時代を先取りしています。士農工商のヒエラルキーが時代遅れになるのが分かっていた。海外の状況が分かっていたから、文化が変わるのが見えていたと思いますね。
(対話日:2024年3月19日)