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映画をこよなく愛する素人のおしゃべりです。
皆様の観たい映画がひとつでも見つかれば嬉しいかぎりです。
映画 「アイ・アム・サム」 7歳の知能の父と7歳になる娘の七難九厄
監督:ジェシー・ネルソン
脚本:クリスティン・ジョンソン、ジェシー・ネルソン
日本公開:2002年
〈Story〉
サムは知的障害により7歳児と同等の知能。交際相手が産んだ娘にルーシー・ダイアモンドと名付ける。相手は逃げて一人で育てることになる。
ルーシーが7歳になった時、サムはルーシーを育てる養育能力を疑われ親権裁判となる。
サムは弁護をリタに依頼する。リタは息子との距離に悩みつつ、サムの弁護を引き受けるのだった。。。
ショーン・ペンが大好きなんです。
この物語の結構では底辺にビートルズの楽曲がきらきらと散りばめられています。
ショーン・ペンが主人公のサムです。知的障害のお父さんで7歳ぐらいの知能しかありません。ビートルズが大好きで、難しい話はビートルズになぞらえて説明をする。そういうシーンがあちらこちらにあって、監督がビートルズ好きなのが伺えるんです。
娘の名前もね。
そうですね。ルーシーっていう名前は「# Lucy in the Sky with Diamonds」から取っているんです。この曲が発表された当時、楽曲名にLSDが隠されていると言われました。ルーシーが空の上でダイヤモンドと一緒に輝いているという歌詞も薬物を彷彿とさせて、そういう噂があったんです。サムは気にせずここから名前をつける。
ルーシーが生まれた時、お母さんは愛情を注げられなくて逃げてしまいます。
サムだけでは育児が大変だけど、お向かいに中年のおばさん(ダイアン・ウィースト)が住んでいて手助けをしてくれて、赤ちゃんを育ているという生活です。このおばさんは外出恐怖症で外に出られないのにサムの家は来てくれて、ルーシーの面倒を見てくれます。
ルーシーが6歳に成長します。学校で
「お前のお父さんおかしいよ」
と噂をされて、ルーシーはだんだん気づきます。
「うちのお父さんは他のお父さんと違うよね」
ってサムに言ってしまう。サムが傷つくと、ルーシーは察して、
「だけどお父さんといつも遊べるからそれがいいんだ」
と繕う。
ルーシーは、サムが親として不足している部分を補うように成長して、賢くなっていくんですね。
しっかりもの。
ルーシーが学校で勉強するのをやめちゃうんですよ。学校の先生がルーシーの成長に不安を感じて
「お父さんが7歳の知能で、あなたが7歳になった時って家庭はどうなるの」
と話をする。
サムはルーシーが寝付けない時に絵本を読む。ルーシーが成長して絵本が変わっていくとサムが読みづらくなるんですよ。言葉が難しくなってきた時、ルーシーはお父さんが読めない言葉を勉強したくないと思ったんですね。
とうとう7歳の誕生日がくる。サムはルーシーの友達も呼んでお誕生日会を開く。みんなでルーシーをびっくりさせたい。サムは興奮して子供のひとりを押しちゃったりする。
友達のひとりがルーシーに
「サムは君の本当のお父さんじゃない」
と言って、ルーシーはびっくりして飛び出してしまう。そこに児童福祉施設の相談員が様子を見に来ていた。この事があってサムに養育を任せられないと判断される。そしてサムに養育能力あるのかを裁判で争うことになって、係争中ルーシーは施設に預けられる。
この映画は3段構成になっているんですよ。今のお話のとこまでが第一幕で、ここから裁判の話になってきます。
サムは弁護士を雇わないといけないので、友達からよくできると聞いて、弁護士リタに会いに行くんですよ。リタがミシェル・ファイファーです。リタは福祉的な弁護なんて普段はしないのに仲間の手前、無償の弁護を引き受けてしまうんですね。
サムにはちゃんと証言してくれる人がいないし、サムも変な証言をするだろうから、里親に預ける方がいいとリタが助言すると、サムがビートルズの話をする。
「ポールが「#ミッシェル」を書いた時、出だしの部分だけを作ってジョンに渡した。ジョンは、「I love you,I love you,I love you」と書いた。世界は愛でできているんだ。自分は愛情だったら誰にも負けない」
そうして裁判になります。唯一ちゃんとした証言をしてくれる人が向かいに住んでいるおばさん、でも外出恐怖症。それをやっと証言の場に出てもらうんです。
検事が
「サムは掛け算ができますか」
って訊くと、おばさんは、
「掛け算とか国名とか大統領の名前とか、そんなことが大事なんじゃなくて、子供と一緒に過ごして思い出を作ることが親のやるべき一番大事なことだ」
と話す。
おばさんにも父親との辛い過去があって、検事に指摘され傷つけられてしまう。
サムが証言をする日がきます。
サムはスターバックスで働いている。今までは裏方をしていたけどコーヒーを作る係になって、あれこれ注文されて服を汚しちゃったりして、出発時間に間に合わなくなる。証言の時間に遅刻しちゃうんですよ。
検事にそのことを批難されると、サムはしどろもどろになって、自分は父親の資格がないと言ってしまう。
結局、ルーシーは里親が預かることになるんです。そこまでが第二幕。
ルーシーは「父親から何も得るものがなくて不足を感じているか」と訊かれる。
そこでルーシーは、
「# All You Need Is Love(愛が全てだ)」
引用するんですね。
サムはルーシーに面会日しか会いに行けない。誕生日にサムが来るのをルーシーがずっと待っていると、サムは里親とルーシーが一緒に過ごしているところを見てそのまま帰ってしまうんですよ。
リタがサムの様子を見に行くとサムは部屋の奥でこもっている。
リタが
「悩んでいるのはあなただけじゃない。自分は気丈に見えても、旦那とうまくいってないし、息子は口をきいてくれない。みんな悩んで苦しいんだ」
サムがね、ビートルズを引用して
「ジョージ・ハリスンは自分には作曲の才能がないと思っていた。でもアルバム「アビイ・ロード」の名曲「# Here Comes the Sun」を書いたのがジョージ・ハリスンだ。リタだって素晴らしい弁護士でお母さんだ」
サムは元気になると里親の近所にアパートを借りて引っ越すんですよ。ピザの配達や犬の散歩のアルバイトを始めて、里親の家の前をうろうろする。ルーシーは喜んで毎晩、家を抜け出してサムに会いに行くようになっちゃうんですね。サムは嬉しいけどもそのたびに里親の所へ返しに行って
「ルーシーは眠れないので出かけるんだと思う。眠れない時には絵本を読んであげて大好きなマフィンをあげたら眠ります」
ってアドバイスをしてあげる。
ある日、リタがサムのアパートに来てサムのおかげで息子と喋れるようになったと報告する。
裁判の最終日が近づいてくる。里親の女性がローラー・ダンです。
「ジュラシック・パーク(1993)」のヒロイン。
僕は「ツイン・ピークス」が印象的です。
さて、その結末はどうなるのか。。。という作品です。
“イノセントな人” 対 “社会”、そんな構図の感じがしました。
同じ典型には、昔スタインベックが書いた小説「二十日鼠と人間(1992)」が映画になった。映画「スリング・ブレイド(1997)」の主演ビリー・ボブ・ソーントンもイノセントな役でした。
また見方を変えると、親の子供への無償の愛という類型だと、「ステラ・ダラス(1925、1938、1990)」がありました。これは3回ぐらい映画になっているんです。最初は無声映画ですよ。娘が幸せになる道に進むために、お母さんが娘を取り戻すのを諦めて身を引く悲しい話です。他には「ライフ・イズ・ビューティフル(1999)」とか。
イタリアの戦争映画。
あれも子供を守るためですね。
お父さんが犠牲になる。
親の無償の愛は、社会をはるかに超越するような気もしますよね。「アイ・アム・サム」では、裁判で負けている。そこで戦おうとしない。
情に訴えかけるというか。
愛しかないとビートルズを引用するのは、理屈ではないサムの生きざまです。
ルーシーがダコタ・ファニングです。
そうそう。やたらかわいいと思った。「宇宙戦争」に出ていたみたいですね。観たことないんですけど、それもヒロインですか。
ヒーローのトム・クルーズの娘です。
宇宙人を見た時に絶叫するダコタ・ファニングが印象的。
「イコライザー THE FINAL(2023)」にFBIの捜査官役で出ていましたね。
爆死しかけた人ね。
ショーン・ペンって悪役が多いイメージがあったんで、びっくりしましたね。
ショーン・ペンは制作に関わっていて、弟も楽曲に携わっています。ビートルズは全部カバー曲なんですよ。
オリジナルじゃないんですか。権利問題ですかね。
いろいろなボーカリストにカバーしてもらって、すごいアルバムになりました。
(エイミー・マン & マイケル・ペン、サラ・マクラクラン、ルーファス・ウェインライト、ザ・ウォールフラワーズ、エディ・ヴェダー、ベン・ハーパー、シェリル・クロウ、ベン・フォールズ、ザ・ヴァインズ、ステレオフォニックス、ブラック・クロウズ、チョコレート・ジーニアス、ヘザー・ノヴァ、ハウイ・デイ、ポール・ウェスターバーグ、グランダディ、ニック・ケイヴ)
僕はビートルズはあまり詳しくないですけど、アルバム「Abbey Road」のジャケットで有名な横断歩道を渡っているオマージュがありますね。サムが友人たちと一緒に横断歩道を渡る。
電気屋を出てみんなで横断歩道を渡って帰る場面ですね。
電気屋では1人が風船をもらったらみんなが欲しがってみんなで風船をもらって帰る。
友人役は実際に障害のある方たちが出ていたそうです。
ショーン・ペンは違和感がなかったね。
本当ですね。こういう役って「レインマン(1989)」のダスティン・ホフマンもそうです。
「レインマン」は逆も観たかったな。トム・クルーズがあの役で。。。
想像できない。
サムがスターバックスでアルバイトしているシーンで、お皿の中にカラフルな小袋がバラバラに入っているんですよ。サムはそれを色ごとに分けないと気が済まない。笑っちゃったのがサムとリタが一緒にご飯食べるシーンで、サムがグリーンピースととうもろこしを見て色がごちゃまぜで嫌だから置き直すって言うんですよ。それを見たリタが、
「そんなわがまま言っては駄目」
その後、店員に
「オムレツを頂戴、白身だけでヘルシーにして」
ってわがままな注文をするのが面白かった。
サムはスターバックスでは、お客さんのところへ行って、
「グッドチョイス。グッドチョイス、いいコーヒー選んだね」
って褒める。
愛らしい。
お客様がみんなニコニコしていてね。
スターバックスの仕事では昇進があるんですか。
裁判で有利にと、店長が気を利かせました。
やさしい。最初、昇進は考えとくって言っていたけど配慮してくれたんだ。
スターバックスもその当時から障害者を積極的に雇う制度で働けていたんじゃないですかね。(リハビリテーション法、障害を持つアメリカ人法)
向かい側に住んでいたおばちゃん、あの人は後半に活躍の場はあるんですか?
裁判の時までかな。
せっかく来てくれたのに検事に傷つけられて帰ります。
冒頭でお母さんが逃げるシーンが悲しくて見てられなくてね。
サムが赤ちゃんを抱えていて、お母さんが
「バスが行っちゃう、止めて、止めて」
サムがバスを止めている間に、お母さんがどっかへ行っちゃうのがひどい。
お母さんはそれっきり?
リタは最初、傲慢で嫌な弁護士ですね。
「なんで、タダでそんなことしなきゃいけないのよ」
そしてサムと交流することで、彼女自身も変わってくるわけですよ。
観たくなりましたけどU-NEXしかなかった。
ショーン・ペンは 「フラッグ・デイ 父を想う日(2021)」では娘さんとの交流を描いた映画で、ショーン・ペン演じるお父さんが爆弾魔で指名手配されていて、親子の縁が断絶している。監督もやっていますね。
ショーン・ペンは狂気っぽい役もできます。
「博士と狂人(2020)」がまさにそうです。狂人の方。博士がメル・ギブソン。
ミシェル・ファイファーを僕はあんまり意識してなかったんですけど、「アントマンシリーズ」に出ていた。
Eくん
年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。
サポさん
「ボヘミアン・ラプソディ」は10回以上鑑賞。そして、「ドラゴン×マッハ!」もお気に入り。主に洋画とアジアアクション映画に照準を合わせて、今日もシネマを巡る。
キネ娘さん
卒業論文のために映画の観客について研究したことも。ハートフルな作品からホラーまで守備範囲が広い。グレーテスト・シネマ・ウーマンである。
検分役
映画と映画音楽マニア。所有サントラは2000タイトルまで数えたが、以後更新中。洋画は『ブルーベルベット』(86)を劇場で10回。邦画は『ひとくず』(19)を劇場で80回。好きな映画はとことん追う。
夕暮係
小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で劇場デビュー。大興奮も束の間、開演時に照明が消え気分が悪くなって退場。初鑑賞は約3分となった。
映画 「マグニフィセント・セブン」 雇われた正義の7人
監督:アントワーン・フークア
脚本 :ニック・ピゾラット、リチャード・ウェンク
原作 :『七人の侍』黒澤明、橋本忍、小国英雄
日本公開:2017年
〈Story〉
ローズ・クリーク近郊の金鉱を独占するため実業家のバーソロミュー・ボーグは住民たちを町から追い出そうと、不当に安い金額で土地を買うと、教会に放火し、抵抗した住民たちを見せしめに射殺する。夫マシューを殺されたカレンは、ボーグを倒すために助っ人を探しに町を出る。そして、委任執行官サム・チザムに助っ人を依頼する。チザムは興味なかっただが、標的がボーグだと知り依頼を引き受ける。彼はギャンブラーのファラデー、南北戦争時の知り合いロビショーと彼の相棒ビリー、手配中の殺人犯バスケス、ネイティブ殺しのジャックを仲間に引き入れローズ・クリークに向かうのだった。。。。
「マグニフィセント・セブン(2017)」はアマゾン・プライムで久しぶりに観ました。
自分も映画館で観てから7年ぶり。
そうですよね。クリス・プラット好きの友達と一緒に塚口サンサン劇場の応援上映を観に行ったんです。おもしろいのが銃の持ち込みOKだったんです。おもちゃの銃で悪役を撃っていい上映スタイルで楽しかったんです。
クラッカーもやるの?
塚口サンサン劇場はクラッカーもOKでした。
ファンの心を掴んでいて、「バーフバリ 伝説誕生(2017)」もめっちゃ良かった。売っている食べ物も「バーフバリ」の時は謎のインド料理で、「マグニフィセント・セブン」の時は密造酒(瓶入りのジュース)がありました。
西部劇っぽい。
それっぽい感じのコスプレもOK。そういう思い入れもあります。
未だに「七人の侍(1954)」を観ていないんですよ。
「荒野の七人」も観ていないです。
スティーブ・マックイーンですよ。
僕はジェームズ・コバーン推し。
「荒野の七人」とプロットは同じだけどお話が違いましたね。
「荒野の七人」とは背景が違いますか?
「荒野の七人」の主役7人は清廉潔白ではないんです。ユル・ブリンナーがしっかり者で他の人は賞金が目当てだったりとみんな魂胆がある。それが農民たちと関わっていくうちに、だんだん変わっていく。
「マグニフィセント・セブン」は正義がテーマ。
特にデンゼル・ワシントンね。
保安官チザム。なんちゃらの州のなんちゃって肩書きが長かった。(7つの州の委任執行官)
元々南北戦争で北軍に所属していた。
最初の登場は指名手配犯を探しに酒場に入ってくる。と、そこにファラデーがいる。
ファラデーがクリス・プラットで、かっこいい。トランプで手品をする。
キャラがみんな立っていますね。
黒人の人も、ネイティブアメリカンやアジア系の人もいる。
寄せ集めの感じです。
「荒野の七人」は白人ばっかでした。
メキシコ人の犯罪者バスケスをチザムが追っていて、
「仲間になってくれたら俺は追わない」と。
そして、7人が集まっていく。私はいろんなキャラ同士の関係性が好きです。
ポリフォニックな見方やね。
例えば?
ファラデーとバスケスは犬猿の仲で、ファラデーはバスケスをメキシコ人とからかって、バスケスも「グエロ」と言い返す。その「グエロ」がいい意味だと聞いてから仲良くなる。
後の戦いでファラデーが撃たれた時にバスケスがめちゃくちゃ怒る。
ロビショー(イーサン・ホーク)とビリー(イ・ビョンホン)も仲がいい。
補い合っている感じがします。ビリーは東洋人で差別されていた過去がある。ロビショーはそんなことを気にせず、ビリーからグッティって呼ばれています。
「グッティは偏見の中での処世術を教えてくれる」とビリー。
ロビショーも
「ビリーがいると、まともでいられるんだ」って、信頼が厚い。
イ・ビョンホンはアジア系なのに西部劇に出ても違和感がないです。ナイフ使いですよね。
銃も使える。他には大男のジャック・ホーン。
クマさん
インディアン狩りをして生活をしている人で、インディアンがいなくなって仕事がなくなる。失業中のジャックをチザム達が戦いに誘う。最初は断るんです。その夜にみんなでキャンプをしていて翌朝に気づいたらジャックがいて、インディアンのレッドを狩ろうとつけて来ていたんです。
レッドもインディアンの中では異端で集団から外れて1人で生きていて、チザムはインディアンの言葉が分かるので正義のために戦うんだと話して、狩りたての鹿の肝を勧めて仲間になる。
ジャックとレッドは「狩る・狩られるの存在」でありながらチームで戦っていくのがいいです。
最後の戦いの前にロビショーがPTSDで戦えないって去ってしまう時に初めてレッドが白人の言葉を喋る。
喋れんのかって。
インディアンとか人種を超えてチームの関係性もできている。ジャックもレッドと肩を組んで語りたいことがあったから、と喜んでいます。
いいシーン。呉越同舟だったのが、戦いを通して戦友になる。
ロビショーは南北戦争の南軍の狙撃手だった。戦争の悪夢に悩まされていて、町の人たちに銃の撃ち方を教える時に、銃を撃てなくなっていることが分かるんですよ。それで去ってしまう。でも最後の戦いで戻って来るのが胸熱の展開。
ロビショーが農民たちに銃を指導してもみんな下手くそ。
「ロビショーが見本を見せろ」とファラデーが鎌をかける。大丈夫かと思ったら、ロビショーは正確に的を撃つ。的は普通に撃てるけど、人が相手だとトラウマとなる。それをビリーにだけ打ち明けていた。
ビリーもそれを知っていて庇うんです。
キャラクターの話から入りました。あらすじは、教会にエマと町の住民たちが集まっているところから始まって、町が実業家のボーグに支配されることに反抗する人たちです。そこにボーグが来る。
「金を払うから土地を明け渡せ、3週間後までに同意しろよ」とおどしてその教会を焼いて帰る。街の人たちが見せしめに殺されて、その中にエマの夫もいた。
町を守るためにエマの助っ人探しの旅が始まります。最初がチザム、そしてファラデー。ファラデーは二枚目系のキャラクター。
軽い。
スティーブ・マックイーンのイメージかな。
そうそう、その役ですね。
手品をして、2丁拳銃を使って自分の銃に触られることが嫌いなんです。拳銃には女の人の名前がついていて、それに触った人は殺される。
そこからロビショーやビリーが仲間になっていく。
チザムに妹がいたことが、物語の中盤ぐらいでロビショーと話をしている時に明かされます。
「生きていたら、エマと同じぐらいの歳」って
ロビショーがチザムに街のために戦うのかと訊くんです。自分の過去との戦いじゃないかと。そこもはっきりは答えない。そういう思いが含まれていたりするんですよ
最後に明かされるわけね。
チザムたち7人は戦う準備をしないといけない。町にはボーグの仲間の保安官がいて、チザムとビリーがそこ行って宣戦布告をする。
私はそのシーンが好きで
保安官がチザムに
「銃を置け」て言うとチザムが、
「俺は喜んで置くけど仲間たちはそうはいかないからな」
みんなが後ろにいる。そして保安官たちを追い出すんです。チザムがその中のひとりに戦いに来いと伝えさせる。3週間後だったのが1週間で来ることになって、戦いの準備を急がないといけなくなる。それぞれが町の人たちに戦いを教える。
最後の戦いでは、亡くなる人が多いのが切ないところです。
生き残ったのは3人だっけ。
チザムとバスケスとレッドだけ。
「七人の侍」と一緒です。(勘兵衛[志村喬]、七郎次[加東大介]、勝四郎[木村功])
「荒野の7人」はどうやったかな。(クリス[ユル・ブリンナー]、ヴィン[スティーブ・マックイーン]、チコ[ホルスト・ブッフホルツ])
その設定が生きているんですね。
ファラデーが死ぬところは涙なしでは観られないな。めちゃくちゃかっこいい。
ガトリング砲を封じるためにチザムに援護されながらひとりで行って、結局撃たれて、ボロボロの状態で敵の前で膝をついてしまう。タバコを吸おうとするけど火がつかないんです。敵が勇姿を認めて火をつけてあげるんですよ。そして、死んだと思わせて、ダイナマイトに火をつけてガトリング砲を爆破する。
「マグニフィセント・セブン」は戦争映画と言ってもいいぐらい終盤派手でダイナマイトでボーグたちの手下を木っ端微塵にしたり、ガトリング砲でバっとそこらじゅう穴だらけにする。最後のボーグとチザムの1対1の戦いもかっこ良かったですよ。
テンゼル・ワシントンは絶対的な強さを感じるね。
強そうですもんね。
今回吹き替えで観ました。大塚明夫の声は、実質「イコライザ」だったんですよね。
声がめっちゃハマっていますね。渋すぎますね。
監督はアントワーン・フークア、「イコライザー・シリーズ」と同じですね。
最後はエマがボーグを殺します。
エマもすごいね。他の女の人や子供たちは隠れているのに、私は戦うって。
ラストに「荒野の七人」のテーマ曲がかかる。劇中それっぽい曲が流れるけど違う。最後の最後に「これこれ」って。
やっぱり土地争いですね、西部劇の骨格のひとつに土地争いがある。
ボーグは資本主義者で、考え方は現代的やなって。土地を有効に使ってお金を稼いで大きくする理屈は分かるけど、やり方が乱暴。街の人のことは考えないキャラクターですよね。
ボーグが会社の社長。「荒野の7人」やったら山賊。
イーライ・ウォラックですね。
「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」の悪役。
そう、あんな役ばっかり。
ボーグは周りの人に戦わせるんですよ。
経営者だもんね。
チザムは過去に妹と母親が殺された。殺したのはボーグの手下。
自らの手を汚してないですよね。汚い感じ。
手下にひとりインディアンがいるんです。彼も最後の戦いでレッドと対峙する。エマを襲っている時にレッドに撃たれて、「インディアンの恥」って言われる。
黒澤明の「用心棒」をイタリアでリメイクしたのが「荒野の用心棒」で、クリント・イーストウッドが主演です。
「荒野の7人」はリメイクする時に黒澤明に許可をとっていた。
「荒野の用心棒」は行き違いがあって、正式に許可を得ないまま作っちゃって、裁判沙汰になった経緯がある。監督のセルジオ・レオーネは黒澤明に手紙を書いて出していたらしい。
いいコンテンツですよね。流れ者が来ると、そこに二つの対立する組織がある。この話の骨格はいくらでも利用できます。
「マグニフィセント・セブン」の原型は「七人の侍」か。突き詰めると「桃太郎」ですよね。
確かに。
「七人の侍」の悪役ってどんなでしたっけ?
農民の土地を狙っている野武士です。
「マグニフィセント・セブン」では、参加する動機がもう少しドラマチックだったら、より一層盛り上がったかな。例えば、町民に昔の恩人がいたとか。
ファラデーは最初に馬を賭けで取られていた。その愛馬を買い戻すために仲間になったら、馬をあげるってチザムに言われる。簡単な男ですね。
キャストが豪華です。
イ・ビョンホンもすごいですね。
これは彼にとっての最初のハリウッドかな?
「GIジョー」がハリウッドデビューってあります。
「ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015)」にも出ていました。
「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ(2021)」は南海電鉄の吊り広告に岸和田城でロケしたってありました。でも話題になっていなかったな。
先日、ブラッド・ピットの映画の撮影に遭遇しました。ブラッド・ピットは見ていないんですよ。サーキットを見に行ったら、レースを観戦する人を撮影していたんですよ。私、ハリウッドデビューしたかもしれないです。はっはっは。
アップで抜かれているかも。
多分こんなちっちゃいと思います。
検分役の音楽噺 ♫
『マグニフィセント・セブン』(16)は西部劇の代表作『荒野の七人』(60)のリメイクです。
エルマー・バーンスティンによる『荒野の七人』のメインテーマは、西部劇のみならず映画音楽のスタンダードとしても知られる名曲。
『マグニフィセント~』では劇中では流れませんが、エンドロールでこの名曲が流れてきます。
では、本編のスコア(劇伴)を担当したのは誰か、ということになりますが、ジェームズ・ホーナーが劇中のスコアを担当していました。
ジェームズ・ホーナーは個人的にも好きな作曲家の一人で、最も有名な作品といえばなんといっても『タイタニック』(97)でしょう。
アカデミー賞では作曲賞、そしてセリーヌ・ディオンが歌った主題歌賞でダブル受賞したのもうなずける大ヒットでしたね。
ホーナーは80年代よりB級映画の音楽からキャリアをスタートさせましたが、そんな頃からシンフォニックなスコアで楽しませてくれていたので、ジョン・ウィリアムズやジェリー・ゴールドスミスの次の世代の第一人者としてファンの多い作曲家でした。
でした、という過去形になっているのは、残念ながら2015年に自身が操縦する飛行機が墜落し、帰らぬ人となったのです。
享年61歳といいますから、まだまだ活躍を楽しみにしていた矢先でした。
しかも、『マグニフィセント~』が彼の遺作でもあるのです。
作曲の構想を練っていて実際に幾つかのスコアを書いていたところだったようで、いわば未完成だったのを、彼のスタッフでもあったサイモン・フラングレンが追加作曲して完成に漕ぎ着けたのでした。
また、80年代にキャリアをスタートさせたホーナー、その頃の代表作が、『マグニフィセント~』と同じく『七人の侍』をテキストとしたSF映画『宇宙の7人』(80)というのも、なんという偶然!
『宇宙の7人』も壮大なシンフォニックスコアで、当時は凄い作曲家が出てきたと感動したものです。
あと有名なところでは、89年のアニメ映画『リトルフットの大冒険~謎の恐竜大陸』のスコアも担当しており、ダイアナ・ロスが歌った主題歌「イフ・ウィ・ホールド・オン・トゥゲザー」の作曲もホーナーです。
日本では某ドラマの主題歌に使われて思わぬ大ヒットになったのには驚きました。
担当作品は枚挙にいとまがありませんが、ベスト3を上げるなら『ロケッティア』(91)、『薔薇の名前』(86)、『ブレインストーム』(83)でしょうか。
他にもいい作品を残しているので、ぜひ調べて聴いていただきたいですね。
7人 映画の系譜
- 「白雪姫(1950)」
- 監督:デイヴィッド・ハンド
- 「七人の侍(1954)」
- 監督:黒澤明
- 「七人の無頼漢(1957)」
- 監督:バッド・ベティカー
- 「荒野の七人(1961)」
- 監督:ジョン・スタージェス
- 「七人の愚連隊(1964)」
- 監督:ゴードン・ダグラス
- 「黄金の七人(1966)」
- 監督:マルコ・ヴィカリオ
- 「博徒七人(1966)」
- 監督:小沢茂弘
- 「暁の7人(1976)」
- 監督:ルイス・ギルバート
- 「宇宙の7人(1981)」
- 監督:ジミー・T・ムラカミ
- 「地獄の七人(1984)」
- 監督:テッド・コッチェフ
- 「七人のおたく(1992)」
- 監督:山田大樹
- 「七人のマッハ!!!!!!!(2005)」
- 監督:パンナー・リットグライ
- 「七人の弔(2005)」
- 監督:ダンカン
- 「逆鱗組七人衆(2005)」
- 監督:市川徹
- 「龍三と七人の子分(2015)」
- 監督:北野武
- 「セブン・シスターズ(2017)」
- 監督:トミー・ウィルコラ
- 「七人樂隊(2020)」
- 監督:ジョニー・トー
- 「7人の女たち(2021)」
- 監督:アレッサンドロ・ジェノヴェージ
- 「雑魚どもよ、大志を抱け!(2022)」
- 監督:足立紳
- 「REBEL MOON: パート1 炎の子(2023)」
- 監督:ザック・スナイダー
- 「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師(2024)」
- 監督:上田慎一郎
(対話日:2024年6月6日)
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