(A面のつづき)
「シン・ゴジラ」 日本の政治家たちがゴジラと出逢う物語
監督:庵野秀明(総監督)
樋口真嗣(監督・特技監督)
脚本:庵野秀明
〈Story〉
11月3日8時30分頃、東京湾で大量の水蒸気が噴出し、東京湾アクアラインでトンネル崩落事故が発生する。
政府は、原因を海底火山か熱水噴出孔の発生と見て対応を進める。
内閣官房副長官矢口(長谷川博己)は、目撃報告や配信動画などから、巨大生物の存在を示唆するが、一笑に付される。
しかし、まもなく巨大生物の尻尾部分がテレビ報道されたことで、政府は認識を改めるが上陸は不可能という専門家の意見に反し、巨大生物は多摩川河口から遡上、蒲田で上陸、街を破壊しながら北進する。
「シン・ゴジラ(2016)」の凄さはゴジラの存在を知らない世界。過去作30作くらいあって、1作目以外の作品は劇中にすでにゴジラが出ている設定。たとえば2作目の「ゴジラの逆襲」は続編やから、ゴジラの存在を知っている。 「シン・ゴジラ」は、その設定がないのよ。ゴジラが認知されていない。「怪獣」という言葉が「シン・ゴジラ」の世界にはなくて「巨大不明生物」って呼ばれている。実際に未知の生物が出てきたら、さあ日本はどうなるというシミュレーション映画なので、リアリティが追求されている。
政治家が会議をするシーンが面白いよね。
ゴジラを倒すのに、過去の作品だったら「オキシジェン・デストロイヤー」という未来兵器が出てきたり、「スーパーX」という空飛ぶ要塞とか、非現実的なものが出てくる。 「シン・ゴジラ」の面白いのは現実にあるものを使う。無人の電車をゴジラに突っ込んで爆発させて、ゴジラが倒れると、コンクリートポンプ車で口に薬剤をぶちこんで凍らせる。
新幹線を使っていたね。(N700系新幹線2編成に爆弾を積んでいた)
新幹線が武器になるんですね。
日本ならではのアイテムなので、外国向けなのかなと思った。
ゴジラは何で来るんですか?
そこら辺はあまりはっきりとはしていない。
最初は違う怪獣がきたのかと思った。形が違うから。
形態が変化する。
僕は初見で、すぐゴジラって分かりましたよ。 それまでにハリウッドで作られたゴジラは公開されていたけど、日本のゴジラが12年ぶりやった。公開当時は話題になっていて、初日に観に行きました。いかにもゴジラが好きそうな人ばかり。
最終形態のゴジラの動きが野村萬斎さん。野村萬斎さんがゴジラ役やって公開初日に分かって、母親が野村萬斎さんのファンなので、 「野村萬斎さん出ているよ」って連れて行った。顔は出ないけど。
歩き方の原型が野村萬斎さん?
モーション・キャプチャー(注1)で動きを記録する。「シン・ウルトラマン」は庵野秀明さんの動きをモーション・キャプチャーで記録していました。 ゴジラが現れて、お偉いさん方が真面目な顔で 「どうする」とか延々と会議のシーンが続く。それが観ていて不思議と心地よい。
最初に東京湾で小規模な爆発があって波しぶきが立ったと思ったら、未確認物体の尻尾だけ出ていた状態だったと思います。
自衛隊を出動させるにも、今まで生き物に対しての出動は前例がないから「それはいいのか?」と。
当時の法律に鑑みて、危険な巨大生物が暴れたらどう対処したらいいか会議をして、爆発物を使いたいってなったら調整をどうするのか。いろんな部署の人たちが集まって、そんな話し合いをしていきます。
東日本の大震災が影響しているのがありますよね。ゴジラ第二形態が蒲田に出現する。海に浮いている船とかが、山のようにぶあーとなって、街中まで入ってきて。震災の津波の映像そっくり。 また、登場人物が多すぎる。
最初は内閣ですね。総理大臣とかが集まって話し合いをしている。専門家を集めて話し合う中で意見調整がうまくいかなくて、最初はあまり具体的な対策が採れなかった。主人公の長谷川博己が途中からゴジラの対策本部に加わって、能動的に動く。ゴジラに対しての作戦が具体的に動いていく、そこからが面白い。
直接の部署ができる。
群像劇でそれぞれが超人ではないので、ひとつになってゴジラを倒そうとする姿が観ていて気持ちいい。
全く未知のものなので、最初海に出ている「しっぽ」だけの時点で会議が始まるんだけれども、まずどんな生物かわからないので、途中で上陸してきて、 「これ上陸する生物だって?」。そこから対策を変えなきゃいけなくなる。
最初は体の仕組み的に 「上陸はないでしょう」と言って。でも生物学者が 「こんなの見たことないわ」って、リアクションが面白い。
だから東京蒲田に第2形態のゴジラが上陸してきた時、 「えっ蒲田に?」って総理大臣が言うところが、ネットミーム化している。
「シン」はどういう意味があるんでしょう?
いろんな意味があると言われている。
ゴジラの英語表記(GODZILLA)の中に「GOD(神)」の字が入っている。 石原さとみがアメリカ政府の役人としてやってくるんです。そこで石原さとみが 「この生物は通称ゴジーラという」。
「ゴジラ」っていう名前が元々あった?
石原さとみが言っていた。 ゴジラ(呉爾羅)に関わっていた学者が冒頭で死ぬ。詳細は明かされてなくて考察のしがいがある。
ゴジラが何なのか、あのビジュアルしか知らない。
私は「シン・ゴジラ」が初めて観た作品だった。その後で初代の「ゴジラ」を観た。
背景にアメリカの水爆実験(注2)があって、初代ゴジラはその社会背景の中から生まれてきた。
反原爆。原爆のアンチテーゼを唱えている。
意外と大人向けというか。
小学生は楽しいんかな。
子供向けではないな。
この面白さは、外国の人が分かるかな?
大コケしたという話は聞きますね。1週間で上映打ち切ったとか。
日本の政治の社会を知っているとすごく面白い。自虐っぽい。(アメリカの水爆汚染を日本が粛々と尻拭いしている構図)
日本人ではないと楽しめないです。 ゴジラを最後にやっつけるシーンがあって、ハリウッド映画だったら、みんなで 「イエー」って言う。 「シン・ゴジラ」は、みんな黙っているのが日本人らしい。
自衛隊もね、「ここで食い止めるんだ」って戦争映画みたい。
そのシーンを予告で観ました。
Eくん
年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。
キネ娘さん
卒業論文のために映画の観客について研究したことも。ハートフルな作品からホラーまで守備範囲が広い。グレーテスト・シネマ・ウーマンである。
サポさん
「ボヘミアン・ラプソディ」は10回以上鑑賞。そして、「ドラゴン×マッハ!」もお気に入り。主に洋画とアジアアクション映画に照準を合わせて、今日もシネマを巡る。
夕暮係
小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で、劇場デビュー。照明が消え、気分が悪くなり退場。初鑑賞は約3分。忘却名人の昔人。
注1 モーション・キャプチャー
人や動物の動きをデジタル信号として画像記録する技術。アンディ・サーキスがモーション・キャプチャー俳優と呼ばれている。彼が動きを担当したのは、「ロード・オブ・ザ・リング(2001)」「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔(2002)」「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003)」のゴラム、「キング・コング(2005)」のキング・コング、「猿の惑星: 創世記(2011)」のシーザー、「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密(2011)」のハドック船長、「ホビット 思いがけない冒険(2012)」のゴラム、「GODZILLA ゴジラ(2014)」のゴジラ、「猿の惑星: 新世紀(2014)」のシーザーである。
注2 アメリカの水爆実験
1946年から67年まで、アメリカ軍はビキニ環礁とエニウエトク環礁で67回の原水爆実験を行った。1954年3月1日の広島型原爆のおよそ1000倍といわれる史上最大規模の水爆実験は、広い太平洋や大気圏を強力な放射能で汚染した。静岡県焼津漁港の乗組員23名の遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」は危険対象外の地域で操業中に被爆した。無線長の久保山愛吉さんは同年9月に放射能障害で亡くなった。 同乗組員の半数の12人がガンなどを発病して亡くなり、あるいは奇形児を出産、周囲の目を気にしてひそかに暮らしていた。被爆した船は第五福竜丸以外に、厚生省が認めただけでも856隻、およそ1000隻に及び2万人近くが被爆したと言われる。「ゴジラ」を誕生させたのはビキニ環礁の水爆実験という設定。ゴジラは水爆実験で住環境を破壊され地上に現れた。本多猪四郎監督は「真正面から戦争、核兵器の恐ろしさ、愚かさを訴える」と語った。
「僕のワンダフル・ライフ」 愛犬が転生を繰り返しながら人と出逢う
監督 :ラッセ・ハルストレム
脚本:W・ブルース・キャメロン、キャスリン・ミション、オードリー・ウェルズ、マヤ・フォーブス、ウォーリー・ウォロダースキー
原作:W・ブルース・キャメロン
〈Story〉
レトリバーの雑種の仔犬は生後数ヶ月で殺処分され「何のために生まれて来たのか?」という疑問を持つ。
レトリバーに生まれ変わると譲渡会から脱走し捕まり、車内で熱中症で死にかけたところをイーサンと母のエリザベスに救われる。
子犬はベイリーと名付けられ、亡くなるたびに転生を繰り返す。
「僕のワンダフル・ライフ」は飼い犬が転生して、最終的に前世の前世の前世の飼い主に再会するというあらすじです。
犬が好きだったら泣いてしまう。
一番最初が子犬で、意識が芽生えたところから記憶が続いていく。最初は野良犬を捕獲する人たちに捕まって、子犬の時点ですぐに死んでしまう。
自我が芽生えた時から
「犬が生きる目的は何だろう」とずっと思っている。
〈転生〉
次にゴールデン・レトリーバーに生まれ変わる。前の記憶が引き継がれて
「今度はまた違うところに生まれたな」って。
最初はケージに入れられていて、逃げ出すけれども、また別の人に捕まってしまう。車内に置き去りにされて、車内温度が上がって死にかけるところを。通りかかった少年イーサンと母に助けられる。
イーサンのお父さんはそれほど犬が好きではないけど渋々飼うことを許す。ベイリーって名づけられて、少年の愛を一身に受けて育っていく。
全部の話が犬の視点で進んでいくのがすごくいいです。自分の人生が終わることも悲観しない。
「次の人生はどうなるんだろう」って犬のモノローグで話が進んでいきます。
一緒に過ごしているうちにイーサンは高校生になる。アメフトのスター選手で推薦枠で大学に入学する予定だった。
街に来た小さい遊園地にベイリーと遊びに行く。ベイリーが寄っていった女の子ハンナとイーサンが付き合うことになって、高3の夏休みを一緒に過ごすんだけど、ベイリーの認識は
「群れに新しい子が加わった」。
ハンナとイーサンは同じ大学に進学するのを楽しみにしている。
ある日の深夜、イーサンに嫉妬した友達がイーサンの家に火をつける。ベイリーがいち早く気づいて皆んなで脱出するが、イーサンは脚を怪我してしまう。
それでアメフトの推薦入学権がなくなって、イーサンがふさぎ込む。ハンナが心の支えになろうとするけれど、イーサンはそれを拒絶して別れる。イーサンは田舎にある祖父母の農家の家に移って、農業系の学校に通う。
ベイリーはしばらくして、病気になってしまう。アメリカは、回復の見込みがない犬は安楽死をさせる文化なので、死ぬ間際にイーサンが呼び寄せられて再会できたところでベイリーが死ぬ。
〈転生〉
その次が警察犬に生まれ変わる。雌犬エリーに生まれ変わって、最初自分でびっくりして、
「あれ、ない」って言う。
警官カルロスがパートナーになる。毎日が訓練と捜査の日々で、カルロスは犬を大切にするけど、愛玩する対象ではなくて、仕事の相棒。エリーはすごく優秀な警察犬で、いろいろ手柄を立てていて、よく捜査に行く。
ある日、女の子を誘拐した犯人を追い詰めた時に、犯人が撃った弾に当たってエリーは殉職する。またそこで
「自分の人生は仕事ばかりだったけど楽しかった」。
〈転生〉
次がコーギー、ティノという名の小型犬。引き取り手を探しているところを、通りがかった大学生マヤが
「かわいい」って言って引き取ってくれて、マヤも愛犬家で大学に一緒に連れて行く。マヤは同じ大学のアルと結婚して、アルが飼っているロキシーにティノが惚れるけど、ロキシーはティノに興味はない。マヤとアルの子供に囲まれて、老衰するまで幸せに暮らす。
〈転生〉
次がセントバーナードに生まれ変わる。最初は子犬で、カップルが飼い主になるんだけれども、彼女が「犬を飼いたい」って言っても彼氏は犬に興味がない。
「お前が世話しろよ。庭に繋いでおけ」と言う。
彼女もだんだん世話をしなくなって、庭に繋いだまま散歩もさせないので動物虐待の勧告を受ける。彼氏が
「引き取り手に渡してくる」と騙して捨てる。
犬が町をさすらっていたら、懐かしい匂いがする所にたどり着く。そこはかつてイーサンと過ごしていた牧場。イーサンと再会できるのかどうか?
見た目も前と違うセントバーナードで、イーサン(デニス・クエイド)が気づくのか?。
イーサンとハンナの関係も、やっぱ動きがあるんですよね。
イーサンはハンナを高校生の時に振ったことを気にしていて、誰とも結婚しないで、祖父母ももういなくて一人で暮らしている。犬の視点がうまいんですよね。どんどん生まれ変わる中で、
「犬の人生の意味って何だろう」って考えているけど、人間の都合に振り回されているのに恨んだりしないで、飼い主に寄り添おうとする。
それは思考が声になって出ているんですか?
全部モノローグでしゃべっている。
転生はずっと長い旅路をしているみたい。いろんな飼い主と出会って最後に戻ってくる。
感動しそう。
ラッセ・ハルストレム監督にハズレは少ないね。
リチャード・ギアのハチ公物語のハリウッド版「HACHI 約束の犬(2009)」を作っている。
「ギルバート・グレイプ(1993)」「サイダーハウス・ルール(1999)」「ショコラ(2001)」ね。
そう心温まる系。
アメリカ映画っぽくないね。
犬は人間の6倍の時間を感じるらしいです。
「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学」(本川達夫 中公新書)っていう本があったね。生物のサイズで時間の感覚が違う。
犬を飼ったことがないけど、これを観てしまうと飼う前から想像しただけでペットロスになっちゃう。
「ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学」中公新書
本川 達雄 著。体の大きさに応じて「時間の流れが変わる」というところを切り口に、色々な種族で世界観が異なることを紹介している。動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。
「大いなる西部」 東部の紳士が西部の男に出逢う
監督:ウィリアム・ワイラー
脚本:ジェサミン・ウェスト
ロバート・ワイラー
ジェームズ・R・ウェッブ
サイ・バートレット
ロバート・ワイルダー
原作:ドナルド・ハミルトン『The Big Country』
〈Story〉
1870年代のテキサス州サンラファエルに、東部からジェームズ・マッケイがやって来る。
地元の有力者テリル少佐の娘パットと結婚するためだ。
ここでは、テリル少佐と、大地主ルーファス・ヘネシーが、水源をめぐって反目し合っていた。
ウィリアム・ワイラー監督、「ローマの休日(1953)」のね。
1870年代のアメリカが舞台で、ロックフェラーとかが出てくる頃ですよ。東部の方は都会化している。西部は未だに西部のまま。鉄道も走り出して、鉄鋼王とか名士が出てくる時代です。
グレゴリー・ペックは、東部の船会社のオーナーで牧場主の娘さんのパトリシアをお嫁さんにするために西部にやってくる。グレゴリー・ペックはアメリカで一番好かれている俳優です。
あれ何でしたっけ。裁判の映画。
「アラバマ物語(1962)」。
一番頼れるお父さんが「アラバマ物語」のアティカス・フィンチだった。(2003年の “アメリカ映画100年のヒーローベスト100” で第1位に『グレゴリー・ペックのアティカス・フィンチ』が選ばれた)
東部のその紳士が西部にやってきて、牧場に来る。
東部と西部は対極ですよね。
その牧場が山の方にある別の牧場と対立しているんです。対立している理由が水争いです。水源をどっちが取るかで対立している。
そこに東部から来たジム(グレゴリー・ペック)を対立相手の連中がからかいに来る。ジムの山高帽を投げ合いして、ジムが取ろうとすると帽子を撃ち抜く。それに対してジムは何もしないんですよ。
「どうして抵抗しないんだ」ってみんなに言われる。
やられたらやり返すのが西部の流儀。結婚相手のパトリシアも
「やり返さないから撃たれている」と言う。
ジムは
「あの拳銃の腕じゃあ私には当たらないよ」ってさらっと流す。
そこの牧場の牧童頭スティーブがチャールトン・ヘストン。大好きな男優です。恋敵の役。牧場主の娘を好きな牧童頭スティーブとジムの三角形がある。
朝、ジムが馬を借りて出かけて山の方に入っていく。地元の人間でも迷う所です。水源を見に行くんですね。
水源を持っているのが、ジュリーという娘さん(ジーン・シモンズ)で学校の教師。その人と出会うんですね。
「私はどっちにも売らない。どっちかに売ったら、抗争が大きくなってしまうから」と聞いてジムは状況がわかる。
ジムが夜遅くに帰って来ると、皆んなが心配して「勝手に山の中をウロウロするから迷うんや」って言われる。ジムは、
「自分の居場所は分かっている」って、コンパスを見せる。船乗りはコンパスがあったら場所は分かる。それは西部の人に伝わらない。
東部の考え方と、西部の考え方が違っていて、パトリシアも、何か思ってたのと違う。ジムは、実は教師の女の人が徐々に気になっているんやね。
婚約者がいるのに。
パトリシアが好きなのは男性的な男。ジュリーは現代的な考え方をしている人なので、ジムに惹かれる。
そんな中で、対立する牧場の連中が、水を売らないならとジュリーを誘拐をしちゃう。
ジムが一人で助けに山奥への牧場に行く。そこの牧場主のお父さんは、やんちゃな息子バックが女教師を連れて来たので、バックが無茶していることに気づく。
そこへジムが
「ジュリーを引き渡せ」とやってくる。
お父さん役はね、バール・アイヴスという歌手です。
「じゃあ、息子と一対一の決闘をしろと。正々堂々と戦うこと。卑怯なことをしたら俺が撃ち殺してやる」って言う。
非常に西部劇的な展開ですよね。
ジムも受けざるを得ない。息子バック役がチャック・コナーズって野球選手です。やんちゃな役がうまくてね。
1対1の決闘でピストルに一発だけ弾を入れて、離れた場所から向かい合って撃つ。バックが先に撃つけど当たらない。ジムが狙おうとすると、バックはびびって
「やめてくれ」って言う。ジムが撃つのを止めると、その隙にバックは、仲間の拳銃を奪って、ジムを撃とうとする。それをお父さんのバール・アイヴスが、撃ち殺してしまう。
うそ。
「卑怯なことをしたら撃つって言ったじゃないか」
そこが泣かせるシーンで、バール・アイヴスがアカデミー助演男優賞を獲る。
スティーブ率いる軍勢が山に乗り込んで来ようとしている。そして、どうなるのか。
グレゴリー・ペックは、話を聞いてると、銃の実力とかありそうです。
銃を撃つシーンはなくて、最後に迎えに行く時も、ジムは人前では暴力的なことはしないんですよ。
だけど、夜中にね、スティーブのドアをノックする。スティーブがベッドから、
「また迷ったのか」って言う。
「一対一で、勝負を付けないか」と
「よし、わかった」ってチャールトン・ヘストンがベッドから起きて、ジーンズをバシッ、バシッと履くんです。まだ夜中で、夜が明けるまで二人で荒野で、殴り合いをする。そこでこの二人がわかり合う。
それは見届ける人はいないんですか?
いないんです。二人だけの世界。
地主同士の対立や、西部と東部の違いがあって、アメリカが変わろうとしている時代でね。1865年、南北戦争が終わった数年後ぐらいです。鉄道が引かれだして、鉄鋼王カーネギーが登場する時代。
カーネギーホールってありますよね。カーネギー財団が全米各地に図書館を作ったりした。そういう時代が変わろうとしている時の話ですよ。
鉄道が、開通される頃。(大陸横断鉄道は1869年に開通)
そうですよね。カーネギーが最初に儲けたのは、その鉄道の一等客室の発明。それで大儲けする。アメリカでだんだんと財閥が出てくる。
セルジオ・レオーネの「ウエスタン(1968)」にも鉄道が出て来ます。
「西部開拓史(1962)」も西部劇の中の時代を追っていく話です。開拓する時代から、最後は鉄道が走る時代までを語られる話です。
ちょうど歴史が変わる間っていうのは面白そうです。
西部の方も東部のようになっちゃうんですか?
そうですよね。鉄道が走るとあっという間ですよね。
ネイティブアメリカンの人たちはあの衣装でいたんですか?
ずっと保護されていきますね。
今もいるんですか?
あんな格好はしてない。そういう人たちの地区っていうのがあって、アメリカとカナダの国境付近とか、あちこちにネイティブアメリカンのエリアがありますよね。
私の記憶の中で西部劇ってちゃんと観たことがなかったんで面白そう。「荒野の七人(1960)」とかは観たことがあるんですけど、西部の価値観が東部と対立的に浮かび上がってくる作品はあまり知らなかったです。
いい時間になってきましたね。
じゃあ、ここら辺で今日は終わりにしましょう。
(対話月日:2022年7月28日)