お家シネマで癒されましょう

第24夜「あの年のオススメ映画 2021」Side B

今宵は2021年を思い出してオススメ映画をご紹介します。

Side Aのつづき

「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」 名優たちの競演

監督・脚本:トッド・ロビンソン

〈Story〉
1966年4月11日、アメリカ空軍のパラレスキュー部隊のピッツェンバーガーはベトナムの戦場に取り残された兵士を救い出すべく、ヘリコプターで現地へと向かう。
敵軍の攻撃が激しく、パイロットはヘリコプターの滞空が困難だと判断、救助活動の途中で基地へ引き上げる決断をする。
ピッツェンバーガーは兵士たちを守るために敢えて留まることにした。
9人の兵士たちが生還できたが、ピッツェンバーガーは敵の銃弾に倒れた。
1998年、ピッツェンバーガーの両親と友人たちは彼に名誉勲章の授与を国防総省に請願。
その請願を精査するのは、キャリア官僚のスコット・ハフマンだった。
ハフマンが退役軍人たちの証言を集め、ある事実を知ることになる。

ラスト・フル・メジャー

2021年公開の作品で観た中ではこれが一番です。

僕も観ましたよ。ベトナム戦争の話でしたよね。

そうです。ベトナム戦争の隠れた英雄ウィリアム・H・ピッツェンバーガーね。その関係者が彼に名誉勲章を与えてほしいと言っていたのに、なかなか実現しない話です。
何度目かの請求が国交省に勤めているスコットに回ってくる。スコットは出世をしたいので、話だけ訊きに行って軽く済ませてしまおうと思う。
でも聞きに行くとだんだんはまっていくんですね。同僚から
「出世する気ないのか」
とまで言われる。この作品は事実がベースになっていて、「アメリカ軍最悪の日」と言われているベトナム戦争の一日がピッツェンバーガーの活躍した日ですね。
ピッツェンバーガーは衛生兵で救援要請があってヘリコプターで駆けつけるんですよ。そこは敵に囲まれていて、ひどい状況。降りていったら駄目と言われている中、ヘリコプターからロープで降りていくんですね。待ち伏せをされていて、迫撃砲で攻められている。そこで何人もの兵士を助けたんだけど、ピッツェンバーガーは助からなかった。
スコットは当時の関係者に次々と取材に行くんです。
取材相手はなかなかの名優が揃っている。ウイリアム・ハートやサミュエル・L・ジャクソンに聴きに行く。ピーター・フォンダが登場したのには驚いたし、大好きなエド・ハリスもいました。

主人公のスコットがセバスチャン・スタン。キャプテン・アメリカシリーズのバッキー・バーンズ役でした。あとクリストファー・プラマーも出ていましたよね。

そうそう、クリストファー・プラマーは最後の方の作品ですね。

遺作ですね。

ピッツェンバーガーのお父さん役。
まず、ウイリアム・ハートが連絡してきて、お父さんに会いに行ったら、クリストファー・プラマーだった。
スコットは自宅へもピッツェンバーガーの両親を招く。なかなか進展しない状況を説明して食事をする。プラマーがお手洗いに行って、階段を降りてきた時に、スコットの部屋を覗くんですよ。そこには調査している資料があって、ちゃんと仕事をしてくれているのが分かる。
何気ないシーンに、ぐっとくる。
ピッツェンバーガーがヘリコプターから降りていったのは、お母さんがピッツェンバーガーの子供時代に
「正しいと思ったことは、やり通しなさい」
と教えていたから。そんな話を聞いて、出世ばかり考えていたスコットが変わっていく。
どうしてみんなが名誉勲章を与えたいのかを聞く。エド・ハリスが言ったのが
「仲間を思う崇高な気持ち、それこそが名誉勲章。彼こそがそうだ」
ピッツェンバーガーの戦死から数十年経っていたんですよ。名誉勲章は授与されるのか、とそういう話です。

名誉勲章が授与されるまで時間がかかったのは理由がある?

部隊を指揮していた下士官の戦術が公にできなかったんですよ。

主人公の考え方が、その中で変わっていくのが見られる。

そうです。仕事は出世じゃないと、奥さんや子供に誇れる仕事がしたいと思うようになる。

夕暮さんの目がうるうるになっていません?

まだこれぐらいは。今までそういう時ってあったけどね。

泣いちゃいそうな作品ですね。

お父さんがスコットの部屋を見たシーンで神に祈る。
「神に感謝」と。

Eくん

年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。

サポさん

「ボヘミアン・ラプソディ」は10回以上鑑賞。そして、「ドラゴン×マッハ!」もお気に入り。主に洋画とアジアアクション映画に照準を合わせて、今日もシネマを巡る。

キネ娘さん

卒業論文のために映画の観客について研究したことも。ハートフルな作品からホラーまで守備範囲が広い。グレーテスト・シネマ・ウーマンである。

検分役

映画と映画音楽マニア。所有サントラは2000タイトルまで数えたが、以後更新中。洋画は『ブルーベルベット』(86)を劇場で10回。邦画は『ひとくず』(19)を劇場で80回。好きな映画はとことん追う。

夕暮係

小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で、劇場デビュー。照明が消え、気分が悪くなり退場。初鑑賞は約3分。忘却名人の昔人。

夕暮係編/2021年公開オススメランキング

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
No.1「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」
No.2「すべてが変わった日」
No.3「すばらしき世界」
No.4「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」
No.5「Mr.ノーバディ」
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

クリストファー・プラマー

「最後の決闘裁判」 三人それぞれの真実、果たして神は。

監督:リドリー・スコット
脚本:ニコール・ホロフセナー、ベン・アフレック、マット・デイモン
原作:エリック・ジェイガー

〈Story〉
ジャン・ド・カルージュとル・グリは互いに信頼しあった友人同士。
ル・グリはピエール伯のお気に入りだがジャンは嫌われていた。
ジャンは戦の勝利の宴席で、ロベール・ド・ディボヴィルの娘マルグリットを紹介され結婚する。
本来、マルグリットの持参金の一部であったオスール・ファル・コーンという土地がル・グリのものになる。また、ジャンの父親が死去し、自分が継ぐべき「ベレム長官」の座にル・グリが就任する。ジャンとル・グリとの関係は悪化し、ジャンは宮中政治から遠ざけられる。
ル・グリはマルグリットを意識するようになる。
1385年ジャンはフランス軍のスコットランド遠征に加わり、この戦で騎士の肩書を得て、給金を受け取りにパリへと向かう。
帰宅するとマルグリットの様子がおかしい。マルグリットはジャンの留守中、ル・グリが侵入して強姦されたと訴える。
ジャンはパリへ向かいフランス国王に「決闘裁判」を訴え出る。
ル・グリはピエール伯に自分がマルグリットに抱いた恋心を告白し、自分の欲望をおさえきれなかったと訴える。ピエール伯は「証拠はない。否定しろ。裁判で裁くのは私だ」と応える。
シャルル6世は決闘裁判を容認し、神に審判を委ねることになる。

「最後の決闘裁判」は、評価はわかれるよね。

個人的には2回目を観る前に本を読みました。史実が元になっている映画で、14世紀のフランスが舞台。
マット・デイモン演じる騎士カルージュの友人の騎士ル・グリ(アダム・ドライバー)がカルージュの奥さんマルグリット(ジョディー・カマー)に暴行を働く。でもル・グリは合意の元だと言う。怒ったカルージュが裁判に訴えて、「決闘裁判」にまで至る。馬に乗って槍で突き合うような野蛮な裁判が行われるという話。
一つの出来事が、三者視点で語られる。
最初にカルージュの視点での話。次にル・グリ視点でのお話。その最後にマルグリットの視点で語られる。出来事が一緒でも、印象が変わる。

黒澤明の「羅生門(1950)」やね。

カルージュ視点で見ると、かわいそうなんやけど、ル・グリ視点で見るとカルージュが嫌なやつ。マルグリットの視点から見るとカルージュがめちゃくちゃ嫌なやつ。最終的には男二人は酷い。

ル・グリは戦争好きやね。戦争に行って活躍する。

カルージュから見ると、マルグリットを愛しているのが伝わってくるんやけど、マルグリットから見ると、戦争ばっかで自分のことを愛してくれてない。

カルージュは戦地で活躍しても、評価されなくて不満がたまる。

ベン・アフレック演じる領主ピエール2世が、ル・グリばかりに肩入れたして、カルージュを評価しない。領主も嫌な人で女遊びが好き。

嫌な男性しかいない。

当時は活躍して帰ってきたら領地を与えてもらう。

最終的にはマルグリットが男性から解放されて一人で生涯を閉じた。

裁判も教会でやっていたよね。

あれは裁判の過程がありました。

二人の証言を聞いても決着つかなくて奥さんの証言次第になる。

ル・グリが勝ったら、カルージュの処刑だけではなくて、マルグリットも処刑される。
「それでも証言を変えませんか?」
と詰め寄られる。

あなたの証言が正しかったら勝つでしょう、と。

決闘が裁判になるというのは、当時の宗教観がそうなっているの?
神様は正しい方を勝たせる。

そうです。
残されている資料で一番最後に行われた決闘裁判。

証言が食い違っていたら、最後は決闘で神様に決着をつけてもらう。

中世やばいな。

リアルに描いている分、賛否が分かれるなって。史実に基づいて、表現している感じはしたね。

しかもこれが80歳くらいのリドリー・スコットが監督しているのがまたすごいです。この歳でもまだまだ作品を製作している。

Eくん編/2021年公開オススメランキング

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
「最後の決闘裁判」
「キャンディマン」
「由宇子の天秤」
「KCIA 南山の部長たち」
「THE MOLE (ザ・モール)」
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
順位はなし

最後の決闘裁判

「最後の決闘裁判」
エリック・ジェイガー
ハヤカワ文庫 NF 579

マット・デイモン
アダム・ドライバー

「すべてが変わった日」 母性の一徹と父性の決着。

監督・脚本:トーマス・ベズーチャ
原作:ラリー・ワトソン

〈Story〉
1960年代、アメリカ北西部。マーガレットは元保安官の夫ジョージ、一人息子のジェームズとその妻ローナ、生まれたばかりの孫息子ジミーと平穏に暮らしていた。
ある日、ジェームズが落馬事故で亡くなる。
ローナはすぐに再婚したが、新しい夫ドニーは短気ですぐ暴力を振るう男だった。
「大切な孫をこんな男に任せておけない」と思ったマーガレットはジョージを連れてウィーボーイ家に向かうが、女家長ブランチはそんな二人を鼻で笑い追い返す。ローナとジミーが過酷な状況に置かれていることを知ったマーガレットとジョージは、ローナを説得し逃げ出す決心をさせる。
それを察知したウィーボーイ家はマーガレットとジョージの宿泊するホテルの部屋を急襲する。

「すべてが変わった日」はネットではスリラーとして紹介されているけど、僕は文学として観ました。アクションで、バイオレンス、スリラーのそれぞれ要素はあるんだけどね。
アメリカの60年代の話ですよ。閉鎖的なコミュニティの中に入って行きます。自分たちの領域やルールは自分たちで守るんだという共同体の中と外が描かれている。そこにスリラー要素がある。

南部の田舎みたいな。

そうそう。
マーガレット(ダイアン・レイン)とジョージ(ケビン・コスナー)が夫婦です。長男が一人いて、その嫁のローナと赤ちゃんの5人家族ですね。ジョージは元々保安官で引退して牧場で馬を飼っている。
ある時、長男が落馬してあっという間に亡くなってしまう。奥さんのローナが赤ちゃん連れて実家の方に帰って再婚する。ある時にジョージとマーガレットがマーケットでお買い物していて、ローナを見かけると再婚相手がDV男でね。ローナが暴力を受けていることが分かる。これはまずいと思って。こんなところに孫も預けていられない、助けたいと思って、マーガレットは様子を見に行こうと、ジョージを説得する。
そして、車で行くんです。そこが閉鎖的な街です。
このストーリーの面白いのが、その閉鎖的な街の中と外のマージナル部分に、インディアンの青年が住んでいるんですよ。どのコミューンにも所属していなくて一人で生活している。何故この存在がいるのかが大事なキーになってくるんです。
先方のウィーボーイ家を訪ねると、その一家は婦人が家長で息子たちが荒くれ者ばっかりです。話をしても、はぐらかされて追い返される。町で宿泊してどうしようか思案する。ローナの様子もおかしかった。言いくるめられているみたいだし。
ローナともう一度話をすると、逃げ出したいけど、その町からも逃げ出すのが難しいことが分かる。そこでマーガレットが逃げ出す手引きを計画する。
こっそり連れて行こうとするのが見つかってしまって、阻止される。ジョージが抵抗して、逆にやられてしまって、大怪我をする。マーガレットが仕方なく連れて帰ろうとするけど、ジョージの熱が上がって動けなくなってきた時に、インディアンの青年が休憩していくように言ってくれる。何日か泊めてもらって、ジョージは少し復活をする。助けに行けるのは自分しかいないので一人で行くんですよ。
そこで、助け出すことができるのかという物語。大事なものを手に入れようとすると大きなものを失うのが物語の鉄則ですね。

西部劇っぽいですね。

奥さんはその町の人ですか?

そこに嫁いでいったからそこの人じゃないと思うんですよ。
閉鎖的な町っぽいのが、ジョージがやられた後で保安官に助けを求めたら、
「いや、勝手に入ってきて連れ出そうとするのが悪い。早く出ていけ」
と言う。きっと中の人たちからすると町を守っているんですよね。自分たちの秩序がある。

インディアンの青年が気になりますね。

彼がいいですよ。出会ってほっとする瞬間がある。
客観的な視点の存在かもしれないしね。

このタイトルはどこにかかっているのでしょう?

これは息子が落馬した日かな。その日からそれぞれの人生が変わっていくから。

観る人によって視点が変わるという。

お話の根底に流れているテーマが母性と父性。父親はどこで自分の幕を引くのかをいつも考えている。
主役はマーガレットやと思うんですよ。マーガレットがいろんなことを見ている。連れ出そうって言い出すのは母性のような気がするし、最後に自己犠牲で助け出そうとするのがジョージの父性。
これはただのスリラー映画ではない。

映画の売り文句が「行き過ぎた正義が恐怖を生むサイコ・スリラー」と書いている。

その惹句はスリラーに引っぱっていこうとしているね。
この作品はラリー・ワトソンという作家の原作です。この人は文学の作家です。
この作家のインディアンの青年の置き場所が計算されているかな。

ダイアン・レインとケビン・コスナーは「マン・オブ・スティール(2013)」でも夫婦役でしたね。

ダイアン・レイン

「キャンディマン」 あの都市伝説が訴えること。

監督:ニア・ダコスタ
脚本:ジョーダン・ピール、ウィン・ローゼンフェルド、ニア・ダコスタ
原作:バーナード・ローズ『キャンディマン』、クライヴ・バーカー『禁じられた場所』

〈Story〉
2019年、アーティストのアンソニーが暮らすシカゴのカブリーニ・グリーンには都市伝説があった。
かつて、ヘレン・ライルが、この地の伝説を調査中に錯乱し、大量殺戮の果てに住人の赤ん坊を拉致した。
創作活動に行き詰まっていたアンソニーは、コイン・ランドリーの店主バークから、キャンディマンの伝説を聞く。
ここの住人だったシャーマンという黒人は右手がなく、フックを装着していたが、子供にキャンディを配る優しい男だった。
1977年、彼が白人少女に渡したキャンディにカミソリの刃が仕込まれていた。シャーマンは白人警官に囲まれ、その場で殺されるが冤罪だった。
以来、鏡に向かって5回その名を唱えると、蜂の大群を従えた殺人鬼が現れ、体を切り裂かれるという伝説が生まれた。
この伝説をタイトルにしたアンソニーの新作アートは評判を呼ぶが、原因不明の惨殺事件が発生した。
キャンディマンの呪いには、差別で殺された何代もの黒人の恨みが籠っていた。

キャンディマン

「キャンディマン」はホラー映画です。
元々90年代に一作目から三作目まであって、今作は一作目の直接的な続編という感じになっている。
鏡に向かって「キャンディマン」と5回唱えると、キャンディマンが現れてその人を殺す。都市伝説がモチーフで、「13日の金曜日」とか「エルム街の悪夢」みたいなスプラッターホラー映画かなと思っていたら、全然違いました。
黒人差別がこのテーマですね。「ゲットアウト」とかのジョーダン・ピールが製作に関わっている。

そういう紐解き方で観てしまいますね。

キャンディマンの正体が、今まで白人から虐げられてきた黒人の怨念の象徴になっている。

こんな事実があったというのが「切り絵」で語られる。

黒人差別がテーマだというシーンがあります。学校のお手洗いで白人の女の子たちが冗談で鏡に向かって「キャンディマン」と5回唱えるシーンがあるんだけど、たまたま黒人の女の子が入ってきて、個室に入っちゃう。女の子たちが、
「またあいつ来たぜ」
とからかいながら、「キャンディマン」と唱えるとキャンディマンが現れる。白人の女の子たちが殺されて、黒人の子だけ助かる。

「キャンディマン」は人じゃないんですね?

殺された黒人の怨念やね。

現れたら黒人の男の人。

実体はあるんですね。

片手が鎌で蜂がブンブン回っている。

なんでキャンディなんでしょ?

キャンディマンは何人もいる。その内の一人が子供を相手にキャンディを配っていて、周りからは不審者扱いされて、白人警官に暴行されて殺される。それが映画の冒頭で描かれている。過去にもいろんな黒人が虐げられてきた。
映画の主人公は黒人の芸術家の男性で、テーマに困っている時にキャンディマンの都市伝説を知って、モチーフにしたら面白そうやと考える。調べているうちに深みにはまって次のキャンディマンに選ばれちゃう。

怨念になっちゃう。

よくできているホラー映画ってカメラアングルが面白いね。
鏡のあるところにキャンディマンが出てくるというのを最初に意識に植えつけられる。見ていると、「あ、鏡がある。出てくるぞ」と思わせて出てこないとか。

エンディングが終わって最後にメッセージが出てくるんやけど、これホラー映画でも何でもないじゃんという強烈なメッセージ、でもそれは伏せておきます。
単なるスプラッターじゃなかった。

ジョーダン・ピール
検分役の音楽噺 ♪

元々ホラー映画好きで民俗学も好きな僕としては、『キャンディマン』は興味深く観ましたが、個人的には本文中にあるように1作目で原典となった92年版がお薦め。
監督したバーナード・ローズは文芸作品からホラー作品まで、また日本で『サムライマラソン』(19)を撮ったユニークな経歴があります。
音楽を担当したフィリップ・グラスは映画音楽のみならず、現代音楽も多く書いている作曲家。
『キャンディマン』は彼の代表作でもあり、今回の2021年版にもメインテーマが使われています。
さて、楽曲が使われているといえば, 2021年版にはサミー・デイビスJr.による72年の全米№1ヒットであり、日本でも子供番組で「陽気なキャンディマン」のタイトルで唄われて知られているナンバー「キャンディマン」も流れてきます。
キャンディマンといえば、このナンバーを思い浮かべる方も多いのでは。
元々、このホラー映画の『キャンディマン』とは直接関係なく、92年版ではまったく無視されているのですが、ポピュラーなナンバーでもあり、2021年版ではおそらくパロディとして使われたのかと思います。
この「キャンディマン」はもともとミュージカル映画『夢のチョコレート工場』(71)(ロアルド・ダール原作)の挿入歌で、この映画は後年、ティム・バートンが『チャーリーとチョコレート工場』(05)として再映画化していますね。
バートン版も楽しくて(そして毒もあって)良いのですが、個人的には71年版も好きなんですよ。

(対話月日:2023年3月3日)