映画をこよなく愛する素人のおしゃべりです。
新年1回目は「お祝い」をテーマにしました。
皆様がひとつでも観たい映画が見つかれば嬉しいかぎりです。
「アナと雪の女王」 祝!北欧の戴冠式
原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン『雪の女王』
原案:クリス・バック、ジェニファー・リー、シェーン・モリス
脚本:ジェニファー・リー
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
音楽:クリストフ・ベック
〈Story〉
アレンデール王国の王女エルサは魔法の力を持っている。妹のアナと遊んでいると、誤って魔法の力で妹を意識不明にさせる。王と妃はトロールたちに救いを求め、アナは回復するが、エルサの魔法や事故の記憶は消える。エルサは、力を封印するために部屋に閉じこもり、魔法を抑える手袋をつけて、誰にも合わず自分を抑えて生きる。
10年後、王と妃が海難事故で亡くなり、姉妹だけとなる。成人したエルサは女王として即位することになり、戴冠式が催される。招待客のために閉ざされていた門が開かれる。
アナは隣国の王子ハンスと出会って恋に落ち、結婚の約束までしてしまう。エルサは、決断が早すぎると結婚に反対。姉妹は口論になり、手袋を奪われたエルサは思わず人々の前で魔法を発露させてしまう。
秘めていた魔力を知られたエルサは王国から逃げ出すと王国はエルサの魔法により永遠の冬となってしまった。
今回のテーマはお祝い事だよね。
北欧にあるアレンデールという王国の女王様になる戴冠式のお祝いです。
雪の女王になる?
雪の女王は別名。
「アナと雪の女王(2014)」の物語は、魔法の能力をもっている皇女エルサがいて、小さい頃はその能力を使って、妹のアナと遊んでいた。
ある時エルサの魔法の雪が、アナの頭に当たってアナが意識不明になってしまって、エルサは力を制御することを学ばなきゃいけなくなる。王様はエルサの魔法の能力を隠して生きさせようと、王宮から人を減らして、部屋にこもって過ごすようにしちゃう。
エルサの力が危険だから。
力の制御を学びながら、人に目に触れないように籠っていた。お父さんとお母さんが数年後に船の事故で亡くなっちゃうと、その魔法の秘密を知っている人がいなくなってしまう。
エルサは頭に当たった魔法を治してもらう時にアナの魔法の記憶を消されている。
お姉ちゃんの力の記憶を。
アナは何でエルサはひっそりと暮らしているんだろうって思う。アナは社交的で明るい子で外に行ってみんなと遊びたい。お姉ちゃんになぜか避けられているし、お城もひっそりしているし嫌な生活って思っている。
数年経って、エルサが成人になって女王様になるための戴冠式が行われる。何年かぶりにお城の門が開かれて、他の国の王族たちを呼んでパーティーをする。エルサは何年も引きこもってきたから初めての社交パーティーだけど頑張って役目を果たす。
アナは外国のハンス王子と仲良くなって、その日のうちに結婚しようってなる。元からロマンスを夢見がちな子です。戴冠式の後の社交パーティーで、アナがハンス王子と一緒にエルサに、
「私達結婚します」って報告をするとエルサは突然のことでびっくりして、
「結婚には賛成できません」って言う。姉妹は口げんかになって、エルサがつけていた手袋をアナが取っちゃう。エルサは触ってしまったものを凍らせてしまう能力を抑えていた手袋がとれて魔法を出してしまって、みんなに魔法の能力がばれてしまう。
エルサはお城から走りだして、1人で雪山に行く。
その魔法がきっかけで王国全体が深い雪に覆われて夏から冬になってしまう
すごい力だ。
エルサがアナを怪我させてから、二人のコントラストが明確になる。
エルサも元々は1人で生きたいわけじゃなくて、誰かを傷つけたくないから他人と距離をとるようになっただけ。元は明るくて社交的な子でアナとも仲がいいです。
季節を元通りにするために、アナがエルサに会いに雪山に旅立つというストーリー。
モンスターが出てくる映画かなと思った。
モンスターも出てくる。
「ありのままに自由に生きる(「#Let It Go」)」って歌うのは、エルサが王国を離れて1人で生きるという意志表示。
そういうことなのか、あの歌は。
だから城を建てているんですよ。
思っていた以上に家庭環境が複雑。世界観は思ったより生々しくて、物語を聞いていると気になります。
世界観のベースは北欧のバイキングです。
オラフもその魔法で誕生するんですか?
エルサは雪の生き物を作り出す能力を持っている。凍らせたり雪を操ったりするだけじゃなくて、雪だるまの妖精を作り出す。それがオラフなの。
手袋がないと自分じゃうまく制御できないってことですか?
自分の感情が乱れた時に魔法が予期せぬ形で出てしまうから手袋をはめている。
歌は聞いたことないですか?
歌? 「♪ありの〜、ままの〜、でしょ」
いろいろあります。
「#雪だるま作ろう」は知っている。
アナとハンスと出会った時の歌「#とびら開けて」とか。
歌って?
サンドイッチの歌です。
サンドイッチ?
ハンス王子はサンドイッチが好っきゃねん。
アナもサンドイッチが好っきゃねん。
「僕と同じじゃないか」って唄う。
全体がミュージカル。
アナがエルサを説得しに行く時も歌っていますよね。(「#生まれてはじめて」)
歌合戦になっていたね。
ストーリーにはアナの恋物語もある。
政治的な話でもありますね。
そんな話あるんですか
王族という面ではそうだなと思う。生まれた時から女王様になることが決まっていて、王国のために生きなきゃいけないけど、自分は他人を傷つけたくなくて1人で生きたい。1人で生きようとしたら、自分の能力のせいで王国全体をピンチに墜ちいらせてしまう。
1人で自由に生きることと社会的に許されるところの折り合いをつけなきゃいけない。
外交としては、アレンデールは交易國ですね。いろんな国が戴冠式の時にお祝いに駆けつけてくる。
「お祝い」はその戴冠式のところですけど、エルサは大勢の人の前に立つのは怖いし、自分ではそんなに祝福してないなという感じ。自分を受け入れて、かつ他人と一緒にどうやったら幸せになれるかを考える映画なのかなって思います
戴冠式の準備の歌「#生まれてはじめて」も、アナの使命感とエルサのワクワク感がミックスしていくんですよ。歌で盛り上がるシーンですね。映像もなかなか見応えがある。
映像は全体にこだわっています。劇場で観たからなおさら雪と氷の表現が綺麗で、ほんまに寒そう。
最初のシーンも氷を切り出して運んでいる。
エルサの周りが特に寒そうな感じがしますよね。暗いし、冷たそう。1人で閉じこもっていて。
あれだけ大ヒットしたのに私は話題になってから劇場に行ったんですけど、こういう伏線やどんでん返しのネタバレに触れなかったんでびっくりしました。
「アナと雪の女王2」も好きですね。でも、1の方が全体の完成度は高いかな。
2は少し複雑です。
2って何がメインのストーリーですか。
1のラストから数年経ってからの話で、1のラストを踏まえている。
政治色がでて、さらにスペクタクルになった感じがする。
2は王国の歴史と、何でエルサが雪や氷を操る能力を持って生まれたかを探っていく話。
子供が見ても楽しいし、大人が見ても楽しいかなと思います。うまい塩梅。ミュージカルとしても歌がいい。
1も2もオラフが泣かせる。
ディズニーはそんなに観たことないです。
スターウォーズとマーベルぐらいかな。
遠藤くんは「ベイマックス(2014)」が好きそう。
あれ確か原作がマーベルでしたよね。
ディズニーといえば「アラジン(1992)」を選んでしまいます。
「アラジン」も「ピーター・パン(1904)」も音楽とともに空を飛ぶシーンが気持ちがいいね。
ディズニーの楽曲ってレベルが高いです。アラン・メンケンが関わってからディズニーが盛り返したんですよ。一時期衰退しかけていたのを「リトル・マーメイド(1991)」からアラン・メンケンになって歌曲賞(「#Under the Sea」)を獲って、そこからディズニーが復活したんです。
「#Part of Your World」がいいですよね。
全然わかんない。
「♪あーしー」ってやつです。
足? 分かんない。
「♪みーちー」
ハハハハ。
20個もあるんよ。
20個? 何をもっているんですか?
何を持っているかは本人も知らない。
謎は深まるばかり
「アナ雪」は今のお話を聞いていたら観たくなってきた。
王子は活躍するんですか?
王子様は地味にキーマンなのよ。
サンドイッチが好き。今日は、それだけ覚えて帰ってください。
ハハハハ、一番キーにならない。
超重要ですよね。
若干メタ的な皮肉が入っていますよね。
「アナと雪の女王」も当時話題になったのがダブルヒロインです。ディズニー・プリンセスでもエルサは最初に女王になる。
なるほど、他のプリンセスは段々上り詰めていく話なのに、エルサは最初の方で女王になる。
女王様とお姫様の話。
Wヒロインも珍しいですね。
「白雪姫(1937)」と「シンデレラ(1950)」でディズニー・プリンセスのブランドがあって、その幅を広げた。
ディズニー・プリンセスの映画って、男の人は添え物になりがちで、キャラが薄くても成り立つ。そこをうまく突いている、あんまり言うとネタバレになる。
王子様の方にフォーカスしないのがうまいなって思いますね。
王子様の背景まで描かないじゃないですか。かっこいい存在で恋に落ちたらゴールというセオリーをうまく踏んで作っている感じです。(女性自立型物語への変化)
Eくん
年間 120本以上を劇場で鑑賞する豪傑。「ジュラシック・ワールド」とポール・バーホーヘン監督「ロボコップ(1987)」で映画に目覚める。期待の若者。
キネ娘さん
卒業論文のために映画の観客について研究したことも。ハートフルな作品からホラーまで守備範囲が広い。グレーテスト・シネマ・ウーマンである。
サポさん
「ボヘミアン・ラプソディ」は10回以上鑑賞。そして、「ドラゴン×マッハ!」もお気に入り。主に洋画とアジアアクション映画に照準を合わせて、今日もシネマを巡る。
検分役
映画と映画音楽マニア。所有サントラは2000タイトルまで数えたが、以後更新中。洋画は『ブルーベルベット』(86)を劇場で10回。邦画は『ひとくず』(19)を劇場で80回。好きな映画はとことん追う。
夕暮係
小3の年に「黒ひげ大旋風(1968)」で、劇場デビュー。照明が消え、気分が悪くなり退場。初鑑賞は約3分。忘却名人の昔人。
検分役の音楽噺
ディズニー・ルネッサンス(それまで低迷だったディズニー作品を盛り返した)の立役者である作曲家アラン・メンケン。
個人的には86年の『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』で、作詞のハワード・アシュマンとのコンビに既にはまっていて注目していた人物でした。
彼が『リトル・マーメイド』で初オスカーを受賞した第62回アカデミー賞作曲賞は、僕が熱烈なファンであるジョン・ウィリアムズが『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』、『7月4日に生まれて』の2作でノミネート。あの時点でインディ・ジョーンズもラスト(その後もう1作、さらに今年5作目公開予定)だったので、その結果にはドキドキしたものです。
ただ、その前年にジョン・ウィリアムズの来日コンサートがあって、演目に『リトル~』から「アンダー・ザ・シー」があり、ウィリアムズ御大がノリノリでオーケストラを指揮したのを目の当たりにして、こりゃメンケンがオスカー獲ってもおかしくないな、と思ったものです(笑)
「英国王のスピーチ」望まない運命の戴冠式。
監督:トム・フーパー
脚本:デヴィッド・サイドラー
〈Story〉
1925年、大英帝国博覧会閉会式で、アルバート王子は父王ジョージ5世の代理として演説を行うが、吃音症のために悲惨な結果に終わる。
アルバートの吃音症を治癒できた医師はいなかった。妻エリザベスはアルバートをロンドンへ連れ出し、オーストラリア出身の言語聴覚士であるライオネル・ローグのオフィスを訪れる。
ローグは患者と対等な関係を求め、アルバートを愛称の「バーティ」と呼び、自身は「ライオネル」と呼ばせる。ローグの無作法に反発し帰りかけたアルバートに、ローグは『ハムレット』の台詞を朗読できるかどうか、賭けを持ちかける。
ローグはアルバートに大音量の音楽が流れるヘッドフォンをつけて、朗読させるのだった。
「英国王のスピーチ(2010)」は、イギリスの映画。監督はトム・フーパー。
僕の好きな「キャッツ(2020)」の監督じゃないですか。
これはアカデミー作品賞、脚本賞を獲っていた。
時代が1920年代から始まるんです。世界がきな臭くなっていて、1930年代になったらドイツにヒトラー率いるナチスが出てきて独裁政権になるんですよ。当時の平和を約束したベルサイユ条約からドイツが離脱していく、そういう時代です。第二次世界大戦が起きる10年前ぐらいの話で、コリン・ファースが演じるアルバート王子が大英帝国の次男坊。
長男じゃなくて。
最初は、万博(大英帝国博覧会)の閉会式のスピーチを頼まれるんです。開会式はお兄ちゃんがやったんで、閉会式はアルバートやってよって。でも、吃音でセリフが出てこないんです。
そんなひどいんですか。
全然喋れなくて大失態をする。
それは日常生活でもうまく喋れない。
意識すると喋れない。子供に
「絵本読んでよ」って言われると、
「うーん」となってしまう。吃音症を治さないといけないので、いろいろなお医者さんに診てもらっても当時は治し方がよくわかってないから、変わった治療をされるんですよ、口の中にビー玉をいっぱい入れてそれで喋る練習をさせられたり。いろんな医者に診てもらっても駄目で、諦めかけていた時に奥さんが見つけてくるのが本当は医者じゃないけれども、言語聴覚士と名乗っている人がいる。イギリスに住んでいるライオネル・ローグというオーストラリア人。それがジェフリー・ラッシュ、名優です。普段は役者を目指していて、いろんなところにオーディションを受けている。アルバートの奥さんが一度診てもらおうと宮殿に来てくださいって言うと。ローグは
「こちらに来てください」と。頑固というか、少し変わった人。
変人なんですか?
最初は雑談をしているんです。
「治す気はあるのか」
「治せるかどうか、1シリング賭けましょうか」。
王室のアルバートはお金を持ち歩いていない。ローグは
「じゃあ1シリング貸しておきましょう」。当時は音声を録音するのに、レコード盤を使っている。
「録音します」って、レコードに針を下ろす。ヘッドフォンをアルバートにつけてシェイクスピアのハムレットを渡す。
「1回読んでください」
「うるさくて自分の声が全然聞こえないじゃないか」
「とりあえず読んで」って言われて一通り読むんですよ。映画では読んでいる声は聞こえてないんですね。
「こんなのやってられるか」って帰る時に
「レコード盤だけ持って帰ってください」と渡す。
その後もスピーチはうまくいかない。
あのヤブ医者の録音はどんなやろうと思って、レコードに針を落とすとちゃんと自分が語っているんですよ。
ああ、流暢に。
奥さんともう1度行ってみる。そこから筋肉をほぐす練習とか、腹筋をつける練習とか、メンタル的なこととかいろいろやる。でも一番の原因はね、当時の英国王ですよ。
お父さんですか?
お父さんの躾が厳しくて、メンタルをやられていたんです。
それで吃音になっちゃうんですね。
お父さんのジョージ4世はまもなく病気になって、跡を継いで兄ちゃんがジョージ5世として国王になる。この人が女性好き。外国の女の人を好きになって、世間に知られることになる。どっちを選ぶんやってなった時に
「国王はやってられへん、辞める」って言う。
辞職したってことですか。
裏にはナチスが絡んでいる。女の人がナチス側の人やって話もあるんですよ。
それは劇中で描かれているんですか?
ちらっとね。
今回のテーマの「お祝い」というのが、この映画でも戴冠式です。
アルバートがジョージ6世として英国王になる。イギリスの戴冠式って、ウェストミンスター寺院で行うんですね。大主教が明日の戴冠式に向けて、
「今日は私が準備を一緒にします」って。でもアルバートは
「いやいや。ローグに一緒にいてもらいたい」
「そんな訳のわからない人は寺院に入れられない」って言われて。
「じゃあ、大主教は今回はいらない」
そっち取っちゃうんですね。大主教、いいのかそれ。
ローグが一夜漬けで、戴冠式での国王の最初の発言をさせる。
当時の危うい世界で、片や吃音のジョージ6世で、一方はナチスのヒトラーの演説シーンが映るんですよ。ヒトラーの演説ってすごくて、アジテーターとして喋る。その対角線の引き方が上手い。
なるほど。
ベルサイユ条約からドイツが離れて、ドイツがポーランドに侵攻すると、イギリス側は参戦せざるをえなくなる。そこから第二次世界大戦が起きる。国王として戦士たちを鼓舞しないといけない。全国に向けて、ラジオ放送で演説をするという話になっていくというストーリーです。
戴冠式はその特訓したおかげでうまく喋れた?
その時はやっとやっとですね。
イギリス全国民に向けてのスピーチは緊張する。
そんな時代に本来なるはずじゃなかった弟がいろいろな経緯を経て国王になる。
消去法で選ばれちゃいました。 クライマックスは、第二次世界大戦の幕開けあたりまで描かれているんですか。
ドイツが侵攻したニュースと参戦するところまで。
お父さんの躾が原因で吃音症になったのに、お兄ちゃんは全然。
お兄ちゃんは演説もうまいし、弟を少し見下した感じ、
「ちゃんとやらなあかんで」って。
どっちかというとお兄ちゃんの方が王様に向いているような。
アルバートの方が気質が真面目でまともに受けてしまう。
喋らないといけないとか人前とかを意識すると駄目になってしまう。
ローグは見抜くのが早かったんです。自分の声が聞こえなかったら大丈夫だったりね。
それだけでそんな流暢に喋れるんですね。
段々耳を塞がなくても言えるようになるってことですか。
そうです。
ローグの診察もいろいろ試すんです。怒らしてみたりとかね、興奮して、発声を意識しないと喋れるんです。面白いのは歌う時も流暢になる。
「歌うように喋って」と指示したりする。
歌は別なんですね。
自分で工夫して、歌うように喋ったりする。
コリン・ファースの演技が気になりますね、吃音症の演技って。
これって観たのは夕暮れさんだけですかね、サポさんは?
今回、観ました。
真面目だから自分の吃音症のこともあって、王様になりたくないって思うようになる。王位継承が決まった後に泣き崩れているシーンがある。
でもそういう真面目な人の方が私はいいだろうなと。
エルサ系ですね。
おこりんぼだし。
癇癪持ちを自覚していますね。
イギリスとドイツの対比、アルバートとヒトラーの対比もあって、もう一つは王室と民間人。名前で呼ばせないとか。
名前で呼ぶっていうのは?
ローグは親しく治療をやりたいので、「バーティ」と呼びたい。
「それは王室だけの呼び方だ」とアルバートが言う。
自分の立場が違うという意識がある。
その関係性が最後にどうなるかも見どころ。
ヘレナ・ボナム=カーターが出ているんですね。
アルバートの妻役ですね。
ジョニー・デップのパートナーでした。
「英国王」は、確かに面白かったです。
ユーモアもあるし、切実もある。
ある程度事実に基づいているんですかね。
そうだと思うよ。
コリン・ファースはかっこいいですよね。
「キングスマン(2014)」も出ていますね。
「1917 命をかけた伝令(2019)」とか。
「ラブ・アクチュアリー(2003)」もでしたっけ。
「マンマ・ミーア(2008)」にも出ていましたね。
「裏切りのサーカス(2011)」が有名ですね。
ジョン・ル・カレ原作ね。
ああいう気難しい役がうまいんだなと思って。
検分役の音楽噺
『英国王のスピーチ』の音楽を担当した、アレクサンドル・デスプラ。
『真珠の耳飾りの少女』(03)のような文芸作品から、『GODZILLA ゴジラ』(14)のようなモンスターパニック映画まで、ジャンルを問わずこなす現在の映画音楽界を代表する大好きな作曲家の一人です。
個人的にはオスカーを獲った『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)と、極々個人的な趣味で『犬ヶ島』(18)が映画ともどもおススメ。
「愛と青春の旅立ち」士官の道は父を超克する脱出路だった
監督:テイラー・ハックフォード
脚本:ダグラス・デイ・スチュアート
〈Story〉
ザックは、13歳のときに母親が自殺し、かつて母親を捨てた父バイロンに引き取られた。フィリピンで初めて会った父親は、現地の売春婦に溺れる生活破綻者で、ザックもフィリピン人から暴力を受けて育つ。
ザックは大学を卒業後、シアトルのレーニエ航空士官候補生学校に入学する。そんな「上官」を目指す息子を父は嘲笑う。
士官候補生学校では教官のフォーリー海兵隊軍曹が、生徒たちを心身両面で鍛えあげ徹底的に教育する。
ある日、ザックは懇親パーティで製紙工場で働くポーラと知り合う。ポーラが亡き母と重なるのだった。
「愛と青春の旅立ち(1982)」。
僕ね、元々3年ぐらい前に1回観ていて、今回改めて観直したんです。
海兵隊の士官学校に主人公のザック・メイヨ(リチャード・ギア)が入学する。めちゃくちゃ厳しい鬼軍曹(ルイス・ゴセット・ジュニア)に入学した当初から
「お前たちはくずだ」と言われまくって、きつい13週間を乗り越えていくお話。
それと恋愛ストーリーもあって、士官学校の周囲に住んでいる女の人たちが玉の輿をねらって集まってくるんだよ。ザックもポーラと出会う。主人公の友人シドもリネットと仲良くなる。当初はその4人でワイワイ楽しんでいると、中盤から残酷な展開となります。
取り合いってことですか?
取り合いではないけど、シドとリネットの間で残酷な事件が起きる。
そんな残酷な感じでした?
「フルメタル・ジャケット(1987)」の前半の訓練のような厳しい要素もある。
人間ドラマだけじゃなくて、軍の厳しさにもフォーカスされている。
でも人間ドラマがキツい。
主人公のザックの成長譚なのよ。学校に入学したのも士官になる目標があったわけではなくて。お父さんもその海軍の士官で、奥さんを見捨ててフィリピンでいろんな女の人といちゃいちゃして自堕落な生活を送っている。そんな姿を幼少期から見てきたから、自分が士官になって見返してやるって、そういう動機で入学した。そんな生い立ちから他の人に心を開かない。学校での生活とか仲間とか、女の人との出会いを通じて成長していく。
なるほど、なるほど。
あまりにもシドとリネットの話がひどすぎて最後のハッピーエンドが共感しづらい。(女性が男性の収入に頼らざるを得ない状況は、まだ性差別が残存している証左。リネットの行為は性差別への叛逆とも解釈できそう[夕暮れ解釈])
サブストーリーが強すぎるってことですか。
「愛と青春の旅立ち」型が映画史にはある。それを変形させながらいろんなバージョンが作られる。
なるほど。
「ミッドナイト・ランナー(2017)」も「トップガン(1986)」も教練物語型だし。
「トップガン」も似ていますもんね。
丁寧に撮ってはいるんです。いろんな王道の物語を集めているのか、ここから発生したのかなって思いながら観ました。いろんなテンプレートがありますよね。(「父子葛藤型」「白馬王子型」や「教練型」)
「愛と青春の旅立ち」がステロタイプ(典型)だね。
この映画が40年前のストーリー。
そういう時代だった。女性の地位がね。
なるほど。
ザックが女の人を遊びとしか見ていないのよ。シドも地元で将来を誓った女性がいる。やっぱ男側はひどいですね。
今リメイクしたらだいぶ変わるだろうね。
主人公の幼少期に抱えている創(きず)が海軍士官学校に入った時にリフレインとして出てくるのは筋は通っている。
クライマックスで軍曹に喧嘩をふっかけるシーン、あれもお門違いじゃないかな。
発散するところがなかったんだろうな。軍曹は半分パパ役やから。
厳しい軍曹が卒業の時に敬礼をする。
そうそう。
そこが気持ちがいい。
原題は「An Officer and a Gentleman」は、「士官と紳士」これを誰が「愛と青春の旅立ち」と付けたのか。
それは気になる。
この主人公も全然紳士じゃないですよ。
(原題は慣用句で「Conduct unbecoming an officer and a gentleman」の一部、「士官や紳士に相応しくない行為」=ザックの父親)
紳士ではない
テーマ曲は好きです。音楽映画の側面がありますよ。その映画を象徴するような曲。
映画と楽曲が1セットになっている。
「ロッキー4」とかそんな感じじゃないですか。
「#Unchain My Heart」ですか?
とかもあるし、「#Eye of the Tiger」はよく聞いている。
リチャード・ギアの映画って、これしか見てないんです。
私の中ではロマンス映画に出ている紳士のイメージがあったんで若いというのもあるけど、あの泥臭い役をやっているし、内面の汚さが出ているのも新鮮でしたね。
「アメリカン・ジゴロ(1980)」だけどね。
「HACHI 約束の犬(1987)」を観ました。
ハチ公の話が何でアメリカ人ですか。
「地」をアメリカにスライドさせて、仕立て直した。
ラッセ・ハルストレム監督作品です。
同じ監督の「ギルバート・グレイプ(1993)」を夕暮れさんに教えてもらって、めっちゃよかったですよ。
ディカプリオが若い頃から演技派なのがよくわかる。ジョニー・デップもいいしね。
「愛と青春の旅立ち」は、何のお祝いやったんですか?
卒業式。鬼教官が送り出す時に、生徒は士官になって、そこで格が逆転する。
それまで暴言を吐いて、鍛えていた教官がびしっとなる。
ここが名シーンです。逆転することがわかっている上で厳しく訓練をして士官として送り出す。
ラストで主人公が彼女をお姫様抱っこして連れて行くシーンがパロディにされていますよ。ここでテーマ曲が流れる。
「白馬王子型」は後に「プリティ・ウーマン」にもなる。
この作品では迎えに行くのは印刷工場でしたね。
(迎えに行くことで、母を救い出すという代替行為となって、父親のようにならないという意志の表象かも:夕暮解釈)
そうそう印刷会社。
ザックがポーラをお姫様抱っこして、待て待て勤務中やぞ。
当社の大阪工場だったら、びっくりしますね。
BGMを流さないと。
検分役やったら流してくれそうです。
あのシーンは面白かった。ラインが止まる。ポーラが封筒の製造機から離れるから、封筒がどんどんたまっていく。周りも盛り上がって「おめでとう」って言う。
箱詰めをしないとあかんのにね。
検分役の音楽噺
『愛と青春の旅立ち』の主題歌、いまもCM等で使用されるスタンダードな名曲でオスカー受賞曲ですが、作曲は映画全体のスコア(劇伴ともいう)を担当したジャック・ニッチェと、当時配偶者でもあったカナダのシンガーソングライター、バフィー・セイントメリーとの共作です。
ニッチェといえば、グラスハープを起用した『カッコーの巣の上で』(75)が印象深いのですが、本作共々ソングナンバーの方が印象深い『スタンド・バイ・ミー』(86)のスコアや、『エクソシスト』(73)のスコア(ほとんど印象に残らないと思いますが)も担当しています。
(対話月日:2023年1月26日)